父さん、母さん、ありがとう…。
「すぅ…。」
リノンは泣き疲れて眠ってしまったようだ。
…そうだよね…リノンも…大変だったんだよね?
僕なら…異世界に行ったとして、
リノンのように出来ただろうか?
「…リノンは強いね…。」
僕はそうつぶやいて、僕のベッドにリノンを運ぶ。
…軽いなぁ…。
異世界ではレベル99で魔王を倒した勇者…。
でも、今は一人の女の子なのかもしれない…。
ベッドにのせて、布団をかける。
…寝顔も可愛いなぁ…。
「大好きだよ…ユウスケ…。」
「!?」
僕はリノンから慌てて離れる。
…起きてた?
「すぅ…。」
小さな寝息を立てている。
…寝言かな…。
僕はそっとドアを閉めて、リビングに向かう。
親にもちゃんとお礼言わなきゃ…。
「雄介、リノンさんは?」
「泣きつかれて寝ちゃったよ…。
今日は僕の部屋で寝かそうと思う。
僕はリビングで寝ようかな…。」
「母さんが、客間をリノンさんの部屋にして用意してくれた。
今日はそこで寝るといい。」
父さんからそういわれる。
父さんも難しい顔をしてる…。
「父さん、ごめんなさい…。
こんなことになるとは思わなかったから…。」
僕は父さんに謝る。
「リノンさんの事か?
気にするな、こっちでも何とかするから。」
「…。」
「それにしても、あんな可愛い子にあそこまで
惚れられるとはな!
雄介も成長したもんだな!」
大きく笑う。
でも、顔は今まで見たことが無いくらい…。
いや、久しぶりに見たかな?
優しい顔で言ってくれた。
「…ありがとう…。」
「リノンさんを大切にするんだぞ?」
「もちろん!!」
「あはは!いい顔だ、雄介!
もう遅いから、早く寝なさい。
明日は学校だろ?」
父さんは優しく笑う。
そして、テレビのニュースに目を向ける。
客間…リノンの部屋から、母さんが出てくる。
「話しは聞こえてたよ?
雄介も早く寝なさい?」
「うん、ありがとう…。」
「それにしても、雄介があんないい子を連れてくるなんて…。
泣かせちゃダメよ?
母さんも嬉しくて…。」
…母さん、泣かないでくれ…。
「父さんも嬉しがってたわよ?
今は照れてニュースの方見てるけどね。」
「うるさい!!」
笑う母さん、どなる父さん。
…今まで気が付かなかったけど…。
本当、良い両親を持ったって、しみじみと感じるなぁ…。
「ありがとう。
父さん、母さん。」
「うん、お休み。雄介。」
「お休み。」
僕はリノンの部屋で眠る。
…夢のようだ…。
まだ今日の事なのに…。
夢なら…覚めないで…ほしい…。
僕も疲れてたみたいで、すぐに寝入ってしまった。