……僕、何か悪いこと言った?
僕は部屋に戻る。
リノンはパジャマ姿で、僕についてきた。
僕は昨日の事が頭をよぎり、まともに顔を見ることが出来ない。
「ユウスケ……」
なんだか、色っぽい声で話しかけてくる。
な、なに?
また僕をからかってるの?
「どうしたの?」
「ううん。なんでも」
「……」
「……」
しばし、無言。
リノンは僕の顔を見ては、顔を伏せて赤くなる。
そのしぐさは可愛らしい……というか、なんか色っぽい。
リノンは一体、何をしたいんだ?
「……リノン?」
「ひゃい!」
リノンが変な声を上げる。
昨日の事でも思い出してるのかな……。
背中合わせと言え、一緒にお風呂入ったし……。
「……赤ちゃん……」
「ふめ!?」
「い、いや!! 何でもない!!」
今度は僕が、変な悲鳴を上げる。
今……なんて?
「いや……何でもないから……」
リノンは恥ずかしそうに、うつむく。
そして、少し寂しそうに、リノンはお腹をさする。
僕は混乱する。
そうか……これがリノンの世界で言う、混乱の呪文か……。
気を取り直して……。
「リノン……」
「なぁに……」
さっきから、色っぽいのはなぜだろう。
しかも、パジャマ姿で……ずるいと思う。
僕は、昨日自身に向かって、心に決めたことを思い出す。
今……言ってみよう。
勇気を振り絞って……。
「僕、責任とるから……」
「え?」
そう、僕はリノンをこちらに呼んだ責任を……。
リノンは仄かに、目に涙を溜める。
「嬉しい……」
リノンはそういうと、大粒の涙をこぼす。
……リノンはこっちの世界に来て、一人寂しかったのかな……。やっぱりまだ一人で居るって思ってたのだろうか?
もし、それで、苦しんでいたのであれば、この涙で晴れたと……そう願いたい。
僕は、リノンをそっと抱き寄せる。
「リノンの事……守っていくから……」
「……うん」
抱き寄せてるから、表情は見えないけど……。
なんとなく、喜んでいる表情になっているように、伝わってくる。
「たとえどんな……手ごわいモンスターが来ても、リノンを守り切るから……」
そう……僕は、昨日、誓ったんだ……。
絶対に守ると……。
僕は、リノンを強く抱きしめる。
「ふぇ?」
その言葉を聞いたリノン。
なんだか、気の抜けた声を上げる。
「なんて?」
「いや……だから、モンスターに襲われて、ピンチになっても……」
僕が全てを言い切る前に、リノンは僕から離れ、ベッドに行く。
そして、僕の枕を手にすると……。
「ユウスケの……」
枕を振りかぶって……。
「ばぁーか!!!!」
思いっきり、僕の顔にぶつけてきた。
「ふごっ!!」
「もう少し、考えてよね!!」
リノンは怒って、部屋を出て行ってしまった。
僕……なんか悪いこと言った?




