帰り道。父さんをどう説得しよう…。
僕たちはバスから降りて、電車に向かう。
リノンの言葉に動揺したけど…。
まぁ、電車はすぐだし…。
とりあえず、切符。
「ユウスケ、これ何?」
「切符を買うところだよ?」
「え?人いないよ?」
「大丈夫だよ?」
お金を入れて、切符が2枚出てくる。
「…ユウスケ、これ、中に人いるの?」
…やっぱりそう思うか…。
なんか、機械については反応が予想通りで
面白いなぁ…。
「うん、中に人が居て、売ってくれるんだよ。」
「へぇ…中の人、人見知りなのかしら?
こういう仕事なら私もできそう!」
「…ゴメン、嘘だから…。
機械で自動的にやってるんだよ。」
「…。」
あっ、拗ねた…。
…僕を怒らせたのリノンはこんな感じだったのかな…。
拗ねてるところも可愛い…。
「ゴメン…、リノンの反応が面白くて…。」
「…ユウスケの意地悪…。」
リノンは僕をにらんでくる。
…日記ではいろいろ話して、
好きな気持ちになっていったけど…。
まだ会えたのは今日の事だし、実感わかないなぁ…。
「…ユウスケ、これ、どうやって入るの?」
「切符をここに入れて、出てきた切符をとるんだよ?」
「うん、やってみる!」
「…人は入ってないからね…。」
「わかってる!!」
…やっぱり可愛い…。
…てか、いじりすぎたら嫌われるかもだから、
ほどほどにしよう…。
改札を抜けて、ホームへ。
電車はすぐに来るらしい。
「電車が参ります。
危ないですので、黄色の線の内側に下がったお待ちください。」
「すごい声が大きい人だね…。」
「いや、あれが前言ってたスピーカーだよ。
マイクで話して、声を大きくするの。」
「へぇ…じゃあ、ここがカラオケ?」
「違うから…。」
…本当、こっちの生活教えてあげないとなぁ…。
「きゃっ!!!」
「電車来たね。」
「これ、早いけど、止まるの?」
「止まるよ。
ほら、ゆっくりになってきた。」
電車は止まり、ぷしゅーっと、ドアが開く。
「すごい!一斉にドアが開いた!!」
「…魔法じゃないからね?」
「…もう、なれました…。」
リノンはちょっとむくれて言う。
そういえば、リノンは勇者だったんだよな…。
なんか、今こうしていると、普通の女の子にしか見えないな…。
電車はすいてたので、少し離れて二人で座る。
…そうだ、帰ったら父さんになんていよう…。
「…。」
「どうしたの?ユウスケ?」
「いや、父さんになんて言おうか考えて…。」
「そうね…。
エアコンの時と同じじゃダメ?」
…そういえば、エアコンは贅沢だって、猛反対されたな…。
リノンの事も反対されるかな…。
…いや、反対される想定で行こう!
「僕のディベートスキルを使ってみるよ!」
「倒しちゃダメだよ?」
「…う~ん、ある意味倒さなきゃいけないけど…。
…まぁ、戦うだけど…。
経験値入るような倒し方しないから、大丈夫だよ?」
「弱らせるだけ?」
「…武力行使はしません!!」
駅に着き、改札を抜ける。
「ユウスケ!!
切符出てこない!!」
リノンは改札機とにらめっこしてる。
…そうだった、言うの忘れてた…。
「出るときは切符は回収されるんだよ?」
「早く言ってよ!!」
またリノンはむくれる。
…ちゃんと気を付けてあげないとダメかもな…。
リノンはこっちの世界の事は何も知らないから。
…なんか、本当に子どもみたい…。
「?
ユウスケ、何がおかしいの?」
「…いや、何でもない…。」
「む~!!」
あ、またむくれた…。
あまり怒らせないようにしなきゃ…。
…本気で怒らすと、レベル99のステータスで何されるか…。
それは、そうと、父さんだな…。
どう説明しようか…。
正直に話す?
…いや、信じてもらえないだろう…。
そもそも、リノンは異世界出身だから…。
「…。」
「どうしたの?ユウスケ?」
「何から話せばいいか考えてる…。」
「うん、応援してるね♪」
リノンは笑顔で僕に声をかける…。
…今考えてたの、とんじゃっちゃよ…。
そして、家の前。
…こうなりゃ、出たとこ勝負だ!!
「ただいま…。」
「お邪魔します。」
「あら、お帰りなさい!
リノンさんのお部屋も準備出来たところよ。
くつろいでいってね!」
「ありがとうございます。
では、ユウスケさんの部屋に荷物とりに行きます。」
リノンは僕の部屋に向かった。
リノンはふと思い出したように立ち止まり、
僕に声をかける。
「あ、そうだ!」
「どうしたの?」
「あの日記みたい!」
「いいよ。僕の机の引き出しにあるから、見て。」
きっと、リノンの書いてたのと一緒だと思うけど…。
「お母さん、父さんいる?」
「ええ、帰ってきてるわよ。」
「ちゃんと、リノンの事話したい。」
「うん、そうしてちょうだい。
私も聞きたいことたくさんあるから、
一緒に聞かせてもらうわ。」
こうして、僕のバトルが始まった。