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テロリストの最後(1)

        1

 緊急停車によるマイナス加速度が、車輛内に悲鳴を巻き起こした。力が抜けた死傷者の多くが、座席からの床に落下した。

 鈍い落下音が、新たな悲鳴の誘因になった。

 韮山は前席の背凭れに肩を預け、柳谷に向けた銃口をキープした。

 右腕の激痛による指先の痺れは、いよいよ酷くなっていた。歯を食い縛った。傷口のねじれで発生した、気が遠くなる痛みに耐えた。

動くな!(フリーズ! )不審な行動を(キル・ユー・ガイ、)取ると殺すぞ(ムービング・アフター)

 乗り込んだゲリラ兵士たちが、車輛の前部を占拠していた。

 車輛の先頭部分で、車内を舐めるようにアサルト・ライフルの銃口を動かしながら、犯行グループが怒鳴る。

 流暢な英語だった。侵入時に使っていた、ぎこちないスペイン語と違って、自然だった。

 激しい銃撃戦は、一時的には小康状態になっていた。

 人質は五人。女性教師が一人、女子中学生が四人。不吉な数だ。

 互いに身を寄せ合っていた。引きった表情で、韮山たちSPに必死で救いを求めていた。

 韮山は柳谷を睨みつけた。犯行グループに聞かれないように、低い声で言葉を捻り出した。

「貴様も動くなよ。少しでも逃げようとしたら、躊躇せずに射殺するからな」

「できるわけねえよな。あんたらSPに、警護対象者の俺を射殺するなんてな」

 変わらず皮肉な笑みを浮かべていた。柳谷が、せせら笑って首を横に振る。

〈ここは、駅か? 普通より小さなホームがあるだけだが〉

 動きが止まった車窓から見える光景に、韮山は目を引かれた。

 救急隊員と警察官の姿が確認できた。線路を挟み込むように列を作っていた。

 警察官の後方には、ヘルメットとタクティカル・ベストが覗いていた。アサルト・スーツ姿のSAT隊員が確認できた。

 突入に備えて非常態勢が取られていた。


        2

「半端な数じゃねえな、こりゃ。もはや戦争だぜ」

 柳谷が面白がって呟いた。

「下らない。余計な話をするな」

 韮山は、眉間に力を入れて、柳谷を睨みつけた。

 柳谷の言葉通り、外の光景は、単なるオペレーションではなかった。戦争と呼ぶのに相応ふさわしい状況だ。

 柳谷が、一旦、口を閉じた。

 皮肉な表情を浮かべ、口を曲げた。再び、柳谷が話し始めた。

「ずいぶん、へたくそな緊急停車だったな」

 韮山は、柳谷の言葉を無視した。

 首を回して、座席の隙間から犯行グループの様子を探った。力を込めて韮山は睨みつけた。

 柳谷が話を続ける。

「列車は、かなり速度を上げていたぞ。停まらずに、突っ切るつもりだったんだぜ。意味が解るか」

「さあな、信号を見落としたからじゃないのか」

 韮山は白を切った。単なる失敗ミステイクではなく、故意に起こされた停車だと判っていた。

 柳谷が嘲笑あざわらいながら、吐き捨てるように言った。

「強制停車を実行した場所が、運転台か、それとも中央に設けられた指令室か、見当はつかねえがな。状況から判断すると、列車の運転台がハイジャックされた事実だけは、明らかだよな」

「わからんぞ。見たわけでもないし。だがな、これだけは約束する。柳谷、死んでも貴様だけは逃がさない。目的地まで必ず連行してやる」

 睨む韮山を見ながら、柳谷が鼻で笑う。

「あんたの約束が、上手くいくか、失敗するかなんて、犯行グループ(あいつら)の出方次第じゃねえか」

〈犯行グループの目的は、何か?〉

 グループのメンバー以外には、誰一人として、確信を持って〝目的〟を言い表せる人物はいないはずだ。

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