スナイパーが攻撃を開始した。(2)
3
「水落、女王殿下をガードして最後尾車輛まで移動だ」
無線で指示を受けた岩脇が、花子女王に覆い被さった洋子の肩を叩いた。
「どうしてですか? 戻ってきたばかりですよ」
「上層部も混乱しているんだ。個室車輛には防弾設備が整った部屋がある。もともと、女王殿下の着座が予定された席だ。これ以上、皇族を危険に晒すわけにはいかんのだ」
最後尾に戻れば、移動する分だけ被弾するリスクが増す。
「だって、女王殿下の同級生が攻撃された場所を通らなければ、後の車輛には行けないんですよ」
「危険は承知だ。だが、移動は命令だ。不審者を逸早く発見して、危険を回避するのが我々の任務だ」
振り向きながら、力を籠めて、洋子は岩脇を睨んだ。
「女王殿下に怪我があってはいけないから、反対しているんです。次の停車時に外に避難できませんか。テロリストと同じ列車なんて、何が何でも間違っています」
「水落の気持ちは解った。だが、命令は、命令だ。女王殿下を個室に移動頂き、終着駅まで無事に送り届けること。それが命令の全てだ」
何が目的なのよ。洋子は上層部の考えを疑った。
〈もしかして、花子女王を途中で降車させると、何か重大な問題が起こるの?〉
今までの攻撃は明らかに、柳谷を狙っていた。だが、他にも御乗用列車を狙っている敵がいる可能性がある。狙うとすれば、花子女王しか、ありえない。
〈爆破予告でもあるのかしら。花子女王が列車を離れたら列車が爆発する、とか〉
洋子は、すぐに首を振って打ち消した。
〈想像したせいで、現実になったら、どうするの〉
ただの験担ぎだった。不安で何かに頼らなければいられなかった。
洋子は深く息を吐き出し、大きく吸った。繰り返すと、気持ちが落ち着いた。不安に囚われていては、危険を招くだけだ。
「撃ちたけりゃ、撃てよ。望むところだ」
ダーティー・ハリーを気取って、決め台詞を口にした。洋子は口を曲げてニヒルに微笑むと、洋子女王と千佳に告げた。
「個室車輛まで移動します。必ず護りますから、安心してください」




