第二話 まだ男の娘
ブックマークが10件いきました。ありがとうございます。
それはさておき、今回は割と世界観説明。そんなに設定練ってる訳じゃないので、唐突に設定が生えたりするのは許してください。
また、設定の変更で、前話で異世界から侵略されたことは今までなかったとしていますが、それどころか世界間大戦があったという設定に変更されました。前大戦の英雄とかいうロマンを纏った強キャラをいつか出したい。
剣を振るう。
モンスターを殺す。
殺す。
殺す殺す殺す。
剣を振るい、魔法を放つ。
ただ、周囲をモンスターの 亡骸で満たす。
殲滅を終え、息を吐いた。
まだ、人里は遠い。
寒い。
寒い。
寒いよ、ヒカリ。
前は、こんな寒さを感じなかった。こんな寂しさは、感じなかった。
寒い。
もう一度会いたいよ。ヒカリ。
「・・・・・・夢」
とても、寂しい夢だった。あれは、力を貸してくれた英霊の経験なのだろうか。
頬に違和感。手を当てると、濡れていた。自分は夢を視て、涙を流していたようだ。
寒かった。寂しくて、辛くて、悲しくて。そして、孤独だった。
今も堪えなければ涙が出てしまう。悲しい。悲しい。
ああ。
ああでも。
僕は、みんなを護らなければいけないから。
それを思い出すと、自然と心は強く在れた。
悲しい気持ちは変わらないが、こんな姿を見せると兄弟たちにどう思われるか。それを考えるだけで、泣くのを堪えることができた。
僕は彼らの兄であり、親のようなものだから。
強くあらなくちゃ、いけないよね。
あの事件が終わってから、僕は国防軍に保護された。
今もあのダンジョンから化け物たちが溢れかえっているらしいが、強化戦闘服を装備した部隊であれば被害を出さずに制圧できる程度には、あの化け物たちは弱いらしい。
この世界の戦闘における装備は、非常に発展している。今世が前世より科学が発展しているのに加えて、英霊という存在があるため、異世界の技術や異世界の天才の力を借りることができ、様々な分野で非常に技術が発達した。
世界ごとに特異な敵の脅威に対抗するために、異世界には様々なものを使った技術が存在する。それは魔法であったり、超能力であったりと。全ての世界において人類が覇権的な地位にいることはないので、戦いに関する技術はことさら大きく進んでいるのだ。それらの技術を、召喚術を通して間接的に流入できるが故に、前世であれば間違いなく脅威となったあの化け物たちも、今世のフル装備の軍隊の前では全くの脅威たり得ない。
少し話は変わるが、事件後、僕自身の体に大きな変化があった。
端的に言えば、僕の容姿が女性っぽくなった。
髪が伸びたし、声はより高くなり、まだ幼い故に少々中性的であった顔立ちは、容姿だけ見ればほぼ女性と判断されるような顔立ちに変化していた。あと、元々そこまで成長していなかったが、その、なんというか・・・生殖器が、ものすごく小さくなっていた。
僕の体については、そういった英霊に関する専門家の医師曰く、僕が召喚した英霊は5等級、英霊の中でも最高位の非常に強い力を持つ英霊らしく、その力を行使するのは、この世界の一般的な人類には不可能らしい。であれば、なぜ僕はあの時力を借りることができたのか。それがいわゆる、変身であったらしい。
街頭カメラなどで確認された、英霊の力を借りている時の僕の姿は、今の僕の姿を完全に女の子にして、髪を腰の辺りまで伸ばしたような姿をしていた。
医師の人曰く、英霊の力に耐えられなかったからこそ、耐えられる体に変身する作用が働くらしい。その英霊の力を発揮するのに最も適した肉体といえば、当然のことながらその英霊の生前の姿そのもの。つまり、高位英霊の力を発揮すればするほど、おおよそ、その英霊に近づくように肉体は変身する。
高位英霊の力は膨大であるが、本来、そもそも並の精神力では、高位英霊の力は十分に引き出すことができないらしい。現在人類最強と呼ばれている英霊の力の担い手、英霊術者は、基本的に最も等級の低い1等級の英霊の力を使いこなして、他の英霊を圧倒するので、純粋に力を借りられる英霊の等級が戦力の決定的な差にはなり得ない。つまり何が言いたいかというと、高位英霊の力を引き出すことは難しく、一般的に肉体が変質するほど強くその力を引き出すことができるのは、非常に 稀有な例ということだ。
僕の場合については、さらにもうちょっと別の理由が関わる。高位英霊の力を借りる際は、肉体的な問題により変身してしまうが、本来は通常の肉体までもが変化するようなことはないらしい。
どうして僕は普段の容姿まで変化するに至ったかというと、簡単言えば、僕が人造人間だからである。
研究者の人が僕ら兄弟を作る時に、英霊の経歴を視ることを通してこの世界に持ち込まれた異世界の技術から作られた、特殊な細胞が使われた。この細胞の仕様はまだ詳しい解明がなされていないが、現状判明したところによると、僕が英霊の力を借り、肉体が変身している時の状態を記憶し、それに近づくように自己進化を遂げているらしい。
僕たち兄弟を作った研究者の人の目的は、この細胞を活かして、常時英霊の力を発揮できる人間を作り出すことだったらしい。
英霊の力を借りる 同調。これは基本的に大きく精神力を消耗する。それは高位の英霊になるほど消耗は大きくなり、英霊術士の平均的な同調可能時間は、おおよそ30分ほどになるらしい。これでは継戦能力に難があるので、常に英霊と同調している戦闘能力を発揮できる優秀な英霊術士の作成。これが研究者の人の研究テーマであったらしい。
まあ、あの人は僕もよく知らない色々とまずい違法なものに手を出していたらしいので、結局捕まることになったのだが、あの人といくらか一緒に過ごして、個人的にはそこまで悪い人ではなかったのではないかと思っている。
とにかくまあ、その話はおいておくとして、今後も英霊に変身していくのなら、僕の肉体の変化は避けられない。つまり、僕は英霊の力を借りていくのなら、近い将来女性になってしまうらしい。
一応かなり低確率な話だが、10人に1人の英霊術者の中でもさらにごく少数に、複数の英霊を召喚することができた例があるらしい。その中で、現状最高位の僕の召喚した英霊より、さらに力の強い男の人の英霊を召喚できれば、僕の性別は男で保たれるかもしれないらしい。医者の人には、ほぼ無理だろうと断言されたが。
僕個人としては、何が何でも男でいたという気持ちはない。気が進まないことは確かであるが。しかし確率が非常に少ないというのなら、無理に目指すよりも女の子としての自分を模索するのが楽な気がする。
ここは少々悩みどころだろうか。
「・・・・・・」
姿が変わってから、兄弟たちや孤児院の他のみんなに会った時の反応を思い出す。基本的にみんなの反応は戸惑いが多かったが、大半の子は普通に受け入れてくれた。まだまだ幼く、性に関して特に細かい認識はしていなかったからだろうか。しかし、次男と長女の反応は少々後を引きそうなものだったのは気がかりだ。彼らは兄弟たちの中で年齢が上の部類であり、下の兄弟たちに比べて性への認識がそれなりに進んでいるのだろう。
正直、女の子になるのは嫌だと思う反面、そんなものは些細なことだと思う自分もあった。
今世において、僕は恋愛に対して積極的ではない。まだ体がそういった年齢ではないという問題もあるかもしれないが、正直に本音を話すと、異性と結婚したいという願望がそもそも根底に存在しない。どうしてかというのは自分でも上手く明文化できないが、女性と結ばれて幸せな家庭を築くという人生は、どうにもしっくりこない。僕の性的嗜好が男性へ向いているというわけではないので、女性と結ばれるという部分に否があるわけではない。おそらくは、幸せになるということにどことなく罪悪感を覚えているのかもしれない。
ここの問題は僕自身、そこまで自己分析を深めていないからどういったものが問題となるのかは分からない。現状僕の生活は間違いなく幸せだし、そこに対して何か思うところがあるわけではない。
では、何が僕の中で引っかかるのだろうか。一応、なんとなく目星は付いているつもりだ。あの戦争の時に、僕が殺した兵士の数だけ、幸せであったはずの誰かの家庭を壊した、という罪悪感。これが僕の家庭に対する想いの根源となっているのかもしれない。
僕は兄弟たちを幸せにするつもりだ。しかし、彼らは最終的に大人になり、旅立っていく。僕が手助けする必要がないような、立派な大人になっていく。そうなれば、きっと僕は孤独になれるであろう。そう想像できた。むしろ、彼らの傍でその暖かさを感じていたからこそ、それが離れたとき、僕は一層孤独に苛まれるだろう。
だから、僕はいつか独りになる。その想像はとても寒い、暗い未来を想起させたが、同時に在るべきものが在るべき場所に収まるような、そんなすっきりした整合性も感じた。
ああそうか。僕が今の幸せな現状を受け入れられるのは、いずれそれが終わるものであると予想できるものだからなのか。
つまり、それは僕自身が僕の幸せを許せないということなのだろうか。
自己を見つめ直す。
己の心に問いかける。
答えは、在った。
思い出が在った。戦場で人を殺す僕の姿が在った。
銃を撃つ。敵の軍人さんは、僕の放った凶弾を頭部に受け、倒れた。僕の目には、その人の最期の表情が良く見えた。
かつて、死を前にして嘆きを叫んだ敵の軍人さんがいた。
あと少しでこんなくそったれな戦争が終わる。ようやく帰れる。ようやく、妻に、息子に会える。
どうして。
どうして・・・。
ああ。こんなことが、いくつも在ったんだ。
直接その嘆きを、 怨嗟を受け止めることができた例は、多分 稀有なものだろう。
あの戦争で最も多かった死は、僕が直接銃弾で仕留めるよりは、僕の提案した様々な戦術で一掃された敵の軍人さんの方が、遙かに多かったのだから。
誘い込み、機関銃陣地によって敵軍に大きな損害を与えた。
退却する敵軍の進路を予測して、砲弾を雨あられのように撃ち、多くの死者を出した。
僕の狙撃で敵の防衛陣地の防衛力を削ぎ、そこを起点に突破し、他の防衛陣地を真横真後ろから奇襲した。
結果だけ見れば戦果は多い。だが、積み上げられた骸と、幸せの 残骸は、あまりにも多かった。
思う。僕は、幸せになってはいけない。いや、おそらくなってはいけないという禁止ではない。なぜなら戦争で人を殺すことは、禁忌ではないのだから。共に活躍してきた戦友たちにも、非があったのだとは思いたくない。
だからこれは、きっと僕自身の心の問題。
僕は、幸せになりたくはない。
でも、一つ懸念がある。
僕は鏡に向かって、幸せそうに笑ってみた。
「・・・・・・」
少し歪に思えるが、それでも僕はちゃんと笑えていたように思う。
僕を大切にしてくれる人は、現実に存在する。かつての戦友しかり、今世において僕を想ってくれる兄弟たちや、孤児院の職員さんたちも。
彼らの立場になって考えてみれば分かる。僕なら、自分は幸せになってはいけないと考えている友好的な知り合いなどがいるなら、当然心配になる。だから僕があからさまに幸せになりたくないといったような悲観的な態度を見せれば、当然心配をかけてしまうだろう。
だから、上手に笑えるようになろう。
心配をかけないように、器用に立ち回れるようになろう。
僕は上手に笑えるように、再び笑顔を浮かべた。
事件から数日後。僕の今後が詳しく定められた。
まず、この国(僕の住んでいる国は 日ノ本というらしい)の英霊術者の扱いについて説明しよう。
基本的にどの国においても、英霊術者というのは厳しく管理される存在だ。この国においては、おおよそ初等教育の終了、いわゆる小学校の卒業と共に英霊術士としての適正検査がされる。僕の場合、イレギュラーな事態で英霊を召喚してしまったため、この場合はそれに関して審議をして、道徳性や社会性などに問題があるとすれば特別英霊術士教育学校へ。問題がないと判断された場合、小学校卒業時期正規の手法で英霊の適正を見込まれたものと共に、英霊術士教育学校へ通学することとなるらしい。
僕はまだ小学2年生であるので、そこらを考慮して英霊術士教育学校の中で特別なカリキュラムが組まれるらしい。こういった特別措置に関する法整備はそれなりに整っているらしく、特に混乱なく普通の授業が受けられるようだ。
また、僕のいる孤児院より少し遠くに英霊術士教育学校があるので、今後はそこへ交通機関を用いて通学する。一応より設備の整った首都の学校へ通わないかという提案もされたが、兄弟たちのことが気がかりなのでそれは断ることにした。
彼らはまだまだヤンチャであるので、現段階で孤児院を離れてしまうと職員さんたちが大変なことになる。いずれ彼らとの別れが待っていたとしても、それは今ではない。
こういった進路のことについていくらか説明された中で、僕は将来的に国防軍所属の英霊術士にならないかという勧誘も受けた。
かなり積極的な勧誘を受けたのだが、この勧誘の背景については現代の複雑な政治事情などが絡んでいる。
現代において、英霊術士はかなり社会の中で大きなウエイトを占めている。研究しかり政治しかり。英霊の中には天才的な博士など、戦闘以外の面で凄まじい力を発揮する人も多くいる。基本的に英霊は発揮するエネルギーや異能が大きいほど、等級が高く、同調の持続時間が短い。故に、反対に基本的にそういった戦闘以外で力を発揮する英霊は同調時間がかなり長く、恒常的にその力を発揮できるため、現代社会に多大な影響を与えることができる。
召喚技術普及前の社会より、現代の科学が遙かに進み、国連が大きな力を持った現代の政治事情など、これらの背後には英霊術者の存在がある。
着目したいのは、国連という存在だ。
国連は、単純に言えば政治に関して凄まじい能力を持つ英霊が頑張って、地球全土に大きな政治力を行使することができる組織へと発展させたものだ。
現代の地球は、国連という一つの国があり、それぞれの州(前時代における国)があるというのが最も僕にはイメージしやすいだろうか。実際の力関係はもうちょっと複雑そうだが、簡単な理解だけならこのイメージがぴったりだろう。
では、人種的な違いや文化、歴史などで大きく差異がある地球の国家群の上に、どうしてこのような統一的な政治組織が誕生したのか。その背景には英霊の活躍があるのは確かだが、大きな理由としてもう一つの要因がある。それは、ダンジョンから繋がる異世界という存在だ。
5等級の異世界の英霊の力は非常に強大であり、その力はトップクラスの英霊術士でも頑張って、同調率5%程度までしか上げられない。そして現代において、英霊術士を用いた戦術が戦闘の基本になっている。これの理由は単純なことに、英霊術士に対して、前時代の兵器では太刀打ちができなかったからだ。
話を繋げると、トップクラスの英霊術士には、前時代の兵器はまともに通用しない。そしてその英霊術士は5等級の場合、その英霊の力の5%程度しか発揮できていない。
そこから考えられるのは、異世界の最高峰の人物には、その力の5%程度で前時代の軍隊を蹂躙できる存在がいるかもしれないということだ。
この事実に、地球国家の人々はすべからく恐怖を抱いた。そして事実、その懸念は的中した事件が過去に起きる。
第一次世界間大戦。おおよそ10年前に起きた大戦であり、地球社会国家とダンジョンの先にある異世界の強大帝国の間で起きた大戦争である。この事件の際に政治において大きな力を発揮する英霊術士は地球の人々全員の危機感を煽り、地球人という概念を定着させ、国連により強大な権力を与え、そして国連の仕組みそのものを大きく変革させた。
こうして 再誕したのが国連という組織であり、その力は国よりも強いため、この組織も当然独自の戦力を保持している。
そして現代においての戦力と言えば、それはつまり英霊術士である。
他にも当然ながら、国はそれぞれある程度独立した裁量を持っているので、独自の戦力を持っている。僕を保護した国防軍などは、まさにそれである。
故に、英霊術士は二つの巨大な組織が競い合うように求める人材なので、その勧誘攻勢は非常に激しい。
そういった勧誘や組織に所属したが故に発生する義務を嫌った人物がいたからこそ、そこにさらにダンジョン探検を専門とするダンジョン探求者協会が誕生した。
つまりは、戦闘系の英霊を召喚した英霊術士には主に3つの進路があり、協会以外にとっては自衛力の確保という重要な課題であるため、勧誘が激しい。
僕は国防軍の人に様々な優遇プランを聞いた上で、正直に自身の気持ちを話した。
僕はこういった社会の仕組みを調べた上で、かなり個人の自由にこだわったダンジョン探求者協会が好ましいと感じた。
協会は、成立の由来そのものが束縛を嫌ったが故であったので、個人の自由をかなり重視している。国防軍や国連軍そのものは基本的に上官の命令には絶対服従であり、その戦いは上層部の決定に委ねられる。
つまりは、前世と同じ軍隊だ。
もう、同じ人間と殺し合いたくはない。
この世界の軍隊は同じ人間と殺し合うことなどあまりないとは分かっているが、異世界の団体と時折小競り合いが起きることがあるので、全くないとはいえない。だから僕は、その二つの組織に所属する気は全くなかった。
僕の気持ちを汲んでくれたのか、担当の人は苦笑して、気が変わったらいつでも連絡をくださいと名刺を渡してくれた。
僕が召喚した英霊は5等級。そして計測された同調率は、33.4%。歴史上最高の5等級英霊の同調率であり、この時点で僕は大きな注目を受けている。
僕の人生は、おそらく今再び騒乱の尽きない一生となる。
人から期待される立場となってしまったのだと思う。
それでも、僕は今度こそ誰も不幸にしない生き方をしたい。
立ち去る担当の人を見ながら、僕は己の今生の生き方について、今一度決意を固めた。
「にいちゃん、たのしー?」
ある日、サツキは僕に問いかけた。
「ん?楽しいよ」
何が楽しいと聞いているのかはよく分からなかったが、ひとまず現状のことだろうと当たりを付けて、楽しいと答えた。賢い妹だが、こういった不思議な質問を唐突にするといった一面は、年相応なのだなと感じた。
「そっかー。でもにいちゃん、めっ」
「??」
めっと、×を作った指を鼻に押しつけられる。
何が?と聞いても、めっ、なのーと返された。
「にいちゃんは、サツキの、およめさんにするの」
??
ばっ、と。サツキは僕に絵を見せた。
その絵にはウエディングドレスを着た僕と、ウエディングドレス着たサツキが写っていた。とても上手な絵だ。すごいなぁ。前世で見た画家の絵より上手に見える。それにしても・・・うん。まあ。この世界では同性婚は認められているものであるから、間違いではないのだけれど・・・。
「僕、お嫁さんなの?」
「うん!」
とてもキラキラした顔で返される。そっかぁ・・・。サツキは可愛いなぁ。
「およめさん!」
サツキが絵に描かれた僕を強調するように、指を指す。
絵の中の僕は、とても幸せそうな顔で笑っていた。
はっ、と驚く。まさか。そんな、ね?
にいちゃん、めっ、なの!
その言葉が、今一度繰り返された。サツキの手が伸びてきて、僕の口元を引っ張る。
「んー」
意図して、笑顔を作ってみた。
「っめ!」
サツキは、怒った顔でプクーっとフグみたいに頬を膨らませた。
僕を見つめるサツキの瞳はどこまでも透き通っていて、まるで僕の全てを見通すような。そんな錯覚を覚えた。
「にいちゃん、ぎゅーっ!」
サツキは、僕を力の限り抱きしめる。彼女は抱きしめられると、とても幸せそうに笑う。だから、彼女の中でこの抱擁がどのような意味を持つのか、感じ取ることができる。
「・・・・・・」
妹に気を遣われる己の未熟さ。他の人物にはまだ見抜かれていないこの内心を、察したのかもしれない妹への驚き。胸の内に渦巻く想いは色々とあった。
しかし。
「・・・・・・」
「ありがとう。サツキ」
胸の中で一番大きかった想いは、感謝だった。
「ん-・・・」
頭をサツキに抱きかかえられる。
「にいちゃん、よしよし。よしよし」
それから、当分僕はサツキに頭を撫でられた。とても恥ずかしいような、くすぐったい気持ちが胸を満たした。でもそれはどこか暖かくて。
安心できて、幸せだった。
気づいたら主人公がいっつも重いものを背負ってしまう作者の性癖。たぶん、作者が書く作品はだいたい主人公はヒロインになる。まあ、正直一番設定作り込んで思い入れがあるキャラクターが主人公になるので、可愛らしいヒロインに見えてくるんだよなぁ・・・。
サツキはヒーロー。はっきりわかんだね。
それはともかくとして、FGOのカーマの設定ツボりました。愛、良いよね・・・。もっとヤンデレ成分を作らなきゃ(作者の性癖)。今回は設定解説が多かったので、次回はヤンデレを詰め込みたい。へへ、次話のプロット、ヤンデレとしか書いてないや。