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第一話 目覚め

お久しぶりです。

研究が忙しすぎて、書く時間が取れませんでした。

デスゲーム系統の作品です。

よろしくお願いします。

 すでに日は暮れ、辺りは暗闇に包まれている。街灯はついているが、間隔が広くて心もとない。革靴の音がカツカツ響き渡る音だけが、自分の存在を知らせているようだ。


 鬼頭サトルはスーパーで買った総菜をゆらしなが、次はどういう変なマクロを組もうか考えた。遊び関連のものがいい。しかも、絶対に使わない。サトル自身もなぜこんなマクロを作ったのかわからないものが幾つもある。役に立たないものを作るのが好きなのか。そうかもしれない。


 自分のマンションにつくとオートロックのドアが立ちはだかった。いつもようにマクロを起動した。


「マクロ――開けゴマ……」


 誰にも聞かれないようにマクロを起動した。これもサトルの自作マクロだ。別にカードキーを使えばいいのに、突然思いついてオートロックを解除するだけのマクロを作った。起動するだけでいいから、楽は楽だが、こ恥ずかしい。


 サトルのマクロに反応して、透明の自動ドアが横にスライドした。一階の自分の部屋に向かい、同じく「開けゴマ」と唱える。


 こちらも自動でカギが開いた。ドア自体は開かないので、手動でドアを引いて、中に入った。


 電気をつけ、靴を脱ぐ。玄関は台所と併設されている。そのまま総菜をレンジに突っ込み、温めた。予約していたご飯もたけているようで、サトルは手早く準備を済ませた。


 レンジがチンとなり、温め終わったことを告げた。総菜はコロッケなので、ソースだけぶっかけてリビングとも言えない部屋に入った。机の上に白ご飯とコロッケだけ。一応水も用意した。すぐに口の中に入れると、少し熱かった。


「うん……まあ、ふつう」


 特別おいしいわけではない。自分で作る手間を省いただけだ。どうにかしないといけないが、20台という若さにかまけて、食事内容は適当である。


 3分もしないうちに食べ終わり、流しに食器を突っ込む。水だけ張っておいて、洗い物を楽にすることだけは忘れない。


 サトルは流れるようにデスクトップパソコンの前に座り、起動。数秒で軌道は完了し、エディタを開いた。作りかけのマクロを書き始めた。


 すぐにキーボードをたたく音だけが室内を満たした。ときおりサトルのうめき声が聞こえる。


「ここどうしたらいいんだ……? なんかおかしいな……」


 どうにもエラーが出てしまい、サトルは苦しむ。このマクロはすでに半年以上制作していて、あと少しで完成すると思うのだが、やはりエラーが出てしまう。


「作ったところで使いどころないけど」


 それでも自己満足はできる。そうやって使えない・使いどころのないマクロをいくつもある。


 市販のマクロを買えば、日常生活で困ることはない。掃除も洗濯も、食事ですらマクロ一つで終わる。洗い物もあとでマクロを使うだけだ。


 勉強の一環というのもあるが、根本的に無駄なことが好きなのだろう。誰にも評価されない作業は、とても楽だ。失敗しても文句は言われない。褒められもしないが。


 ぶつぶつ言いながら作業を続行する。


 ところどころ詰まりながらも、サトルの打鍵は止まらない。すでに何万行書いているのか。途方もないだろう。これだけ書けば、エラーだって出る。むしろ出ないほうがおかしい。エラーを一つずつつぶし、行を書き足す。


 ひたすらに続ける。

 続ける。

 つづける。


 づづけ――


 つづ――――――――――











 ハッとした。

 眠っていた。背中が痛い。しまった。床で寝てしまった。明るい。もう朝か。勿体ないことをした。


 ……おかしい、ような? 天井が高い。いつもの天井じゃない。白くない。茶色だ。おおきな照明が釣り下がっている。いくつもある。広い。サトルの部屋なんて目じゃない。


 ねぼけた? 夢……?


「……どういう」


 体を起き上がらせると、全容が見えた。


「体育館……? なんで?」


 それは十年近く前に見慣れていた体育館だ。校長が長話するであろう舞台上。備え付けられたバスケットのゴール。白や青などのテープが張り巡らされた木の床。天井は高く、採光窓も備え付けられている。


「なんで……? 意味わからん。部屋にいたよな?」


 周りをきょろきょろ見ても変わることはない。体育館がある。それだけだ。いや、ちがう。誰かいる。二人。サトルと同じように横になっている。女性だ。二人とも寝間着姿。ただ、一人は妙齢の女性で、白い寝間着。体の線がかなり細い。不健康な印象すら受ける細さだ。もう一人はそれに比べるとかなり幼い。10代だ。髪は短めに切りそろえられている。大きくもなく、小さくもない。こちらも手足は細いが、よく鍛えられている印象を受ける。運動が得意そうだ。こちらは年頃か、ピンク系統の寝間着を着ている。


 見覚えは、ない。知らない二人だ。サトルは混乱した。なんで。こんなところに。つーか、体育館に寝間着でいるのってどういうこと。家で寝たほうがいいのでは。


 混乱してあわあわしていると、二人とも同時にもぞもぞし始めた。数秒もしないうちにあくびの音がして、少女のほうが起き上がった。目をこすり、きょろきょろ顔を巡らせている。すると、サトルを見つけて、ビクッと体を強張らせた。離れたところにいる女性が起き上がったところで「あ、お母さん……!」と言って、そっちにすり寄った。


 母娘のようだ。サトルは動かない。動けない。


 母親と思しき人物もサトルに気づき、周りの異変に首をかしげる。ただし、警戒の色が強い。サトルから目を外しても、視界からは排除していない。


 沈黙が続いた。母親は娘をサトルから庇うようにしている。非常に気まずい。

 サトルがまったくしゃべらず、じっと見ているのがきっと悪い。動かないのも悪い。というか、なんだ、これ。夢か。夢だろ。起きたら体育館って。今までの人生で一回もないぞ。突拍子が無いこの感じ。しかし、現実感はすごい。


 つまり、明晰夢……?


 初めてだ。これが。すごい。何でもできるのだろうか。明晰夢の中は夢を見ている人の思うがままという話を聞いたことがある。なぜ明晰夢であの母娘が出現するのかはわからない。見たことないし。見たことない人が夢に出るなんて珍しくもない。普通だ。ありきたりだ。


「あの――」


 サトルが話しかけようとしたとき、体育館のスピーカーからザザザッという雑音が流れた。

 三人とも一斉に注目した。


「おはようございます! 今日はいい天気です! 張り切っていきましょう!」


 人生最悪の日々が始まった。


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