レベルの壁
僕たちは何回ぐらい異世界のはざまに行っただろうか?
これだけやって、リノンの言う通り、僕はレベル20になった。
「…リノン…これでよくレベル99にしようと思ったね…。」
「私、凝り性だから♪」
…いや、凝り性ってもんじゃないと…。
日記では、サクサクレベルが上がってたイメージだけど…。
実際はこんなに大変だったんだ…。
しみじみとリノンの凄さを実感する。
「…?」
「いや、リノンって、本当にすごいな…って。」
僕だって勇者にあこがれたことはある。
けど、今日やってみた感じ、現実は違った。
レベルが上がるごとに次のレベルまでが遠くなって…。
結局、あれから3しか上がらなかった。
経験値効率のいい敵は、向こうでもレアなので、
こっちに紛れているのは少ないらしい。
まぎれてしまったものの、退治もかねて行った結果だ。
「ユウスケ、そんなに早く強くならなくていいよ?
私だって、6カ月以上かかってるんだよ?」
「うん、そうだね…。」
…確かに僕は焦りすぎたかもしれない。
最初でレベルがガツンと上がったので期待してた…。
言われてみれば、これを6カ月以上もやり続けていたんだ…。
昨日の今日でレベル20でも十分早い。
「それにね、賢者は必要経験値が多めなの。」
「え?そうなの?」
「うん、魔法をたくさん覚える分、その見返りなの。」
…確かにそうかもしれない。
レベルが上がった時の、次に必要な経験値の量が
びっくりするくらい増えてた。
「…ところで、勇者は?」
「一番が勇者で、次が賢者。」
…やっぱり、すごすぎる…。
サラっと苦行をするところが、またリノンらしい。
…てか、リアルでやってるんだよな…。
そういう突拍子もないことを、さらりとやってのけてしまう…。
僕はリノンのそんなところを、好きになっていったような…。
そんな気がする。
…しかも、装備は「しとやかなドレス」に「毒針×2」と
来れば…。
…無茶苦茶すぎるよ…リノン…。
「ユウスケ、リノンー。
夕ご飯よー。」
母さんの声がした。
「うん、今行く。」
そして、二人でリビングに向かった。