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チェ・ゲバラの孫(2)

        3

 大学の卒業旅行に南米を選んだ。動機には、祖母の法螺話が影響していた。しかし、チェ・ゲバラがキューバ革命の英雄だった事実しか、僕は知らない。

 イメージを固めるために、ゲバラの映画をレンタル・ビデオ屋で借りた。

 若き日のゲバラが、ポンコツのオートバイに乗って南米旅行に出かけた話だ。アンデスの風景や過酷な道のり、丁寧に描かれた理不尽な現実が妙に心を打った。

 映画が終わり、エンドロールが流れた。迂闊にも熱い涙が込み上げた。画面を見ながら、僕はずっと洟を啜っていた。

〈同じ血が身体の中に流れているなら、僕も革命家になれるはずだ〉

 旅の初めにコロンビアを選んだ。首都ボコタからメデジンまで、長距離バスに乗った。

 アンデス山脈を抜けるのに十二時間以上掛かった。道は何度も上下を繰り返しながら、果てしなく登り詰め、そして嫌になるほど降りていく。

 メデジンに到着する直前、急に雲行きが怪しくなった。

 バスが停車すると同時に、強い雨が降り出した。大粒の滴が音を立ててバスの窓を叩いた。雨粒は一瞬のうちに、滝のように激しい土砂降りになった。

 撥ね返る雨粒が、すべてを覆い尽くして何も見えなくなった。


        4

 誰もが、二の足を踏んでいた。一歩でも外に出れば、川に飛び込むようなものだ。

 雨が小降りになった。僕は決心した。再び本降りになる前に強行突破するしかない。

 旅行バッグを掴み、意気込んだ撲は、バスの中を急いで歩いた。

止めておきなよ(ナ・デ・ハルサリール)、完全に雨が上がるまで、待っていたほうがいい」

 心配した運転手が声を掛けてきた。

大丈夫オーライ。もう小降りだから」

 笑いながらバスを降りた。歩き始めたとたんに、バケツをひっくり返したような土砂降りになった。

 跳ね返った雨粒で足元も見えない。初めての街だ。地図は持っていたが、旅行バッグを開けて雨を集めるバケツにする勇気はなかった。

 当然のように、僕は道に迷った。


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