なんか、彼女と子供が同時にできたみたい。
「じゃあ、行ってきます。」
「ジータさん、雄介の事よろしくね?」
「わかりました。行ってきます!」
「…雄介、後でしっかり教えてもらうからね?」
…。
どう説明すればいいんだろう…。
リノンが突然出てきて、
説明することが多くなっちゃった…。
「ユウスケ、働いてるお店行きたいな…。」
「…うん、約束してたよね…。」
…なんか、今日は行き辛いなぁ…。
店長に、なんていわれるか…。
あと、常連さんにも…。
二人並んで歩く。
「!?」
不意に、リノンの手が触れる。
僕はびっくりして、小さく声を上げる。
「…ねぇ、ユウスケ…。」
「なに?」
「こういう時、なんて言うもの?」
…!?
意味は理解した。
でも、勇気が出ない…。
同級生にあったら…。
「ねぇ、ユウスケ?」
ちょっとすねた様子で、覗き込む。
…可愛い…。
…そうだよな…。
ここは、リノンの気持ち優先だよな…。
「…手…つなご?」
「…うん…。」
リノンは、顔を赤らめながら、
でも嬉しそうに手を差し伸べてくる。
それに、僕は手を合わせる。
…暖かくて…柔らかい…。
「こういうの、あこがれてたな…。」
リノンはつぶやく。
「あっ、でも、夢の中のユウスケは、
いっぱい手をつないでくれたな…。」
「どんな夢か、聞きたいな…。」
「それはね…。
な・い・しょ☆」
…店まで持つかな…。
この調子だと、リノンに悩殺されて倒れそうだ…。
「ねぇ…。
ユウスケはどんな夢見てたの?」
「…秘密だよ。」
「ずるーい!」
「お互い様じゃないか…。」
この光景…周りの人から見たら、どう見えるんだろう?
やっぱり、リア充かな…。
僕もリア充になるとは思わなかったけど…。
「ユウスケの見ていた景色って、こんなだったんだね…。」
リノンが突然しんみり言う。
「こっちの世界は見るものすべて新鮮ね!
なんか、馬車っぽいものが通るけど、あれがバス?」
「あれは、自動車だよ。
バスはもっと大きいよ。」
「そうなんだ…。
バスも見れるかな?」
「巡回バスがあるから、見れるかもね。」
…そうだよね。
リノンにとっては、こっちの世界は、
見るものすべて新鮮なんだ…。
それに…こっちの生活にも慣れてもらわないと…。
これから、リノンにいろいろと教えてあげないと…。
「なんだか、彼女と子供がいっぺんにできたみたい…。」
「…なにそれ?
私が子供っぽいっていうわけ?」
ちょっとむくれて、リノンは言う。
…やっぱり、可愛い…。
「いやね、リノンにはこっちの生活慣れてもらわなきゃって。
そう考えたら、子供ができたような気になって…。」
リノンはきょとんとしてから、優しい笑みをかける。
「そうね…。
いろいろ教えてね、お父さん♪」
「…お父さんって…。」
「…えへへ…☆」
リノンは顔を赤らめながら、
なんだかものすごく照れている。
「どうしたの?」
「…。
な、なんでもない!!」
さらに顔を赤くして、そっぽを向く。
「あ…。
なんか大きい自動車見つけた…。」
「うん、あれがバスだよ。」
「大きいね…。」
「今度乗る?」
「うん☆」
そうして、僕のバイト先のファミレスに着いた。