闇のち寝起き
今俺は闇の中にいる。闇以外には何もない。
「・・ら・・・ん・・」
そんな闇の中、誰かの声がする。この声は…
「そ・・くん・・・そらくん、空君!」
……紫野?
声の主が紫野だと気付くと同時に俺の体が揺れていることにも気が付いた。
「おい、おきろ空」
「ん、んん?」
そして俺はゆっくりと閉じていたまぶたをあける。さっきまでの闇は何かの悪夢の始まりかと思ったが何のことはない。
(……ただ、俺が目を閉じていただけだったのか)
いや、ていうか「悪夢の始まりか」って思ってる時点で思い出せよ俺!俺が授業をサボって寝ていたってことを!
「やっと起きた。そ……青野君」
「よし、そんじゃあ帰るぞ」
「ん?ああ、帰る帰る……ってなにっ!!」
寝ぼけていた俺に総司の「帰るぞ」という言葉がクリーンヒット!
「ちょっと待て!帰るってことは何か?もう放課後か?」
「ああ、そうだぞ」
そういいながら教室の窓を指差す総司。そこから見る外は夕日が。
「……まじかよ、そんな。俺今まで授業を寝過ごしたことなんて……毎日か」
確かに、毎日寝過ごしてたわ。
「いやでも、今日は昼飯食べた後二時間ぶっとおしで寝てたぞ」
わぁい、新記録。
「でも、青野君。あんなに起こしたのに起きないなんて」
「ああ悪い、最近寝不足でな。まあ、迷惑かけたな紫野」
そういうと周りから「明美ちゃんに起こしてもらえるなんて……」「羨ましすぎる……」「爆発しろコノヤローッ!」などという男子からの罵声が響き渡る。ていうかうるさい。ものすごく。
「め、迷惑だなんてそんな……」
紫野はそんなことを言いながら少しほほを赤らめる。熱でもあるのか。
「おい、俺も起こしたんだが」
「あっそう」
「軽いなっ!」
そしてこんなやり取りをしていると女子共がうるさい。「何であんなやつに総司君が」「何いってるのよ。ぼっちへの優しさよ」「ほっといたら一人になる奴がほっとけないひとなのよ、きっと」などとほざいている。うるさいよ!余計なお世話だよ!
「お前の性格と同じだよ」
外野の男女を無視して話を続ける俺達。
「お前な「という冗談だ」ですよね~」
「ふふっ」
俺達のふざけた会話を聞いて軽く笑う紫野。いつも通りの光景だ。あと外野うるさい。
(そういえば、さっき紫野が俺をいつもの様に「青野君」とではなく「空君」と呼んでいなかったか?空耳か?空だけに……空しい)
まあ、その本人が目の前にいるのだから聞けばいいのだが、ここで聞くと外野共に俺と紫野がなにかしら特別な関係だと誤解されてしまう可能性がある。それは俺のためにも紫野のためにもならない。
なのでここでは聞かない。俺は友達にあまり迷惑をかけたくない性分だからな。(さっき爆睡して迷惑かけた奴がなにいってんだろ)
「まあそんじゃあ今度こそ帰るか」
総司はそういいながらかばんを手に取る。
「うん、そうだね」
紫野も同意する。
「ああ、そうだな」
そして俺も机の横にかけてあるかばんを手に取り席を立った。
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