最終回:遥か先の道で
知美の名字は
宮間ですからね。
覚えててくれました?
サブタイトルが
《最終回》ですけど、
《最終話》の間違いでは
ありませんからね
「んんっ!
良い天気だ!」
朝起きて背を伸ばす。
そして身支度を済ませ、
日付の確認
「……今日が文武祭の
最期か」
それがわかると
一気にけだるくなる。
でも今日は大切な日だ
「……行くか」
鞄はいらないし
学校はすぐ近く。
余計な荷物はなかった
「おっはよ!!漉」
「おはよう漉君」
「おはようございます、
由来君」
「おはよう由来君」
「…おはよう
ございます」
「お姉ちゃんに次いで
おはよう、由来君!」
「良い目覚めか?由来」
「由来〜!
おっはよ〜〜!!」
「あたしと似たような
台詞言うな、古今!」
まあ、毎度のことで
朝一番のパンチ
「ひ、酷い‥‥」
古今の件はともかく、
まさかこいつらが
俺の家に全員……
いや、仙里がいないが、
集合してるなんて
思ってもみなかった
「なに驚いてんのよ」
「ほら、
早く行くぞ由来。
文武祭が始まって
しまうだろう」
河南が手を引く
「ブチッ……漉〜、
早くしなさ〜い。
天国に蹴り上げたのち
地獄に叩き落とすわよ」
「まあまあ……
ゆっくりと
行きましょう」
いつもマイペースだな
渚は……
まあ、そこに
惹かれたんだけどな
「…由来さん」
「どうした神崎?」
「…今日が
チャンスですね」
「チャンス?」
「…全て私と宮間さん
にはお見通しですよ。
頷いてくれると
いいですね」
「(まさか‥こいつら
知ってたのか?)」
「…ふふっ。
焦った由来さんも
珍しいです。
急ぎましょうか」
先に歩いていって
しまった集団にいた
彩音が
〈お姉ちゃん、
早く早く!〉と
呼んでいた。
古今といい
神崎といい‥‥
俺の心
筒抜けじゃねえか。
…もしかしてあいつらが
凄いんじゃなくて
俺が顔に出やすいのか?
そんなことを考えている
と学校にいつの間にか
着いてしまった
「…楽しくて時間がたつ
のを忘れるなんて、
初めてかもな」
「何か言いましたか、
由来君?」
「何でもないさ。
今日は楽しもうぜ渚!」
「はいっ!」
全員で行動するのは
一般の客に迷惑だから
いくつかのグループに
分かれよう、と河南が
言ったことにより
俺は渚と罹依と共に
まわることになった
「誰が一番
スーパーボールすくいで
多く取れるか
勝負しようぜ」
「あんた、高校生にも
なって幼稚よね〜」
「やっているこの2年の
クラスが悪いんだ」
「幼稚よね〜」
「せっかくですし
やりましょうか」
「渚も?
‥しょうがないわね。
そこまで言うなら
やりましょ!」
……5分、10分は
経過しただろうか。
罹依は例の裏技を
使用して、受け皿を
6つほど満タン
にしていた
「うおりゃーっ!」
「ったく…
誰が一番幼稚だよ」
「罹依さん
楽しそうです」
…っと。
やっと止めたみたいだ
「何よ2年坊!
こんだけ取って
5つしかくれないの!?
冗談じゃないわよ。
あたしの努力と時間と
汗と涙の結晶を
返しなさいよ!」
2年のやつらは
あきらか怖がっていた
「お前が
冗談じゃねえよ。
全部かっさらう気
だったのか?」
「もちろんっ!」
「……何も言えねえよ」
「まあいいわ。
5つで勘弁
しといてあげる」
「お前みたいなやつ
どこ捜してもいねえよ、
きっと」
「褒め言葉として
受け取って
いいのかしら?」
「ああ受け取っとけ
受け取っとけ」
「クスクス……」
「なによ渚。
笑う要因
なんてあった?」
「ほのぼのです〜」
「ほのぼの?」
「渚もなんか
よく分からんものを
極めつつあるようだな」
「……漉って
渚のこと如月って
呼んでなかったっけ?」
「まあ
そう呼んでたけどな‥」
「由来君が私のことを
励ましてくれたときから
でしたっけ」
「大体そうだな」
「…………」
「罹依?」
「罹依さん
どうかしましたか?」
「え……あ、ちょっと
あたし用事
思い出しちゃったから
2人でまわっといて‥」
そう言って罹依は
人混みの中に
消えてしまった
「おい罹依!……」
「罹依さん……」
「はー、はー、はー……
漉のやつ‥」
やっぱり最後まで
頑張ってみたけど
すでに心在らずか…
「……や、やだ」
涙……
あたしが涙なんて…
あいつはいないわよね…
「お姉‥ちゃん?」
「結依……」
「どうしたの?
由来君たちは?」
「ちょっとね…」
「お姉ちゃん……
よく頑張ったね」
「へ?」
「由来君への想い。
双子の妹が気づいてない
とでも思った?」
「結依……
あんたもでしよ?」
「!」
「結依も頑張ったわよ」
「やめてよ…
私なんて全然……っ!」
罹依が結依に抱きつく
「結依…結依!」
「あ、ああ……」
2人は涙を流して
木陰に姿を消した‥‥
文武祭はその賑わいを
なくし、客も徐々に
減っていった
「渚、楽しかったか?」
「途中から罹依さんが
どこかに行ったまま
戻ってこなかったのが
気がかりですけど、
とっても
楽しかったです!」
「俺と居てつまらなく
なかったか?」
「そんなに卑下
しないでください。
由来君の
おかげで今日は
楽しかったんです。
ありがとうございます」
「………渚」
「はい?」
「俺は学校が嫌いだった。
変わらない日々。
つまらない日常。
それが嫌だったんだ。
でもお前と出逢ってから
学校が嫌いじゃ
なくなった」
「それはいいことです」
「………(言うんだ)」
「………」
「(言えば晴れる。
神崎も言ってた、
頷いてくれるといい)」
「……由来君?」
「…渚」
「…はい」
「……明日、
次に学校で逢うとき、
もし俺たちが恋人同士
だったら最高だよな」
「へ?」
《「……好きだ、渚!
俺と、付き合って
くれないか!」》
「あ…」
「……(っ‥)」
Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
気づけば渚の顔には
涙が溢れそうだ
「はい」
「渚……」
「明日、朝起きたら
恋人同士だったら
いいですよね」
Ι
Ι
Ι
Ι
2つの影は夕焼けに
照らされ、
グラウンドには長い影。
同じリズムで影は歩き、
影は2人を包み込む。
Ι
Ι
Ι
「渚ーーっ!
漉ーーっ!
ほら早く早く!
打ち上げ
始めちゃうわよー!」
「行こうぜ、渚!」
「はいっ!」
Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
〜〜〜〜〜〜〜〜
ふふっ…
遥か先の道で、
また逢おうか。
由来漉音。
君の劇はまだ
始まったばかりだよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
最後の台詞。
あの夢の
人物の言葉です。
ある意味キーパーソン
です。
これで
35話にのぼる
お話は終わりましたが、
第2期
《遥か先の道で
〜LIMITED〜》
新連載スタート
また見てくださいね