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「こんにちは」

「こんにちは」

ベンチでお弁当を食べて以来、彼と会うと挨拶をするようになった私達。

偶然知り合った先輩と後輩という気を使わない関係が1カ月程続いている。

校内で会うのだって、週に一度あるかないか。

会ったからっていつも食事をしたりする訳でもない。

ほんの少しだけ会話をしてまたねって別れる生活だ。



「ねぇ。ともこ?」

「何?」

「あの年下君とはどうなの?」

ある日のランチタイム。私はゼミの同期と一緒に学生食堂で食べていた。

「どうって…別に。そういえば…私彼の名前を知らないや」

「あのね…本当にそういった基本的なところが欠如しているよね」

「ごめん…。今度聞いてみる。いつも会う訳じゃないもの」

「ってことは、携帯の番号も知らない?」

「もちろん」

「本当に校内で会うだけ?」

「うん。そうだって、何回言えばいいの?」

友人たちは私が答えるたびにガッカリとしている。



「何で…ガッカリしている訳?」

「年下君からしたら…恋愛フラグ立ててるかもしれないのに、あんたって人は?」

「これだから…恋愛ニートって言われるの」

「ニートでいいよ。別に」

恋愛をしたくない訳ではない。

けれども、たまたま知り合った人全てを恋愛対象に見てしまうのはどうだろう?

「とりあえず、知り合って一ヶ月でしょ?そろそろ生物学科君は卒業しなさい」

「それは…納得出来るわね。彼に対しては失礼ね。今度あったら名前を聞こう」

私は友人に説得される形で今度あったら名前を聞こうと決めたのだった。



友人とのランチから数日たったある日の放課後。

正門の近くでばったり彼と会った。

「今帰りですか?」

「えぇ。ねぇ…名前を聞いてもいい?」

「そういえば名前を聞いてませんでしたね。俺達は…。いいですよ。俺はともって言います」

「あら…偶然ね。私はともこって言います」

「本当だ。凄い偶然ですね。途中まで一緒に帰ってもいいですか?」

「構わないけど。それでは行きましょう」

私達は初めて一緒に歩きはじめる。

彼の名前を知ったことで私の気分は良かったのかもしれない。

「機嫌がいいみたいですね」

「なんか恥ずかしいね。互いの名前を知っただけなのにね」

「俺も嬉しいからお互い様だと思いますよ」

彼ははにかんでるようにも見えた。

私が嬉しいと思う所が彼も嬉しいと言う事がまた更に嬉しくさせる事を彼は知っているのだろうか?



「すみません。途中のスーパーに寄りたいのですが…いいですか?」

「いいわよ。私も買い物しないといけないんだもの」

私達は互いに必要なものを買っていく。

「夕飯はどうするつもりなの?」

「カップラーメンとかですよ。男の一人暮らしですから」

「だめよ。そんなのは。私が夕飯を多めに作るから…出来たら取りに来る?」

「いいんですか?」

「流石に…君を家に上げるのはちょっとね」

「俺もそう思いますよ」

「だったら…携帯の番号を教えて。出来たら連絡するから」

「本当にいいんですか?」

「私はつい、作り過ぎるから…私としては助かるから…平気よ。今赤外線でもらったのが番号よね。1時間したら出来るから待っててね」

私達は私のマンションの前で再び会う約束をして別れた。


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