表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

17 トーナメント

「これより、キルティ共和国とグリムガンド公国の闘技戦争の開始を宣言します」

 楕円形のフィールドから少し高いところにある台から、一人の黒ローブ姿の人間が現れた。

 中性的な声をしている。ローブから顔は出ているが、ニアには遠くてよく見えなかった。


「さて。貴様は誰だ? と思っている方々もいらっしゃるでしょう」

「私はこの闘技場の支配人オーナー、兼管理人(マネージャー)をしている者です。以後お見知りおきを」

「さて、それでは本題に入りましょう」

「これからルール説明をさせていただきます」


 黒衣の支配人は語りだした。


 今回の闘技戦争のルールは、


・7つのコロシアム内で全試合を行う。日程は15日間。日本時間で言えば明日、8月14日から28日まで行われる。


・コロシアムごとにトーナメントを組む。コロシアムごとのトーナメントで勝ちあがってきた冒険者が決勝トーナメントへと進み、そこで優勝者を決める。


・優勝者が所属している国が、闘技戦争の勝利となる。優勝者には大会の収益の一部が賞金として授与される。


・センターコロシアムは他のコロシアムに比べ出場者が多く、それによって一人当たりの試合数も多い。代わりに決勝トーナメントで一つシードが与えられる。


・全ての冒険者がレベル100に統一される。装備、スキルは装着、所持しているものが据え置きとなる。


・試合は先に相手のHPを0にした者の勝利となる。なお、試合中にHPが0になったとしても闘技場のシステムにより死なず、魔法により保護される。


・引き分け(同時デス)となった場合は両者共に、トーナメント敗退となる。それが決勝トーナメントの決勝であった場合は、二者同時優勝となる。


・戦闘中の装備の付け替え、アイテムの取り出しは自由。


・戦闘中に降参を宣言すれば、宣言した者の敗北となる。


・不正が発生した場合は、管理人が介入する。


 ということだった。


 何よりも驚いたのがレベル100統一だ。

 この手のMMORPGでは、あまりレベルの統一なんて話はあまり聞かない。

 恐らく、出来る限りの公平を期すためなのだろう。

 武器とスキルの差はもちろん大きいが、職業ジョブの相性次第でどうにかなるかもしれないのだ。


 そして逆に言えば、

「職業と、戦略がキーになるってわけか……」

 ニアはそう呟いた。


◇◆◇◆


 黒衣の支配人からの説明が終わった後、楕円形のフィールドの両サイドにある扉が開いた。

 多くの冒険者はしばらく支配人からの話を反芻しているのか、そこに留まっていたが、やがてぞろぞろと扉から出て行く。


 シンは少し複雑そうな表情をしていた。そしてそれを崩さないまま、

「で、どうするよ」

「どうするも何も、参加するしかないんじゃないのかしら」

 姫はすぐさま言い返す。


「いや、そりゃ分かってんだけどよ。オレ、こういうの経験ないから、今回のルールがどうとかも言えねえし……」

「そりゃ、僕らみんながそうでしょ」

「んまあ、そだな……とりあえず、トーナメント表も見たいし、街に向かうか」

 シンのその一言で、ニア達はユグドラシルの街へと向かった。



 街は一言で言えば活気があった。

 商店が並んだ道を通ると、四方八方から呼び込みが来た。


 中には直接声をかけてくる、キャッチセールスのような者もいた。

 ニアが苦笑いで断ろうとする間際。帽子のつばの下から見えるギロついた目で姫が睨み、彼らは逃げるように去っていった。

 今なら姫に氷の女王というあだ名も付けられそうだった。


 やがてニア達が歩く先に、巨大なゲルのような、半球型の建物、つまりはドームが現れた。

 大きさは他の建物に追従を許さず、コロシアムと比べても遜色ないほどだった。


 先程までセンターコロシアムに居た、大量の冒険者達がその中へと入っていく。

 それだけの人数が入っても問題ない程度のキャパシティがあるように見えた。


 支配人は説明の際、その建物のことを闘技場管理局と称していた。

 管理局にはいくつもの扉が存在していた。ニア達がその内の一つの扉から入ろうとした時、声をかけられた。


「おーい、ニア。待ってー!」

 やって来たのは、白い魔道士帽に白ローブ、加えて銀髪の美少女だ。

 発する声まで少し可愛らしくしていて、ニアは聞くだけで反吐が出そうだった。

 遠くから見ても、それがサクノだと分かる。


「はぁはぁ……」

 サクノはニアの近くに辿り着いて、わざとらしく膝に手を付いた。

 ちなみに、このゲームには疲労の概念がない。

 完全なるサクノの演技に、ニアとシン、そして姫が向ける目は白かった。


「それやめろ」

「死ね」

「私の目の前に姿を現さないでくれる?」


「はは……もはやそんな精神攻撃は効かんのだよ」

 なぜか笑っているサクノを無視して、三人は中へと入っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ