22:あざといマザー
それ《・・》を探すのにはかなり手間取った。午前中いっぱいを使ってしまい、ようやく見つけ出したときには太陽は真上に昇っていた。
動画で見たよりも実物は一回りほど小さく、大人二人がかがんでやっと入れる程度の大きさだ。見た目はSF映画に出てくる丸い小型潜水艦のようなデザインで、側面に丸い明かり窓がついている。外面には迷彩柄の塗装が施され、それは森の中に違和感なくなじんでいた。
さあ、どう攻略しようかと考えていると、二つあるうちのハッチの一つが開いていることに気づいた。
どうやら一足遅かったらしい。密島は思わず、チッと舌を鳴らした。辺りを見回すと、近くの木の下に暇を持て余すようにして体育座りをしている成見幸と目が合った。
「さっき比留間さんが来てね、負けちゃったの」
密島に気づいた成見は、そう言って肩をすくめた。すぐにタブレットを見るが、まだ比留間崇成と成見幸が戦ってカードを交換したという通知は来ていなかった。どうやら、カードはついさっき交換されたばかりらしい。
「あなたもわたしを狙ってここへ?」
「そうです。でも意外と探すのに手間取ってしまって、先を越されました」
「そうだよねぇ。まさか背景が合成だなんて思いもしないよねぇ。わたしも聞いたとき、びっくりしちゃったもん。そんなことできるんだぁって」
すごいねぇ、と成見が上を見上げると、木の上から、「あざーす」と配信者たかぽんこと高屋聡が顔を出した。
密島たちがいるのは高屋のシェルターが置かれた場所だった。背の高い針葉樹が生えた、森の入り口にほど近いエリアだ。
高屋の動画に映っていたのはケヤキやクヌギなどの広葉樹だった。だがそれは、動画を見たほかのプレイヤーに居場所を悟られないためのフェイクだったらしい。「俺、一応映像系の専門出てるんで」と高屋は得意げに鼻をこすった。
「でもどうしてわたしがここにいるってわかったの?」
「なんとなく、自分だったらそうするかなと」
隠れ場所として木の上はたしかに地上にいるより安全だが、そこから移動できないという大きなデメリットがある。
「思い切りましたね。ほかのプレイヤーに力を借りようなんて」
「そうよぉ、でも高屋くんに匿ってもらったのに、あっという間にカードをとられちゃった」
「じゃあやっぱり、あなたが八重咲寧々と交換したカードはキングだったんですね?」
そう、と成見は残念そうな顔をして笑った。
「そういうわけだから、早く比留間さんを探した方がいいよ」
「そうですね」
密島は頷くと――躊躇なく成見に銃を向けた。




