二人きりの花見
僕たちは、大樹の家を離れ、二人で歩いていた。
リノンは桜並木に、見惚れているようだった。
「リノン、もう少し花見ていく?」
「うん!」
春風が、暖かくなでる。
「じゃあ……別の公園もみようか」
「うん♪」
さっきの戦闘の話しもしたいけど……リノンが花を見たいなら、それでもいいかなと思った。
僕たちは、小さな公園に寄り道をする。
「人、多いね」
「でも、お花きれい……」
小さな公園でも、人混みは絶えず。
ちょうど、シートを置くスペースがあったので、僕はピクニックシートを広げる。
「座って見ない?」
「いいね♪」
二人で座る。
春風が桜を散らす。
「……」
「……♪」
リノンはとても嬉しそう。
きっと……戦いの時は、こんな休息もなかったんじゃないだろうか?
今はこうして、一人の女の子としているけど……。
さっきみたいな戦闘を繰り返していた、猛者でもある。
「ねぇ、リノン」
「なあに?」
リノンは花に見惚れながら、僕に返事をする。
「リノンのいた世界では……こうしてゆっくり花見もできなかったの?
リノンは少し首をかしげて、考える。
「ううん。お父さんたちとお花見はしたよ~」
「そうなんだ……」
リノンはどんな世界で育ったんだろう?
平和ボケしてる僕たちとは、異なる世界で……。
「リノン……」
「なあに?」
「リノンって、強いね……」
「うん♪ レベル99だし♪」
「そうじゃなくて……」
そう……レベルなんかじゃない。
一見か弱そうに見える女の子なのに……。
「魔王……倒したんだよね?」
「そうだよ。正確には浄化だけどね」
リノンは花に見惚れながら言う。
「僕なら、多分無理だったかな……」
「いや、私も一人だったら、無理だったかな……」
「シルビィ?」
「ううん。ユウスケが居たからだよ?」
相変わらず、花に見惚れるリノン。
僕は、そんなリノンに見惚れてるけどね。
……でも、大胆なこと言うなぁ……。
僕が居たからって……。
「私も心細かったんだよ?」
「?」
「いきなり、勇者って言われたし……」
「うん……」
「正直、無理って思ったの」
花を見ながら、少しずつ語っていくリノン。
「私も、最初軽い気持ちだったけどね……日記」
「僕も……」
「え? 軽い気持ちだったの?」
いきなり向き直って、不機嫌になるリノン。
いや……軽い気持ちって、リノンが……。
「……勇気、もらってたんだよ?」
「……」
「ユウスケが書いてくれた日記、勇気になったんだから」
「うん……」
また、花に目をやるリノン。
「ふふふ……」
「ん?」
「ちょっと思い出しちゃった」
「何を?」
「校長先生」
リノンはクスクスと笑う。
「私も、校長先生の魔法にかかるのかなぁ……」
「あぁ、うちの校長話し長いからね」
「なんかね、ユウスケの話ししてくれたこと、私も一緒の体験できるって……」
リノンは一瞬言葉を止める。
「……嬉しい」
「え?」
「な、何でもない!!」
リノンの頬が赤く染まる。
「私……幸せだからね……」
「僕もだよ」
「……うん」
僕も一緒に花を見上げる。
正直、花見なんて、興味がなかったけど……。
二人で見る花は、きれいに見えた。
「さ、帰りましょうか」
「うん」
僕はシートを折りたたんで仕舞う。
なんだか、花に照らされてか、リノンがいつもよりも、可愛く見える。
こうして、二人だけの花見は終わり、僕たちは帰路についた。