第四話 堕ちろ…堕ちたな(確信) 【挿絵付き】
今後TSの小説を書くに当たって、少々TS小説に対する自己分析をしておこうと思う。
TS小説の面白さとは何だろうか。個人的に挙げられる一番の要素は、主人公が男女問わず多くの人間にちやほやされることだと思う。あくまで個人の嗜好だが、個人的に好きなTS小説全般が、主にアイドルマスター関連の世界にTSして活躍するのがとても面白いと感じられるので、多分自分の好みはそれなんだと考えている。
他にも、ちやほや、というのと少々似ているが、主人公の美貌にドキドキする男性や女性の描写なども、概ね好みの展開になると思う。これは貞操観念逆転ものの特徴とも若干似ている気がする。
他にも、TSだからこそある魅力というのがあると思う。それは当然ながら、男の精神性を持ちながらガワはめっちゃ可愛いとか、同性に対する無防備さとか。
なるほど。分析すると、可愛い主人公をすこれ。という小説が自分は好きだったのか。どうしてそれが好きなのか、という分析をしたら、主人公に自己投影して承認欲求を満たす。というあまり考えたくない仮説が浮かんできたので、この話はここまでにしておいて、とりあえずこの小説では、従来のTS,ヤンデレ、チートバトル要素に加えてこれから主人公をすこすこしていこうと思います、まる
最近、僕は集中力をとても強くすることを修得した。
時がゆっくりと流れるような感覚。世界がスローモーションのようになり、落ちる雨粒一つ一つを目で追うことができるような状態。この状態になると、ひどく頭が冴え渡り、ある程度敵の行動などを予測することができるようになったり、なんとなくの直感で最善の行動が分かったりする。後は人の感情をなんとなく感じる
これは前世において、僕や仲間が危機に陥った時に今より少し劣化してこの状態になる時があった。最期の戦いにおいては、最初から最後までこの集中状態が続いたが、今世においては、あの化け物たちとの戦い以降、この集中状態にいつでも成れるようになった。
僕は正直、転生した当初はこの集中状態を特に必要なものとは思わなかったが、僕はあの戦いを経て実感した。この世界は僕が思っているほど平和なものではなく、最悪の場合、異世界から侵略されたりすることがあるのだということを。
だから僕はひとまずこの力をもって、己を鍛えることにした。
そして決意を固めて数日。ついに英霊術士教育学校に入学した僕は、まず初めに能力テストを受けた
「結果を伝えると、そうですね。運動能力は現時点では普通の人類の最上位…オリンピックで優勝を狙えるほど。演算能力や論理的思考力は英霊級以上の能力を発揮しています。そして、予測能力や答えを非論理的に察する直感能力が非常に優れていますが、発想力、創造力に関しては並、といったところですね」
その結果、僕自身も把握を済ませていなかった現在の状況というものが分かってきた。
僕の集中状態は、僕自身の頭が急激に良くなるわけではない。つまり、10桁×10桁の複雑な掛け算は一瞬で解けても、まだ勉強していない微分や積分などの数式は解けないのだ。謎解きのような問題を一瞬で解くことができても、思考速度が上がっているためあまり時間がかかっていないように思えるだけで、僕的にはとてもたくさん考えた末に出した答えだった。
ただ、身体能力は間違いなく上がっていた。それと、手先の器用さも。
「…そろそろ昼休みですね。昼食は用意していますか?」
「はい。職員さんに作ってもらいました」
僕は鞄から職員さんに作ってもらったお弁当を取り出した。
「それでは手を洗って、いただきましょうか。あちらに水道があるので、案内します」
「ご丁寧にありがとうございます」
菊乃先生の案内に従って、先生について行く。ふと、窓の向こうに見える向かい側の校舎の教室から、たくさんの生徒が出てくるのが見えた。
「気になります? 昼食を食べた後は自由時間ですので、学校の探検でもしてみますか?」
僕が他の生徒たちを見ているのに気づいたのか、先生は優しげな微笑みを浮かべて提案してきた。
「いえ…僕は少々目立つと思うので」
この学校は基本的に中学生から高校生までの年齢の生徒がいるため、まだ8歳、小学2年生の年齢の僕は非常に目立つ。これから長い間この学校に通い続けるため、ある程度は僕自身も他の生徒に認識され、付き合いを持っていくのかもしれないが、正直僕はあまり他の生徒たちと積極的に付き合っていこうとは思わなかった。
僕は前世の記憶を保ったまま転生したので、僕の感性は他の子どもとは違い、少々ずれている。兄弟や孤児院の子どもたちと接して分かったが、僕は彼らと遊ぶことはできても、同じ目線を、同じような気持ち共有することはできない。僕は彼らに大人や保護者の立場としてしか接することができなかった。
だから、こういった僕の事情を伝えずに、中高生という僕の外見より年上の人たちと接するのは、彼らに大きな違和感を与えると思う。場合によっては嫌われるだろうし、気味悪がられるかもしれない。僕自身も彼らの雰囲気、空気についていくのは難しいという側面もあるし、何よりも僕はもう、僕が友人をつくること自体が許せない。
あの戦場において、僕は戦友たちを全て喪った。そしてあの戦場は、僕が招いたものだ。僕の判断が戦友たちを殺した。自身の故郷を護りたいというエゴで、友人を殺してしまった僕には、友人をつくる資格はない。
「そうですか…では、先生がこの学校の楽しいことについてお話しましょうか」
先生は僕の目をじっと覗き込むように見た後、僕の頭を撫でながら朗らかにそういった。
頭を撫でられたことに気恥ずかしさと暖かさを感じつつ、この先生はとても良い人だと感じた。
「キサラギさんは、食べ方が綺麗ですね」
食事中、先生が僕の食べ方を褒めてくれた。
「行儀が悪いと、兄弟や他の子たちもすぐに真似をしますから」
僕は彼らの手本として、それなりに立派な振る舞いをしなければいけない。一部を除いてみんなにはそれなりに頼りにされているので、僕の仕草などをみんなは良く見ている。職員さんも、僕を見習うようにとよく言うので、こういったことには一段と気を遣っている。
「ある程度孤児院での生活の話は聞いていましたが、やはりキサラギさんは偉い子ですね。立派です」
先生は優しい瞳をして僕を見つめていた。先生は僕のことを見つめることが多い。気恥ずかしさもあってかやけに背筋がぞくぞくするので、この視線は少々苦手だ。優しい目をしていると思うし、特に他意はないのだろうから、視線をそらしてしまうのはとても申し訳なく思う。
「ありがとうございます…」
僕は自身の気恥ずかしさを隠すように、目の前の食事に集中した。英霊を召喚してから、僕は食べる量が急増した。おそらく細胞が英霊の肉体に自身の体を近づけようと急成長しているから、そのための栄養が必要なのだと医者の先生は言っていた。個人的には美味しい物をたくさん食べることができて嬉しい反面、食べ物を消費しすぎて申し訳ない気持ちにもなっていた。
食後、僕は先生にトイレに行ってくると告げた。
「場所は分かりますか? 私も付いて行きましょうか?」
「いえ、先ほど手洗いの時に場所を見つけたので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
先生の気遣いを、少々申し訳ない気持ちを抱えながら断ると、先生は僕のことを心配そうに見つめてきた。
「私は…キサラギさんの担任の先生ですから。いくらでも頼ってもらいたいですし、もっと気安く接しても良いのですよ?」
僕の態度が年齢に対して丁寧すぎるのが、先生を心配させてしまったのだろうか。僕は慌てて言葉を吐き出す。
「あ、ありがとうございます。これからも頼りにさせてもらいますね」
言ってから、相変わらず少々他人行儀な台詞だと思った。これはまずいかもしれない。しかし、今更先生に砕けた言葉を使うというのも強烈な違和感があって、どうにも上手く言葉がでない。
僕は気まずさを隠すように、足早に教室を出た。
僕が使っている教室がある場所は、どうやら他の生徒たちが使っている教室から離れた場所にあるようで、廊下を歩いていても、特に他の生徒たちと会うことはなかった。
「あれ、どうしてこんなところに小さな子どもがいるのかな?」
と、思っていた。しかし普通に生徒と邂逅してしまった。この女子生徒さんは手にプリントの束を所持しており、こちらの部屋辺りに特別な用事があったのだとうかがえる。
「どこかの先生の子どもなのかな?君、もしかして迷子?」
女子生徒さんは身長が低い僕に目線を合わせるようにしゃがみ込むと、こちらを警戒させないように、優しい声で尋ねてきた。僕を見た目相応の子どもとして扱った場合は、100点満点のような対応だろう。この女子生徒さんはとても優しい人だと感じた。
「僕は、一応この学校の生徒です」
そう返すと、女子生徒さんは驚いた顔をする。
「え…ああ、もしかして事故で英霊を召喚してしまったとか、そういう感じなのかな?」
そう言った女子生徒さんの顔は、ことさら僕を心配するような顔をしており、おそらく僕が何かしら重い事情を抱えてここにいるのだろうと、こちらを気遣うような優しさがあった。
「事故…そうですね。はい、僕は緊急の事態で必要に迫られて、英霊を召喚しました」
国の公的な許可を得ずに英霊を召喚することは、基本違法であり、処罰の対象になる。しかしながら、それには一応例外もあり、僕のケースはその例外に該当する。だから僕は違法ではないということをはっきりと伝える。犯罪者として誤解されるのは、双方共に良いことなどない。女子生徒さんが露骨にこちらを嫌うような対応はしないと思うが、逆に気を遣わせるような対応をさせてしまう可能性があるので、重要なことはしっかりと伝えておかなければいけない。
「そっか…大変だったんだね…」
女子生徒さんは同情するようにこちらを見つめた。
「お気遣いありがとうございます。お姉さんは、優しい人ですね」
そう言うと、女子生徒さんはやけにワタワタした様子になって、取り乱す。
「え!わ、私は、そんなに優しくないよ。これは何というか、普通のことだし…」
取り乱すだけでなく、女子生徒さんはやけに落ち込んだ様子をみせた。これは…何かそういうことでトラブルがあったのかもしれない。キーワードは、おそらく優しいだろうか。もしかしたら人間関係でトラブルがあり、それで悩んでいるのかもしれない。
「何か悩みでもあるのですか?」
ひとまず聞いてみる。初対面で何を聞いているのだと、相手の顰蹙を買う可能性もあるが、逆に考えれば初対面で人間関係の繋がりが全くない相手だからこそ、話せることがあるはずだ。
「え…。あ、その…うん、あるんだけど…」
女子生徒さんは僕から顔を背けるように視線を落し、床を見ている。僕の容姿はとても幼い子どもなので、こういった相談をする相手としては頼りない印象を与えてしまうのだろう。僕はいくつか学んだカウンセリングの手法を思い出す。
来談者中心療法。いわゆる、悩みを聞く態度に気を遣い、相談者の悩みを聞き出して、カウンセラーはその悩みの解決に対して具体的に指示をするのではなく、助言することに止めて、相談者の人間的な成長を促すという一つの手法だが、カウンセリングの方法の中でも非常に有名な方法である。つまりは、人間悩みを聞いてもらうだけでもある程度の解決を図ることができるのだという可能性を示しているのだと思う。
だから、ここは少し無理をしてでも聞き出した方がいい気がする。この優しい人が何かしらの悩みで苦しんでいるのは、嬉しいことではない。
「僕はお姉さんの悩みとは関係ない赤の他人だと思います。でも、こういう立場の僕に悩みを吐き出すだけで、苦しみはいくらか楽になると思うのです」
見つけたベンチに座り、隣のスペースを軽く叩いて女子生徒さんを誘う。
「僕はこれでも弟や妹がたくさんいて、そこそこ頼りにされているんですよ?少し、お話を聞かせてもらえませんか?」
私は今日、天使のように美しい子に出会った。
白い髪に、神秘的な色をした青い瞳。顔立ちは息を呑むほど美しく整っており、肌やその髪の艶までも、彼女の全身からあふれ出る芸術性のようなものを感じた。
その女の子はキサラギちゃんというらしく、私は今、なぜか彼女に悩みを聞いてもらっている。
キサラギちゃんは私の心の悩みを見抜いて、私にそれを聞かせて欲しいと言ってくれた。天使のような子だが、やっていることもまるで天使みたいだ。私のことを助けるために、神様が天使を遣わせてくれたのかとさえも勘違いしてしまいそうだ。
私がたどたどしく悩みを打ち明けていくと、キサラギちゃんは真摯にそれを聞いてくれた。彼女の相づち一つ一つに私を気遣ってくれる優しさが籠もっているようで、私を見つめるその目はまるで聖母のように暖かかった。
その優しさ、暖かさに促されるように、私の中の苦しみがどんどん抜けていくのを感じた。私はここまで優しくされたことがあっただろうか。彼女と接しているだけで、自分に価値があるように感じられ、どこか生きる活力が湧いてくる。大げさ過ぎる話かもしれないが、彼女が生まれたと言うだけで、人類はとても素敵なものように思えた。
「友人が恋をした相手が、お姉さんに告白をしてきた…なるほど、それはとても苦しい出来事ですね」
そう。私は苦しかった。友人を傷つけたくないし、そもそも告白を受ける気もない。しかし、何度か創作でそういった展開を見たことがあるので予測がつくが、私がどのような対応をしても友人が傷つく可能性がある。
私は決して頭が良いわけではない。心理学に関して特に詳しい知見があるわけでもなく、頼みの私が召喚した英霊も、若干脳筋の気がある英霊であり、こういった人間関係に関して秀でた何かを持つ英霊ではなかった。
「私は友人を応援したけど…それさえも彼女には嫌みに思えるのかなって」
「私はあの人は好きではないって伝えたいけど、その気持ちがちゃんと伝わるか不安で…」
「これからもずっと友達でいて欲しくて…」
キサラギちゃんは、静かにその話を聞いてくれた。頷きや相づち。彼女の促しは私の気持ちを素直に表に出すことができて、私の話をしっかり聞いてくれるキサラギちゃんの傾聴は、どこか心地よかった。
「自分の気持ちを伝えるのは、とても難しいことですね」
嘆くように、寂しげな表情をしたキサラギちゃんは言った。
「でも、お姉さんの気持ちは、とても良く伝わりました」
キサラギちゃんが私の手を握った。
暖かい。とても、安らかな気持ちになる。
「大切なのは、落ち着いて話し合えることだと思います」
私の目をじっと見つめて、キサラギちゃんは言った。
そっか。今みたいに、ちゃんと相手の気持ちを聞くような場が必要なのかな。
「お姉さんの優しい気持ちはとても良く感じます。これは、とても暖かいものです。ちゃんと伝えることができれば、友人もお姉さんを悪いと思うことはないでしょう」
そうかな?でも、キサラギちゃんがそう言ってくれるのなら、それは確かなことなのだと思えるような気がした。
「僕の教室は、あそこの少し奥のところにあるんです」
キサラギちゃんはそう言って廊下の奥を指した。あそこら辺は、確か特別学習室とかがあった部屋だったと思う。
「何度でも、お話を聞かせてください。僕はお姉さんの力になりたいですから」
ピシリと、私の中で開いていけない扉の鍵に、罅が入る音がした。
「お姉さん、頑張ってください。僕も、できる全てで応援しますから」
そう言って、キサラギちゃんは優しい微笑みをみせた。それはとても美しくて、暖かくて…
私はこの日、友人とのトラブルを解決できた代償に、禁断の性癖の扉を開けてしまったのだった。
さて、今回はトイレに行った主人公を、一般通過モブにすこすこさせる話を書くかな…
〈書き終わった後〉何これ?
気づいたら主人公がカウンセリングして、母性を発揮していた。一般通過モブは、なんだかそれなりのネームドキャラになっていた。うーん、まあ、思ったよりさくさくと筆が進んだので、オッケーか。
次回は、主人公の戦闘能力測定を書こうかなと。主人公の現状の戦闘スペックに関しての話になると思います。
あと、唐突ですけど、こんな駄文よりTS系の漫画って素晴らしいなと思い、TSの良さはイラストの方が良く表せるよなー・・・と考えたので、主人公の簡単なイラストを書きました。マウスで描いたので色々と酷いですが、個人的にはイメージがしやすくなりましたね。