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スポンサーズ! 〜出演するだけで5千万円もらえるリアリティ番組が全然テ◯スハウスじゃなかった件〜  作者: キグルミ100パーセント
二日目その二 ~血は水より濃いかもしれないけどデルモンテのトマトジュースより薄い~
26/41

25:あざといマザー



「この辺りのはずなんだけど……」


 タブレットの方位磁石アプリを頼りに目的地を突き止めると、密島たちはそこからほぼ正反対の方角にいた。密島一人であればもう少し早く移動することもできたが、情報を与えられたのは成見だ。置いていくわけにもいかず、目的地の周辺に着いた頃にはエースの声から一時間分ほど経っていた。


 落ち葉の多い、薄暗い藪の中を歩いていると、ふいに誰かの視線を感じた。かがんで重心を低くしながら、用心深く辺りを伺う。すると、藪の中から人が転がり出てきた。


「パンピーちゃん!?」


 頭にたくさんの枯れ葉や鳥の羽をつけたパンピーは「パンピーでいいっすよー」と無邪気に成見に向かって笑った。


「比留間さん見なかった?」


 するとパンピーはヘラヘラと頭をかき、

「あー、比留間さんなら、逃げられちゃいました。あともう少しだったのにー」

 と言って、目が隠れてしまいそうなほど、大きな笑みを顔に浮かべた。それは賢い悪ガキがする笑い方によく似ていた。仮面のエースという男とはまた別種類の気味の悪い笑い方だと密島は思った。


「ところでお二人は、一緒にいるってことは協力関係なんすか?」


 笑みを浮かべたまま、パンピーは密島を見た。


「別に。このオバサンが勝手について来ただけ」

「勝手にって何よ」

「ちがうんですか」

「ちがうこともないけど」


 そんな密島たちのやり取りを見ていたパンピーはケラケラと声を出して笑った。


「まあいいっす、どうせ今日の放送を見ればわかることだし」


 パンピーはそう言ってふっと小さく息をつくと、長い人差し指を唇にあてた。


「よかったら、自分とチームになりませんか? このゲームって、個人で戦うよりもチームを作った方が絶対いいと思うんすよ」

「あんたのチームに入る?」


 密島がパンピーを見ると、パンピーも真っすぐ見つめ返してきた。赤いフレームのガラスの向こうで、ちっとも笑っていない目が光る。


「断る」


 そう言うと、密島は踵を返した。


「取り分が減るのは嫌だ」

「なんか嘘っぽいなぁ」


 そのまま無視して歩いていると、「せっかく会ったのに、戦いもせずに行っちゃうんすかぁ?」とパンピーが密島に向かって叫んだ。


「わたしじゃ勝てないと言ったのはそっちだろう!」

「信用する人、間違えると大変なことになるっすよー!」




 その後、密島は成見と比留間を探したが、結局その姿を見つけることはできなかった。通知にも、比留間からパンピーに一千万が譲渡されたという情報を最後に、比留間の行動を掴む手がかりは現れなかった。


「今日はもう駄目だ」


 森の一角に植えられたキンカンの実をもいで口に放り込みながら、密島はつぶやいた。


「もうすぐ日が暮れる。どうやら今日は一足遅い日みたいだな」


 池の東のテントに戻るという成見とはその場で別れた。

 別れ際、「ねえ」と成見に声をかけられた。


「ありがとうね、お金のこと。昼間はあんなこと言ったけど、やっぱり一刻も早く、息子に会いたい。お母さんって呼ぶあの子の声が聞きたい」

「じゃあ、息子さんのためにもあと八日間、頑張れ」

「ええ、もちろん」


 一日中歩き続け、足はパンパンに腫れていた。一刻も早く横になりたいと密島は近くのテントを探した。早く一日のゲームの終わりを告げる電子音が聴きたい。

 近くの木の下から回収したその日の夕食を胃袋に収め、密島はすぐに眠ってしまった。備え付きの毛布にくるまる暇もなく、その日は夢も見ずに、ひたすらどっぷりと熟睡の海に浸かった。


 細い月が南の空に高く浮かぶ深夜、耳にはめたままだったイヤホンから聞こえる、差し迫るようなDTの声で目が覚めた。床に倒れこんだ姿勢のまま寝ていたせいで、膝の関節が痛い。


〈みっちゃん! すぐに今夜の配信を見てください!〉

「え……?」

〈早く!〉


 わけもわからず、言われた通りポケットから寝ぼけまなこで端末をとりだす。放送中の番組をつけると、番組はすでに終了五分前だった。黒い画面に白いフォントで何やら文字が書かれている。まぶたをこすりながら、画面に焦点を合わせると、文章を読む前にそれと同じナレーションが聞こえた。


『たった今、キングより、今夜追放されるプレイヤーの名前が発表されました。成見幸です』

「え――?」




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