prologue 〜Memory〜
青い。
果てしなく青い。
なぜ青い?
きっと青がみんなの好きな色だからなんだと思う。
きっとこんな世界に生まれてきたものへの神様の計らいなんだ。
僕は、今日も空に上がる。顔に当たる風が心地よい。
仲間たちは食事をとったり移動するときにしか空に上がったりはしない。
前に聞いたことがあるけど『疲れるし、いつでも飛べるじゃないか、人間じゃあるまいし。』と笑われた。
ホントにあいつらはわかってないなぁ。
一度大きく羽ばたいて。
急降下。
重力を味方につける瞬間。
人間たちの住む地上が近づく。
もう一度羽を羽ばたいて水平に戻る。
背面で飛ぶ。あぁ気持ちよい。
空で死んでしまうなら後悔はないなぁ。そんなことをふと考える。
でも僕らだって地上に帰ってこなければいけない。
空では寝れないし、高い場所には虫だっていないんだからなぁ。
まったく。でも、独り占めできるからよいのかもしれない。みんなが空を好きになってしまったら、きっと空が混んで台無しになってしまうだろうな。
手頃な木の上に止まると僕は自分がいた空を見上げた。
鳥に生まれてよかったな。もし空に行けなくなったらそれこそ僕は死んでしまうだろうな。
考えただけで羽の一つ一つが震えている気がする。
あぁやめよう。そんな話。僕はずっとここで生きていくんだから。
秋の雲は、静かに太陽を隠した。それがまた綺麗で、見慣れているはずの光景に見とれてしまった。