…そっか…初デートだったな…。
「リノン、そういえば箸使えるの?」
「うん、使えるよ~。
向こうにもあるから。」
僕とは違う世界出身だけど、意外と共通点も多いみたい。
箸はあるんだ…意外…。
「ゴメンね…初デートが、ファミレスで…。」
「え?高級料理店じゃない?」
リノンは魚からきれいに骨を取り出す。
…やっぱり魚好きって言ってたけど、本当だな…。
「うん、この魚、おいし~♪」
「サンマって言うんだ。
この世界…日本って国なんだけど、
ここでは庶民的な魚だよ。
多分、冷凍もので鮮度は落ちてるけど…。」
「え?冷凍されてたものなの?」
「うん、たぶんね。保存してたものだと思う。」
「氷の魔法?」
「いや…これも機械でだよ…。」
「なんだかこっちの世界も、私から見ると魔法の世界だよ…。」
そんな会話をしながら、リノンは上手に魚を食べる。
「え?骨まで食べるの?」
「うん♪ここまでしっかり焼いてたら、食べられるよ?
ユウスケも食べなよ?」
「…僕は遠慮しとく…。」
…本当に魚、好きなんだな…。
僕と違った意味で…。
「じゃあ、ユウスケのもらっちゃうね♪
…ユウスケ、まだ身がいっぱい残ってるよ?」
「…食べ方うまい方なんだけどな…。」
そういうと、リノンは僕の皿を奪っていく。
本当…上手に食べるな…。
…食べてる姿も可愛いなぁ…。
ん?なんか、顔赤くして固まってる…。
「大丈夫!?
骨刺さったの??」
「…いや…何でもない…。
「ほら、水飲んで…。」
「…間接キス…。」
「え?聞こえなかった?」
「何でもない!!」
おかしなリノンだなぁ…。
一通り食べ終わって、談笑の時間。
「初デート…こんな素敵なお店でよかったなぁ…。」
すごくうれしそうにリノンは言う。
「…いや、ここそうでもないから…。」
「でも、二人でこうしているのは、良いお店ね…。」
「まぁ…結構、恋人同士もいるけどね…。」
そういえば、そうだったな…。
初めてバイトした時、「リア充爆発しろ!!」って、
心で何度唱えたか…。
「そうだ。
デザート…甘いものなんてどう?」
「あっ、食べたいな!」
僕はそう言って、メニューを調べる。
ここ、パフェ置いてるから…。
「この、イチゴのパフェなんてどう?」
「わぁ…きれい…。
食べてみたい!」
「うん、わかったよ!」
僕は、リノン曰く、魔法の装置のボタンを押す。
「お待たせしました、ご注文は何でしょう?」
…。
普通、テーブルの担当決まってるだろ!
なんで代わる代わる来る!!
…今度、店来る時が怖い…。
「えっと…イチゴのパフェお願いします。」
「かしこまりました。イチゴのパフェ1つですね?」
…こっちをにやにやしながら見てる…。
…店長、教育を…って、本人が一番に来たか…。
「ユウスケ、どうかしたの?」
「…いや、何でもない…。」
「お待たせしました。イチゴのパフェです。」
…また、違うし…。
厨房の方、噂になってそうだな…。
「ユウスケ…すごいね…。
どこから食べよう?」
「上から崩れないように食べればいいよ?」
リノンはパフェを食べだす。
「うん♪
おいしぃ~♪」
…なんか、パフェ食べてるリノンを見てるだけも幸せだな…。
思わず、ほころんじゃう…。
「ん?ユウスケ、さっきからニヤニヤして…。」
「ううん、何でもないよ?」
「なんか、食べ方変なの?」
「ううん、パフェを食べるリノンが可愛いな…って。」
「カシャーン!!」
リノンがスプーンをテーブルに落とす。
そして、慌てるようにスプーンをとり、
顔を真っ赤にする。
「…ユウスケ、ずるい…。」
「何が?」
「…何でもない…。」
顔を真っ赤にしながら、リノンはパフェを
ほおばっていた。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
「うん…ちょっと名残惜しいけど…。」
…まぁ、僕もそうかな…。
なし崩しだけど、初デートだし…。
「お客様、お会計ですね?」
…もう、ツッコむのはやめよう…。
バイトに行くときはもう覚悟するよ…。