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16:最初の相手

 上島は真っ赤な顔をして銃を連射した。そんなむやみに撃つと弾切れになると密島が呆れていると、本人も途中で気づいたのか、「クソッ」と舌打ちをして撃つのをやめた。だがこれで、上島は残りあと三発だ。


「ちょっと落ち着けって! だいたいこっちのカードがあんたより下だったら、どうするんだ? その場合、たとえ勝負に勝っても一千万とられることになるんだぞ」

「その確率はほぼない」


 上島はそう言うと、密島の腰を狙って撃った。なんとか避け、上島の弾数は残り二発だ。


 密島は銃を構えると、木の陰から少し顔を出した。上島との距離は二メートルだ。上空の鳩が撃てるくらいだから、恐らく弾の飛距離は関係ない。だが、距離を詰められ、押し倒されでもしたら面倒だ。単純な腕力の差では上島に勝てそうにないことはわかりきっている。


(だけど向こうはもう二発しかない。外させればこっちの勝ちだ)


 密島は上島のいる場所の北東方向に勢いよく駆けだした。木から木へと素早く移動し、まるで上島を中心にした円を描くように走る。


「無駄撃ちさせようったって、そうはいかねぇぞ!」

 木の陰から上島が叫んだ。


 手の内がバレているなら、しかたない。


 だったら、自分から飛び込むまでだ。


 地面を強く蹴り、垂直に飛び上がると、上島の背後にある木を踏み切った方と逆の足で蹴り上げた。そして銃を持つ上島の腕を抱え込むようにしてその銃口を自分の胸に押しあて、そのまま地面に倒れこむ。

「パンッ」と一発の銃声が響き、視界がピンクに染まった。


「あんたの負けだ、上島さん」





 〇



 タブレットに『カードが交換されました』というメッセージが現れ、自分のカードを確認した密島たちはお互いに絶句した。


 密島のタブレットにはスペードの3のトランプカードが表示されていた。上島の方にはスペードの2のカードの画像が映っているはずだ。


「……最悪だ。よりにもよって、初めから一番下のやつに当たっちまうなんて2なんて!」

「それはこっちの台詞だ。こっちだって2が3に上がったくらいじゃ嬉しくもなんともない」


 喧嘩する猫のようにシャーシャーと声を荒げて言い争っていると、また別の通知が表示された。


『上島竜二 罰ゲーム決定。密島ユウキに一千万贈与。上島竜二は十五分間、その場で待機してください』


「まあいいか。一千万、ありがとうございました。それじゃ、待機頑張って」

「み、密島ユウキ、覚えてろよ!」


 地団駄を踏む上島にあっかんべーをし、密島は踵を返した。







【密島ユウキ ただ今の所持金は六千万/スペードの3のカードを所持】






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