試験前の腹ごしらえ
…この店、二人だと来づらいなぁ…。
知り合いが多いから…リノンの事目立ってる…。
「お待たせしました、ご注文のハンバーグ定食と
アジのフライ定食です。」
…だから、なんでわざわざテーブル担当変えるんだよ!!
「…ありがとうございます。」
「…彼女可愛いね…ごゆっくり!」
僕に耳打ちをしてくる。
「ユウスケ、なんて言われたの?」
「いや、何でもない…。」
「え~、聞きたい!!」
「…彼女可愛いねって…。」
僕は素直にリノンに告げる。
リノンは頬を赤らめながら、少し嬉しそうだ。
「じゃ、じゃあ、冷めないうちに食べましょ!」
「うん…。」
…なんだか、皆に冷やかされて、僕はげんなりしていた。
「ユウスケ?元気ないよ?」
「ううん、大丈夫。」
「…せっかく二人の食事なんだから、笑顔で!」
リノンに釘を刺される。
…そうだな…リノンと二人だし。
気楽に行こう。
「うん~!お魚おいしぃ~♪」
「…尻尾から食べるんだ…。」
「残さず食べるの♪
ここが栄養あって、おいしいんだよ?」
リノンはアジのフライをおいしそうに食べる。
うん、リノンを眺めてると元気が出てきた。
「ユウスケのその…ハンバーグ?
も、おいしそうね…。」
「うん、食べてみる?」
僕は、ハンバーグをナイフでとりわけ、
リノンの皿に置く。
「食べてみて?」
「うん!」
リノンは一口でハンバーグを食べる。
ん?
食べた後、なんだか頬を赤らめてるのはなぜだろう?
「おいしいね…。」
「うん、このハンバーグも店長自慢のものだよ。」
僕は誇らしげに言うが、リノンはあまり聞いて無さそう…。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま。」
リノンにつられて、僕もごちそうさまの挨拶をする。
「じゃあ、よいよ試験だね。」
「うん!」
そういって、僕は会計の方に向かう。
「ありがとうございました~。」
今度は店に入った時の先輩がレジをしていた。
「…これから彼女とデート?」
「いや、残念ながら違います…。」
「そっか、じゃあ、彼女を大切にするんだよ!」
先輩は耳打ちしてくる。
「何話してたの?」
「いや、何でも…。」
僕は若干疲れ気味にリノンに答える。
「じゃあ、学校に行くよ。
僕が職員室まで案内するから。」
「うん、ありがとう。」
僕はリノンの手をとり、学校へ向かう。
学校に着くと、春休みの部活で生徒がたくさんいた。
僕は気恥ずかしくなり、リノンの手を離す。
「?」
「ちょっと恥ずかしいから、ここからは手を離して…。
で、いい?」
「うん、寂しいけど、良いよ。」
リノンは納得してくれたようだった。
二人並んで校舎に入り、職員室までリノンを連れていく。
「失礼します。」
「ああ、新田君、事情は聴いているよ。
じゃあ、新田莉音さんはこっちに来てくださいね。」
リノンは先生に連れてられて、生徒指導室に向かう。
これから、リノンは一人で頑張るんだな…と。
応援してるよ。
リノン。