神社のトイレ事情
夏の日射しがまだきつい夕方、階段を登る1人の男の姿があった。山の頂に神社があり、そこへと続く階段をただひたすらと登っている。
「ふぅっ、それにしてもかなり疲れるな。これじゃ、下から眺めるだけでも良かったよ…。」
後悔はしたものの、一旦登ってしまった手前登り切ることを選択した男の名は、神崎蓮。25歳独身。普通の会社員である。
既にスーツの上着は脱ぎ、シャツは汗だくになりながらも800段もある階段を登りきると、そこにはこじんまりとした神社があった。
ちょうど山のてっぺんに神社がちょこんと乗っかっている感じで、ここから街を一望出来るスポットになっていた。
人がいても良さそうなのに、たまたま今日だけは図ったかのように誰もおらずシンと静まりかえっていた。
「今日の仕事が取れますように!」
さきほど客先でプレゼンを終えたばかりの蓮は、客先からの帰り道、近くにあるこの神社へたまたま通りかかり験担ぎに来たのだった。
お賽銭を入れ、パンパンッと手をたたき神さまへのお祈りを済ませた蓮は、元来た階段へ戻ろうとしたのだが、ふと視界の端にトイレが見えた。
「あれ、あんなところにトイレあったっけ??ま、いいや。ちょうど行きたかったんだ。」
登った時にはトイレが目に入らなかったことを不思議に思いつつも、ちょうど用を足したかった蓮は、トイレに入っていった。
スッキリとした気持ちで外へ出ると、
そこに神社は無かった。