第32話:カウントダウン
「《嘘の世界》
…如月。
お前限定の劇がな‥」
「私だけの‥劇‥」
「お前だけが俺たちの
夢を継げるんだ。
もうこれしかない」
「…で、でもやっぱり‥」
「…如月。
罹依が言っただろ。
熱意はお前の方がある、
って。
あいつはお前を
信じたんだ。
きっと、夢を叶えること
ができるって‥」
「……漉君?」
部屋のドアから知美が
顔を覗かせる
「事情は聞いたぞ」
河南が知美と一緒に
部屋に入ってくる
「由来。如月さん。
舞台はどうするんだ?」
「やるさ」
「由来君っ!」
「…台本はどうするんだ
。できるのか?」
「できる。
この、如月ならな。
……悪い、知美。
みんなで劇は
無理みたいだ」
「うん、いいよ。
渚ちゃんが
成し遂げられるなら。
叶えることができる
のなら」
「……知美ちゃん‥」
「‥わかった。
劇は続行でいいんだな?」
「ああ」
「なら、少し順番を
遅らせてもらおう。
そっちの方がいいだろ?」
「ありがとよ、河南」
「ふっ。
まさか由来からそんな
言葉が聞けるなんでな…
…頑張ってくれ」
「…あ、亜希さん!」
「ん、どうした?」
「あ、ありがとう
ございます!」
「思いやりも、
生徒会は必要だよ。
ではな‥」
河南が部屋から出て行く
「…如月。
決意は、決まったか?」
「……」
「渚ちゃん……」
「……ります。
私、やります!」
そうして、
練習は急ピッチで
行われた。
すでに会場は満員だ。
「如月。
俺はそんな頭良くない
から、うまく言えない
けど、不安とかは
全部忘れるんだ。
そうすればきっと
できるさ‥」
「は、はい……」
(駄目か。
無茶苦茶緊張してるな。
何とか気分転換できる
方法は…)
「やあ!渚ちゃん。
久しぶりっ!」
「古今!
お前今まで何やって
たんだよ!」
「え?
だって、開始はそろそろ
でしょ?
なら、今ぐらいの
タイミングで登場
していいんじゃない?」
「お前なあ…
……普通開始の1時間
前には戻ってこいよ」
「え、駄目だった?」
「ああ、駄目だった」
「はは、ごめんごめん。
…あれ、罹依たちは?」
「そうか、
まだ知らなかったな」
「ん?…」
そして俺は話した……
「…マジっすか!?」
「……」
「マジで罹依が仙里と
駆け落ち!?」
「…ああ」
「いや、由来君。
何気に嘘つかないで
ください」
「嘘?」
「罹依さんたちは、
劇に来れません」
「どうして?」
「…事故にあったんです」
「事故!?罹依が?」
「仙里君が罹依さんを
助けてくれたおかげで
罹依さんに危害はない
みたいなんですが…
……仙里君は病院で
治療中みたいです」
「……仙里のやつが…」
珍しく古今が気難しい顔
をしていた