デュシャンの妄想
「おい、デュシャン、またチェスやってるのかい」
「アートは破壊した」
「え、なに?」
「チェックメイト、勝った」
「マサルは元気か」
「んー、彼はまたタイムトリップを楽しんでるようだ」
デュシャンはそう言い残すとマサルのもとへ向かった。ドアのベルを鳴らし、マサルが経営しているドラッグ店に入った。医者の経験を持つマサルである。デュシャンはいつもマウンテンビューというドラッグを買っていた。
“あなたの妄想はひねくれた想像力だ”
とマウンテンビューの瓶の裏に書いてある。
マサルは留守だったが、代わりに若い女がいた。
「よう、マリナ」
「マサルくんね、遠く未来まで研究に行ったのよ、いけない事とは?と私に言ってきて、何?って返したら出て行ったのよ」
「いけないクスリでも作るのか」
「そうとも考えられるわね」
「またいけない妄想でもするか」
これはまたクスリのお陰か…。とてもいけてる型だ。
便器にサインを貰い、「泉」と名づけ、面白くもなく可笑しい妄想にふけながら説明をし続けた。
「これは楽園とも言えよう」
ガラガラと電話が鳴り、デュシャンは受話器を手に取った。
「オレ、成功した」
「そう、何がかね」
「新、自分破壊機」
「何を言っている、騒々しい」
とデュシャンは吹いてしまった。
「帰る」
とマサルはガチャンと大きな音で電話を切った。
何だ、デュシャンはソファーに腰掛け、母の写真を眺めた、んー、魅惑な母の姿を父は誰よりも愛していた。
“それは一匹の犬だ”
「やあ、マサル、何を考えついたのかね」
「見たことのない王子と聞いたことのある王女だよ」
「そうそう、デュシャン、まともにドラッグ依存、ナチュラルなハイだって不可能はないはずだと」
「心の痛み止にすぎん」
「だよね、これ」
とマサルが2つの大小の瓶を取り出した。
「どっち飲みます?」
「やあ、小さい方かな」
「キャットハイという薬、オレもお気に入り」
「猫になれるだけでなく猫並みに自由な気分になれる薬だ」
デュシャンはビンの薬を飲み干すと、猫の姿に変わった。
「ペルシャンか、渋いね」
「本当か」
デュシャンは猫のまま自由気ままにゴロゴロし始めた。デュシャンは家を出ると若い女二人が庭先で揉めていた。
んんん?とデュシャン首を傾げると白猫のメスが近寄ってきた。
「私ね、あの二人のお姉さんが拾ってくれたんだけど、妹が猫嫌いなのよ」
「引っ越して来たおとなりさん?まあ、良かったら僕の家へ来ません?」
「私は誰だと思う?」
「マリナか?」
「当たり、よくわかったね」
「勘だよ」
「昔、猫を飼っていたの?」
「そうだけど…」
「やあ、マリナとデュシャン」
とソファーに腰かけるマサルが居た。
「おう、帰ってきた」
「デュシャン、精神的破壊能力があるのは誰だ?」
「さて、誰だ?」
「隣に引っ越してきた姉だ」
「え?」
「それはどうゆうことだね」
「ギャー‼」
「ナゥリー!どうしたの?」
「お姉さんのバカ!」
「相当やばい破壊能力」
とマサルはニタッとした。
「何のためだ?」
「アートは破壊ではなくて?デュシャン」
「猫になれば安全だ」
「そういえば、大きいビンには何が入っていたんだ?」
「姉のようになるのさ」
「やっぱりな」
「俺はここに住むからよろしく」
「もう、勝手だな!」
「私も居るわ」
妹がデュシャンの家の前に来た、クククククッと笑いながら窓を覗いた。
「姉の好きな愛しの猫ちゃん、私をいじめるがいい」
と笑いながら歌った。
妹は石を窓に投げつけたがヒビが入っただけで割れなかった。
姉妹の親がマサルへ謝りに来たがマサルは、「金は不要だ」と言うだけで家のドアを閉めた。
「何故、割れなかったのかね」
「強化シートを貼っておいた」
「んー、未来は凄いな」
「親も今後、姉によって精神が破壊するだろう、その薬は1回服用にて1週間相手に左右される」
「ヤバい薬ね」
とマリナは体を箱形にし、うとうとし始めた。
「で、どうすれば人間に戻る?」
「専用のミルクをどうぞ」
とマサルが皿にミルクを注ぎ、デュシャンに与えた。人間に戻ったデュシャンはマサルに問うた。
「何故、人のブラックゾーンに入り込むんだね?」
「何故って、時空をおもちゃにしてるだけさ」
「最低ですごく力のある言葉ね」
とマリナが笑った。
「マウンテンビューだけに山が望めるってこと」
デュシャンはハッと目を覚ますと隣に例の妹が座っていた。
「デュシャンおじちゃん、おはよう」
ーマウンテンビューだけに言わせれば、表はあなたの妄想はひねくれた妄想だ、裏はあなたを壮大な世界に連れてってあげる、ー
デュシャンはまた目を閉じた。
妹は「おやすみ、デュシャン」と笑顔で頭をさすった。
ーあなたが大好きな壮大な世界に連れてってあげる、ー
「デュシャン起きて!」と人間のマリナが叩き起こした。
「どうした、いたた」
「姉が自殺を図ろうとしてるの」
「え、さっき妹が」
「ピストルを離さないか!」
「お願い、やめて」
「私は妹狂わせだ!」
庭先で騒ぎになっていた。
「こりゃあ、ミステリーだ、姉は薬を飲んだからと言って自殺を図ろうとしているんだ、妹は暴れるし」
「ドラッグか?たしか、デュシャンが…、マサルじゃないか?」
「ああ、マサルだ、まちがいない、自爆薬を飲んだ研究員もいたようだ」
「本当か?」
「未来の人だ、逮捕もできん」
「自爆薬ってなんだ?マサル」
「へ?ああ、バカな研究員が飲んだんだ」
「それで?」
「僕は死んだそいつを量子的に復元した」
「そうか、分からないが僕はうとうとしたままか?」
「素直に妄想したら良いのに、疲れたんだよ」
「じゃあ、気球の旅にするかな」
「おやすみなさい」




