電車の帰り道。
「…。」
「…。」
どうやら、クレープの毒が効いてきたようだ…。
僕もリノンも黙ってしまう。
「…そろそろ帰ろうか…。」
「…うん…。」
そういうと、僕はリノンの手を取って、
僕たちは駅の方に向かう。
心なしか、リノンの手は暖かい。
…そういう僕も手が暖かくなってるけど…。
汗ばんでないかちょっと気になる…。
手をつなぐ理由は、ほかにもある。
モンスターとのエンカウントの時に、はぐれる可能性があるから。
現実世界では、時間が止まるけど、異世界のはざまで
一人きりにさせたくない気持ちもある。
「…。」
「…。」
無言のまま切符を買い、改札を通り、ホームに出た。
…なんだろう…この沈黙は…。
僕は沈黙を破るため、話題を振る。
「さっきのチョコバナナクレープ、おいしかったね。」
「…!?」
リノンがびくっとする。
逆効果!!
「い、いや、その…。」
「…うん、とっても甘かった…。」
リノンは僕をどこか切なげに、そして嬉しそうに見上げていう。
…!?
リノン、それはずるいよ!!
その表情で、そのセリフって…。
「えへへ☆
今度のは交換だったもんね♪」
リノンが追い打ちをかける。
…リノン…一体僕をどうしたいのさ…。
「私無しじゃ生きられないように♪」
「こ、心の声を読むな!!」
…ふぅ…リノンに遊ばれっぱなしだよ…。
そんな中、電車は僕たちの前で止まる。
「帰り道、長いけど大丈夫?」
「うん、平気だよ♪」
そうして、僕たちは何度か電車を乗り換えて、
最後の電車に乗り込む。
最後の電車は席が空いてたので、二人で座る。
「…。」
「…。」
沈黙が続く…。
「ねぇ、リノ…。」
「すぅ…。」
リノンは寝てしまったようだった。
今日は疲れたのかな?
…まぁ、僕の気持ちも振り回してくれたけど…。
モンスターとの戦闘もあったりで、疲れているんだろう…。
僕は寝かせてあげることにした。
「う~ん…ユウスケ…。」
僕の夢でも見てるのだろうか…。
リノンが僕の方に倒れこんでくる。
僕はそっとリノンを抱き寄せる。
「…ユウスケ…。」
どんな夢を見ているんだろう?
僕もなんだか…眠く…。
「…甘くておいしい…。」
僕は、びくっとする。
…クレープの事でも夢見てるんだろうか…。
ここでもクレープの毒にやられるとは…。
僕は眠気をこらえながら、僕たちの駅まで耐える。
「リノン、着いたよ。」
「…う~ん…。あれ?私寝ちゃってた?」
「うん、そうだよ。」
「今日は楽しかったよ♪
ありがとう!」
リノンは満面の笑みで答える。
…体勢的には卑怯だと思うけど…。
…寝ぼけてそうだし、まぁいいかぁ…。
僕はリノンをゆっくり起こし上げて、電車から二人で降りた。
「そういえば、どんな夢見てたの?」
ちょっと、気になったので、聞いてみる。
まだ意識がもうろうしているのだろうか?
リノンはこう答える。
「チョコバナナがおいしかったの♪」
ここでも、クレープの毒にやられました…。