孤児院の青年(1)
よろしくお願いします。
青い空にきれいに生い茂る草、明るく地面を照らす太陽。世界が終わるなんて考えられないほど美しいストル王国。
アイギス王国からはるか東に存在するこの国は活気ある人々であふれていた。
それもそのはず。この国は魔王のいる城から最も遠い場所であるため、貴族などが避難し、様々な物資を流通し始めたのだ。
そんな国で様々な露店が立ち並ぶ商店街を行く人だかりの中にリンゴを右手におおきな布袋を左手に担いで歩く青年がいた。
すると
「さ、財布がない!」
「ネ、ネックレスがない!」
と、朝だというのに騒がしく声を出す人々。
青年は自分には関係ないような顔をして悠々と歩いていく。そしてそのまま薄暗い路地裏に入り、スラム街へと歩を進めていった。
スラム街の入り口の目の前には孤児院がある。青年は孤児院の裏へと回り、布袋を置き、近くに掛けてあったシャベルで地面を少し掘った。
そこには木の板があり、それを取ると中には大量の財布や貴重品が乱雑に入れられていた。
「あと少しだ。あと少しで俺の願いが叶う」
青年はそういって木の板で蓋をし、土をかぶせた。
「あ、クロー!帰ってたのね」
「やぁアーニア、ただいま」
彼女はアーニア。誰にでも優しく、近所の人からも評判が良い18歳だ。クローとひとつ違いだ。
それだけでなくルックスも良く、町行くひとが二度見してしまうほど可愛らしい。しかも胸もそれなりに大きい。そんな彼女であるが故に度々一時的なストーカー被害に遭う。
ただ本人はストーカー被害に遭っていることはわかっていても、胸目当てだけだと思い、自分が美女であることを頑なに認めない。クローが褒めるときを除けば。
そんな彼女はクローの元まで走って近づいて行った。
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