信じられないかもしれないけど…信じてくれ!!
「…。」
「…。」
「…。」
リビングは沈黙が続いていた。
…ダメだ!どこから話せばいいんだ!?
「雄介、素直に話してみなさい。」
「そうよ、あのお嬢さんの事なんだから。
私たちにもちゃんと話して?」
「はい…。」
…仕方ない…。
日記からは話そう…。
「えっと…夏ごろに僕の机に、ノートが現れて…。」
「…現れた?」
「あ、いや、その…。」
…多分、嘘をつけばバレる。
バレないように塗り固めても、嘘が広がって苦しめられる…。
正直に話してみようか?
「…魔法のノートっていったら信じてくれる?」
「何を言ってるんだ!!」
…怒られた…。
…はい、ダメですよね~。
「えっと、日記の入手は置いといて…。
何気なく交換日記を初めて…。
仲良くなって、今日初めて会ったんです…。」
「その彼女が、急に家に泊まると?」
「…行き場が無いので、
しばらく生活させてあげてほしいんです…。」
「泊めてあげるのはいいが、生活はなぁ…。
それに彼女のご両親の事もあるだろう。
春休みはいいが、それ以上は家に帰ってもらわないと…。」
「…これは本当の話しだけど…。
彼女、もう帰ることが出来ないんだ…。」
「…どういうことだ?」
…もうヤケだ!!
信じないだろうけど、全部本当の事を話してやる!!
「交換日記は実は魔法の本で、
異世界につながってたんだ!
リノンはそこで勇者やってたんだよ!!
そして、魔王を倒して天使様に導かれてこっちに来た!
僕が…呼び出したんだよ…。
一方通行だったんだよ…。
だから、もうリノンは帰ることが出来ない!!
信じてくれないなら…リノンと家を出ていく!!!」
…くそぉ…。
誰がこんな話し、信じるんだよ…。
…リノン…ゴメン…。
僕ではもう上手く説明できない…。
もう悔しくて、悔しくて…。
…涙が出てきた…。
…親の前で泣き出すなんて、どれくらいぶりだろう…。
こんなに…わかってもらいたいことが伝わらないって、
悔しい…。
「雄介。」
親父が優しく肩に手をかける。
「よくわからないが、彼女は帰るところが無いんだな?」
「う…ん、僕は彼女を呼んじゃったから…。」
「何か言えない事情があるのか?
嘘をつかずに、正直に話してほしい。」
…嘘なんかついてない!!
本当なんだよ…父さん…。
信じられないかもしれないけど…。
あなたの息子は、正直に話してます…。
「あはは…信じてもらえないよね…。
僕は本当の事を言ってるんだよ?
正直、僕も信じられないんだ…。
だから、無理に信じてくれとは言わない。
でも…リノンの事は…。
家を…自分の世界を…全てを捨てて、
僕の所に来てくれたんだ…。
…お願いします…。」
…何言ってるんだろう…。
もう、何話したら良いかわからないや…。
「お父様、お母様!」
いつの間にかリノンがリビングに来る。
…ゴメン…リノン…。
僕ではこれ以上、上手く説明できないや…。
「私はリノン・ジータと申します。
私は、この世界とは別の世界…。
こちらでは異世界と呼ばれるところから来ました。
私自身もこちらに来たことが信じられません。」
…リノン…。
ちょっと震えてる…。
…ありがとう…勇気を出して、話ししてくれてるんだね…。
「私が、別の世界…異世界から来た証明をします!」
…え?
そんなこと…出来るの?
「これは、ユウスケさんと日記をしていたものと同じものです。
私の…友達が向こうの世界に居ます。
これは魔法のノートで、機械ではありません。
見てみてください!」
リノンは父さんに日記を手渡す。
父さんはまじまじと日記を見ている。
「…普通のノートだね…。」
「はい、こちらの世界では普通のノートに見えると思います。」
そういうと、リノンは筆をとり、日記に書き記す。
・・・・・
シルビィへ。
待っててくれてありがとう。
この日記に返信して?
お願いね。
リノンより。
・・・・・
リノンが書くと、ノートがほのかに光る。
両親はびっくりしたような顔で、ノートを見つめる。
そして、ノートがまた光る。
ノートには、次の事が追記されていた。
・・・・・
お姉ちゃんへ。
わかったよ~。
返信したけど、これでいい?
シルビィより。
・・・・・
両親は目を丸くする。
「これは、機械ではなく、魔法なんです。
信じていただけたでしょうか?」
…リノン…頑張ってくれてありがとう…。
これで、わかってくれなければ、一緒に家を出よう…。
そして、二人で幸せに暮らそう…。
「…。」
「…。」
「雄介。」
「はい…。」
「信じるよ。」
「え?」
「正直、まだ信じられないが…。
この日記を見せられたからには、仕方がない…。
本当に異世界から来たと信じていいんだね?」
「…父さん…ありがとう…。
うん、異世界から来たんだ…。
本当はこっちの世界に来てはいけない人間かもしれないんだ…。」
「…そうか…。」
父さんは考え込む。
…父さん…本当にありがとう…。
こんな話し、信じてくれて…。
「身元不明は不便だよな?
雄介と同じ学校に行けるように、父さん手配するよ。」
…え?
…父さん、何をするつもり?
「リノンさん。
これからはうちの家族として、よろしく頼みます。
雄介と仲良くしてくれると嬉しいよ。」
「お父様…ありがとうございます!」
リノンは頑張ったのか、急に力が抜けて
座り込んでしまった。
そして、泣き出す…。
「ありがとうございます…。
ありがとうございます…。」
泣きながら、僕の両親にお礼をする。
「しかし…雄介も隅に置けないなぁ…。
こんな可愛い子に好かれるなんてな!」
「そうね…素敵なお嬢さんですもん。
なんだか、娘が出来た感じで嬉しいわ!」
「…まぁ、これからというか、今から私たちの娘だけどな。」
父さんと母さんが笑いあう。
…父さんは何をする気だろう…。
とりあえず、泣きじゃくるリノンのもとにより、
優しく頭を撫でてあげた。
「頑張ったね…リノン。」