第1話 ウザい神様と見習い女神。
お読み頂き有り難う御座います。
第1話です。
人生は時として予想のつかない事が起こる。
人生の転機、思わぬ幸福、不慮の事故。
人それぞれ違うのだが、形はどうであれ誰にでも起こりうる。
ある日僕に起こった事がまさにそれだ。
坂上 聖徒。
県内の公立高校に通う16才。
成績は平凡、運動神経も平凡、つまりいたって普通の学生だ。
先生:『それじゃあ登校日忘れるなよ~!』
聖徒:『はぁ、やっと夏休みか・・・。長かったなぁ。』
同級生:『まぁ補習にならなかっただけでも良かったじゃんか?』
一学期が終わった終業式の帰り道、僕は普段とは違う道を歩いていた。
図書館で借りた本を返して来たからだ。
それに今日からは自分で食事の仕度をしなければならない。
建築会社に勤めている父の海外赴任に母が付いて行ってしまったからだ。
最低でも二年間は帰って来られないらしい。
さすがに地球の裏側にあるブラジルまで行く覚悟の無い僕は、一人で日本に残る事にしたのだ。
スーパーで一通りの食材やスナック菓子などを買い、河川敷を歩いていると突然眩しい光に包まれた。
聖徒:『なんだ!?何が起こったんだ!?』
眩い光の中、一人の女の子が現れた。
女の子『やぁ坂上君、突然の事で何が起こってるのか解らないよねぇ?不安だよねぇ?そうだよねぇ?』
何だろう?このウザい娘は。
女の子:『実は君にちょ~っとお願いがあるんだよねぇ。』
何か勝手に話を進め始めたな・・・。
女の子:『実はさぁ・・・あっ!まだ自己紹介して無かったよねぇ!ボクはゼロ、数々の世界を管理している神様だ!どう?どう?ビックリしたでしょ?』
聖徒:『そんな能天気に『神様だ!』とか言われてもなぁ・・・。』
ゼロ:『まぁまぁ、そんでね?お願いっていうのは、ボクの代わりに世界を1つ管理して欲しいんだよ。』
何言ってんのこの娘?
世界を1つ管理しろだ?
聖徒:『いや、こっちはそれどころじゃ無いんだけど・・・。』
ゼロ:『何も心配は要らないよ?ほとんどのお膳立てはボクがするしぃ、一生食べて行けるだけのお金や、メッチャ強い力もあげちゃうから!』
聖徒:『いや、やるなんて言って無いんだけど・・・。』
ゼロ:『あっ!そうだ!今なら女神も付けちゃうよ!もちろん君の自由にしちゃって良いんだよ?女神とのエッチぃイチャラブ生活とか憧れちゃうでしょ♪ボクもあの娘が1人だと心配でさぁ、君が貰ってくれると安心なんだよぉ。』
いや駄目でしょそれ。
通販番組の抱き合わせ商法じゃ無いんだから。
てかこの娘かなりアホっぽいけど、ホントに神様なのか?
ゼロ:『そんな訳だからよろしくねぇ~!』
聖徒:『っておい!ちょっとまて!人の話を聞け!』
ゼロ:『えぇ?なぁに?やってくれるって言ったじゃん?』
聖徒:『言って無ぇし!てか女神をくれるとか何だよそれ?』
ゼロ:『だからぁ、イチャラブライフとか憧れちゃうでしょ?それを女神で出来ちゃうんだよ?ラッキーでしょ?』
聖徒:『いや、だから!僕には僕の生活があるんだよ!』
ゼロ:『あ~もう面倒い!とにかく行ってらっしゃ~い!』
聖徒:『こら~!人の話を聞け~!』
次の瞬間、僕は見晴らしの良い丘の上に立っていた。
セイト『・・・えっ?何?ここ何処?どうなってんの?てか何この服!?制服着てた筈なのに・・・。でも何故か買い物袋と中身はそのままなのね・・・。』
突然の事で呆気に取られていると、空から女の子が降りて来た。
そう、空から女の・・・子!?
どういう事だ!?
何?何で女の子が空から降りて来んの!?
女の子:『もしかして貴方がセイト様ですか?』
様て・・・。
セイト:『そうだけど君は?』
女の子:『私はこの世界の女神、メルティとお呼び下さい。』
今女神って言ったよな?
まさかとは思うけど・・・もう帰れないの!?
メルティ:『セイト様、ゼロ様からお話は伺っています。これからセイト様に御満足して頂ける様に、誠心誠意お仕えしますのでよろしくお願いします!』
いやいや、可愛いけど!メッチャタイプだけど!ドストライクだけど!声なんかcv某声優さんみたいで嬉しいけど!
って、そうじゃ無いでしょ!
セイト:『何か強制的に連れて来られたんだけど、自分の生活もあるし帰して貰えないかな?』
メルティ:『えぇ!?私じゃ不服ですか!?やっぱりもっとエッチな体のお姉さんタイプが良いんですか!?それとも!それとも!』
セイト:『お、落ち着いて!そうじゃ無くて!僕に世界の管理なんて絶対無理だし、君だって迷惑でしょ?』
メルティ:『とんでもありませんよ!ゼロ様が見込まれた方ですもん!セイト様の為なら、一生全裸でお側に支えます!』
セイト:『いや、服は着ようよ!ちょっと期待しちゃうけど服は着ようよ!ってそうじゃ無くて!親とか学校とか心配しちゃうから帰らなきゃマズイんだってば!』
メルティ:『えっ・・・?まさかゼロ様から聞いて無いんですか?』
セイト:『ん?何を?』
メルティ:『セイト様がこちらの世界に来られた時点で、あちらの世界は改変されているんですよ?』
セイト:『え?それどういう意味?』
メルティ:『ですから、セイト様がこちらの世界に来られた時点で、あちらの世界ではセイト様という人物は存在しない事になっているのです。セイト様が生まれる前に遡って、セイト様の誕生そのものが無かった事になっているんです。ですからセイト様があちらの世界に戻ったとしても、セイト様を知る方は1人もいらっしゃらないのです。』
セイト:『えっ・・・まじ?』
メルティ:『・・・まじです。』
嘘だろ~!?あの神様そんな事一言も言わなかったじゃんか~!
え!?じゃあなに?すでに僕に選択権は無いって事じゃん!?
てか僕の平穏な生活は!?
文明社会は!?
ゲームは?アニメは?
クソー!はめられた~!
メルティ:『あの・・・大丈夫ですか?』
セイト:『駄目かもしんない・・・。』
メルティ:『と、とりあえず何か食べに行きませんか?』
セイト:『え?食べに行くって言ったって、見渡す限り草原しか無いじゃないか?』
メルティ:『御心配無く!近くの町まで転移しますから!』
転移!?
転移って転移魔法!?
異世界っぽい!
メルティがセイトの手を握ると、周囲の景色が歪んで町の入り口付近に転移した。
おぉ!これが転移魔法かぁ。
町の入り口には門があり、外敵から町を守れる様になっている。
セイト:『へぇ・・・異世界らしい中世の町だなぁ。』
メルティ:『しばらくはこの町を拠点にしましょうか。』
町の門には【レイゼランド】と書かれてあった。
書かれている文字が理解出来たのだ。
正直文字が読めてほっとした。
今後仕事をするにも文字すら読めないんじゃ話にならない。
どのみち向こうの世界には帰れないんだし、こっちには学校も無さそうだもんなぁ・・・。
二人は食堂に入って食事をした。
素朴な料理ばかりだけど、味は悪く無い。
メニューを見た限りでは、食材も向こうと大して変わらないみたいだ。
メルティ:『実は私、ここ数ヶ月はこの町に暮らしてたんですよ。』
セイト:『え?女神って下界で暮らすの?』
メルティ:『私はまだ修行中なので、人々の暮らしを近くで観察しなければならないんです。と言ってもこの世界に女神は私だけなので、世界を天界から見れるのはゼロ様だけなんですけどね。』
セイト:『色々解らない事だらけで聞く事が沢山あるんだけど、とりあえず何でこの世界に君以外の女神が居ないの?』
メルティ:『セイトさんは魔族ってご存知ですか?』
セイト:『一応ね。実際どんなものかまでは解らないけど。』
メルティ:『魔族は魔王の眷属で、人や亜人種と違って精神性が高い種族です。この世界には魔族と、かつてはその者達を束ねる魔王が居ました。神と魔王は世界の光と闇の様な存在で、そのどちらかが欠けるともう一方も消えてしまうんです。今この世界には魔王も神も存在しません。魔族のリーダー的な存在しか居ないのです。なので今では女神も私だけとなったんです。』
セイト:『ん?ちょっと待って?その理屈だと僕が来たら新たな魔王が現れるって事なんじゃないの?』
メルティ:『セイト様はまだ神ではありませんから魔王が新たに生まれる事はありませんね。あくまで世界の管理者なので。』
セイト:『管理者と神って違うの?』
メルティ:『えぇ違いますよ?神は世界のバランスが崩れたり、人々の心が闇に支配されたりした場合に世界を再生する役割なんです。管理者は力を使ってそのバランスを調整する役割なんですよ。』
セイト:『結構役割が分かれてるんだね?それで具体的には何をしたら良いのかな?』
メルティ:『普段から特別何かをしなければならないという事は無いですよ?』
セイト:『でも世界の動向を見ないといけないんでしょ?そんなの普通に生活してたら分からないじゃないか。』
メルティ:『必要な時はゼロ様から連絡が入ります。何処に行って何をしろって感じに。なのでとりあえずセイト様はこの町に馴れて頂いた方が良いですね。』
何かざっくりしてるな・・・。
でも今の話で幾つか解った事がある。
この世界には神も魔王も存在しない事。
光と闇のバランスによって世界が成立している事。
つまりは安易に正義感や善悪だけで物事を判断しては駄目って事か・・・。
メルティ:『それじゃあセイト様、町でも見て回りますか?』
メルティはこの町の全てを知り尽くしていた。
店の場所や役場での手続きなど、全てにおいて本当に良く知っている。
確かに僕の様な何も知らない奴には、彼女の存在は必要かも知れない。
というよりも彼女が居なければこの世界で生きて行く事が出来ない。
それもこれもあのアホな神様のせいなんだけどね・・・。
メルティの話によると、この世界は何度か神によって再生されているそうだ。
人々と魔王の戦いによるものだったり、魔族によって支配されたりと時代によって理由は様々らしい。
現在は再生された後で文明がやっと安定してきた時期みたいだ。
確かに町の生活水準は結構高いし、職業も多種多様だ。
結構たくさんの国があり、国によって制度も様々だそうだ。
一通り町を見て歩いた後で、メルティが住んでいる家に行った。
メルティ:『どうぞお入り下さい。』
セイト:『お邪魔します。へぇ、結構広いんだね?』
メルティ『楽にして下さい。今紅茶をいれますので。』
ふと壁を見ると世界地図が貼ってあった。
セイト:『メルティ、この町はどの辺りにあるの?』
メルティ:『ここはその真ん中にあるフレーニア大陸にあるリノステイン共和国という国の南東部にあるレイゼランドという町です。』
セイト:『向こうの中世時代だと戦争が多かったみたいだけど、国同士の戦争とかは無いの?』
メルティ:『たまにありますね。でも国同士の争いはどの世界にもありますよ。』
セイト:『その場合って管理者は干渉するの?』
女の子:『ハイハーイ♪その質問にはボクが答えるよ♪』
声がする方を見るとゼロがニコニコしながら立っていた。
セイト:『あー!あんた、あの時の!』
メルティ:『ゼロ様!?』
ゼロ:『なになに?ま~だえっちぃ事して無かったのぉ?』
セイト:『してません!ってか、向こうの世界で僕の存在が無くなるなんて聞いて無いですよ!』
ゼロ:『だぁって言ったら絶対嫌だって言うじゃん?』
セイト:『当たり前だ!』
メルティ:『こちらに来られても宜しいのですか?』
ゼロ:『色々とセイト君に手解きも必要でしょ?君の説明とかもしなきゃだしね。ところでさっきの話だけどぉ、基本的には人同士の戦争に干渉はしないのよ。でもぉ、人の中に闇が宿っている場合は、管理者が宿主を倒す必要があるのよ?』
しれっと話進めたな・・・。
てか重要な事を話してるんだろうけど、このイラッとする言い回しは何とかならないのかな?
セイト:『つまり闇を宿した人が争い事を起こしたら介入するって事で良いのかな?』
ゼロ:『そーゆーことー!それでここからが重要な話なんだけどね?この世界って魔力のマナがとても濃いのよ。マナの性質は世界の管理者の感情に大きく左右されるんだ。マナが闇に偏ると色々と面倒な事になるんだよね。つまり女神であるメルティと、管理者であるセイト君との愛の深さで決まるのよ。』
セイト:『はぁ!?何それ!?おかしいでしょ!?』
ゼロ:『何が?』
セイト:『何がって後半の話だよ!』
ゼロ:『何処がおかしいってのよ!?』
セイト:『何でマナが僕の感情で変わるんだよ?それにメルティと僕の愛の深さとか、それ絶対後付けでしょ!』
ゼロ:『チッ・・・。』
セイト:『今チッて言ったよね!?』
ゼロ:『でも実際セイト君の愛情がこの世界のマナを安定させる要因なのはホントだよ?男の子が女の子を愛でる感情が、マナの性質を安定させるのに最も効率的なんだ。』
セイト:『でも何で管理者の感情でマナの性質が変化するの?世界の住人達の感情で左右されるなら分からなくも無いんだけど。』
ゼロ:『マナっていうのは、より強い思念や魔力によって影響を受けやすいんだ。この世界で最も強大な魔力と強い思念を持つのは管理者であるセイト君だから、その影響を受けやすいってわ・け・よ♪』
セイト:『ん?僕の魔力ってそんなに大きいの?』
メルティ:『そうですね、少なくとも私の何十倍もの魔力はありますね。』
ゼロ:『元々のセイト君の体だと魔力の濃度が高くなり過ぎて耐えられないから、体もこちらのマナを一部使ってんのよねぇ。だからマナが反応しやすいってのもあるのよ。』
セイト:『でも僕、魔法なんて使えないよ?』
ゼロ:『あったりまえじゃん?まだ使い方教えて無いもんねぇ。』
メルティ:『ではセイトさん、このグラスに、指先から水を注ぐつもりで精神を集中してみて下さい。』
セイトはグラスの上に人差し指を伸ばし、水を注ぐ感覚を想像しながら精神を集中した。
するとかなりの勢いでグラスに水が注がれた。
セイト:『おぉ!出た!』
ゼロ:『それが魔法だよ。コツはやりながら覚えてね。それでどう?疲れを感じたりする事は無いと思うけど、変な感覚とか無い?』
セイト:『何て言うか、少し変な感じはする。自分の指先から水が出てたから当然と言えば当然だけどね。』
ゼロ:『普段から魔法を使う癖をつけておくと良いよぉ。他の人と違ってセイト君は魔力が減る事が無い筈だから、上級魔法を連発しても倒れる事も無いし♪。』
メルティ:『そんな機会はほとんど無いとは思いますけどね。』
セイト:『それでメルティの説明って?』
ゼロ:『うん、この娘は女神見習いで、基本的には人と同じなんだけど、人と違う所が幾つかあるんだ。まずは体なんだけど、この娘は妊娠する事が無いんだよ。つまり子供が産めないんだよね。だから普通の人で言う女の喜びは半分しか得られないんだ。』
セイト:『半分?』
ゼロ:『性的な喜びは得られるけど、好きな相手の子供は産めないからね。』
セイト:『何か可哀想だね。』
ゼロ:『でもセイト君が貰ってくれる事で、少しはその問題を解決出来るのよ♪』
セイト:『言ってる意味が良く解らないんだけど?』
ゼロ:『女神は支える者に生涯を捧げるんだよ。普通ならこの世界の世界神って事になるんだけど、この世界の神はあと数千年は現れない。だから君が主になる事で、女神としての喜びと女としての喜びを得られるって訳。』
セイト:『なるほど・・・。ん?待てよ?僕に支える事で何で女の喜びを得られるの?』
ゼロ:『だ~か~ら~!君が彼女に性的な喜びを与えるんだよぉ♪』
セイト:『・・・えぇ!?いや、僕そんな経験無いし!メルティだって僕みたいな男じゃ不満かも知れないし!』
ゼロ:『あの娘はまんざらでも無いみたいだけどぉ?』
メルティは真っ赤になってモジモジしている。
メルティ:『あの・・・私で満足して頂けるのなら・・・。』
セイト:『・・・てかさぁ、神様が現れるまで数千年って言ってたけど、あなたが神様なんじゃ無いの?』
ゼロ:『ボクは数々の世界を管理する上級神だからね。一つの世界だけに干渉し続ける訳にはいかないのさ。』
セイト:『なら早く神様を降臨させるとか?』
ゼロ:『そんな世界の理を逸脱する事をしたら、この世界が崩壊しちゃうよ。』
セイト:『崩壊!?』
ゼロ:『世界っていうのは、光と闇のバランスによって成り立っているんだ。神が光で魔が闇ね。そのバランスを神界が勝手に曲げる事は出来ないんだよ。それが世界の理って訳。』
セイト:『管理者を降臨させるのは?』
ゼロ:『世界は神によって再生と破壊を繰り返すんだけど、その決定は管理者によって行われるんだ。神界同様に魔界にも管理者が居る。その役割分担は人々のエゴが増え過ぎたり、憎しみや憎悪が蔓延した時に世界に混沌を起こす事。だから管理者は世界に必ず降臨させなければならないのよ。』
セイト:『じゃあ今は魔界側の管理者も居るって事?』
ゼロ:『もちろん居るよ?多分別の大陸だろうけどね。』
セイト:『それで他に知っておく事はあるの?』
ゼロ:『君自身についての事かな?セイト君はこの世界の管理者だけど、基本的に世界への直接的な干渉は控えて貰いたいんだ。』
セイト:『たとえば?』
ゼロ:『この世界の一国に加担したり、王族との交流を深めたりするのは止めて欲しい。下手に善悪を向こうの世界の基準で解釈して行動すると、世界のバランスを崩す事になりかねないからね。』
セイト:『当然僕が世界の管理者である事も秘密にしなきゃならないんだよね?』
ゼロ:『当たり前じゃん!まぁ言ったところで信用する人は居ないだろうけどね。』
セイト:『生活に関してはどう?仕事したりとかさ。』
ゼロ:『君が今身に付けてる財布には、常に君が必要と思う金額のお金が入る様になってる。つまりお金に困る事が無いから、働く必要も無いって事だよ。』
セイト:『じゃあ普段は何をしたら良いの?』
ゼロ:『特には無いかな?でも冒険者になると魔法の練習には良いかもね。』
セイト:『冒険者ってスキルやランクなんかがあるんでしょ?僕の能力ってバレたら結構厄介なんじゃない?』
ゼロ:『それもそうか、ならセイト君にはフィルターを掛けておくよ。平均レベルの冒険者の能力に特殊な能力をプラスした程度にね。』
セイト:『フィルターって?』
ゼロ:『この世界の能力判定器で、本来の能力を見せない為のものさ。そうすれば周囲の人達に君の能力がバレる事は無いだろ?』
セイト:『便利だな。じゃあ別に一般人との接触は問題無いって事だね?』
ゼロ:『でもくれぐれも気を付けてくれよ?身分を隠している人も多いからね。』
その後幾つかの突っ込み所の多い説明をした後にゼロは帰って行った。
メルティ:『そろそろ夕食の支度しますね。』
セイト:『あっ!忘れてた!ねぇ、これ食べようよ!僕が作るからさ。』
セイトは買い物袋から味付きの焼き肉用牛肉と野菜とシーザードレッシングを出した。
メルティ:『そんな!セイト様にそんな事させられませんよ!』
セイト:『良いから良いから。』
元々焼き肉とサラダを作ろうとしてたのだ。
セイトは手早く野菜を切り、フライパンで肉を焼いた。
ご飯が無いのが残念だが、肉は徳用のを買っていたので量は十分だ。
ご飯の代わりに、付け合わせには家にあったパンを切った。
メルティ:『わぁ~♪良い香りですねぇ♪』
セイト:『食べてみてよ。』
メルティは肉を口に入れると、うっとりした顔で味わった。
メルティ:『美味し~い♪』
セイト:『それは良かった、このサラダも食べて。』
どうせゼロを責めたところで元の生活には戻れない。
ならばメルティと楽しく暮らせれば少しは気が楽になるというものだ。
そう考える事にして、セイトはこの世界で管理者として生きる事を覚悟した。
お読み頂き有り難う御座いました。