出会い
二人の出会いです。同級生じゃない二人の出会いは?
「ともこさん、ともこさん?」
「どうしたの?ぼうっとしてて…」
彼は不安そうに私を見ている。
「大丈夫よ。私達が出会った時を思い出しただけよ」
「えっと…それって…」
「うん、図書館で会った時のね」
私はそう言うと、彼を見る。
彼は少しだけ赤くなって俯いた。
「とも君…どうしたの?」
「だって…あの頃の俺ってさ…嫌な奴だったし」
「仕方ないんじゃない?あの頃は。あの頃のとも君は懐かしいかな」
私は微笑んで答える。
私達は梅雨の合間の貴重な晴れを日陰のベンチで楽しんでいる。
「すみません、レポートで確認したい本があるんですが」
「今はこちらにないので、各学部の図書室に確認します。予約しますか?」
「お願いします。いつも通り書けばいいんですよね」
私はカウンターでレポートで確認したい本があって探している。
滅多に来ない大学の総合図書館。広い分、蔵書が多くて探すのに困難する。
「相変わらず、読書生活ですか?」
「そうですね。本の多さも志望校の選択の一つですよ。実家が隣町なんですよ」
「自宅から通学ですか?」
「いいえ。祖母が亡くなって喪が明けてから、兄夫婦が実家で同居を始めたんです」
「あらあら、おめでたいけど…大変ね」
「最初は祖母の部屋のあった離れに移ったんですが、お風呂が共用で使うのにも気を使うじゃないですか?大学に入るのを契機に家を出たんです」
「親御さんは、反対しなかったの?」
「どうなんでしょう?元々私が独立心が強いのは知ってましたから。自活するのが早まった程度ですね」
「今、ご実家は?」
「離れを物置にして、母屋は今建て替え中ですよ。完全二世帯住宅にするそうです。離れの荷物もいずれは引き揚げる予定ですし」
「寂しくない?」
「いいえ。人に気兼ねしないで趣味の時間が取れるので快適ですよ。実家にいた時は、読書で自宅にいるのに、兄嫁に引きこもりって言われましたから」
「まあ」
「他人と暮らすって大変ですね。一人がいいです。じゃなければ、価値観が分かってくれる人がいてくれればいいです」
「そうなっちゃうわね。大学に入って実家に帰った?」
「近いから、日帰りですよ。父も母も私の家に来ますから」
「御両親とは上手く?」
「そこは大丈夫です。明日は講義がないので、本の修復のお手伝いしたいんですけど」
「いいのかしら?」
「私は楽しいからさせてもらいたいんですけど」
「お願いしようかしら?」
「ありがとうございます」
私はカウンターから移動して、書きかけのレポートを見直す。参考文献を目にしてから残りを作成すればいいと思ってた。
「…だからよぉ」
「うっせぇな」
総合図書館は、全学部が利用するから、普段からかなりざわついているけれども、新学期が始まって2週間のこの時期はいつもよりもさらに騒がしい。
今日はこのまま、資格試験の勉強をしようと思ったけれども、こんなに五月蠅いんじゃ集中できないかなって思ったりもした。
「なあ、図書館はもっと静かにするものじゃないか?」
「お前…いい子ぶるなよ。今夜の合コン絶対に来いよ」
「あぁ、でもすぐに帰るからな。課題終わらせないのは俺が嫌だから」
へぇ、少しは気遣う気がある子もいるんだ。だったら…どうにかしてくれないかな。
私の側で立ち止まっている男の子たちをチラリと見る。
背の低い私にとっては、ガリバーの様に大きな男の人に私はひるんでしまう。
「あっ…あの…」
私は恐る恐る声をかけた。静かにして貰えればいいなと思っていた。
「あっ、五月蠅かったですよね。ほらっ、お前ら賑やかしで来る場じゃないんだよ。帰るぞ」
私の言いたい事をくんでくれた男の子が一緒に来ていた連れをぐいぐいと押していく。
「五月蠅いのは俺だけじゃないだろ」
「本を借りに来たわけじゃないだろ?」
「はいはい、分かったよ」
渋々と彼らは移動する。私はホッした。
「ごめんなさい。お邪魔しました」
「こちらこそ、ごめんなさい」
「背後に大男は怖かったですね。本当にごめんなさいね」
先に行く友達を見ながら、その子は何気ない一言を言う。
確かに…背の高い男の子に囲まれたりするのは、恐怖を感じる事があるのをどうして気付いたんだろう?
「勉強頑張ってくださいね」
早口でそう言って、彼は友達の集団に吸い込まれていった。
良く、気配りができる人みたい。それが彼の第一印象だった。
ともこさんは背が低い設定になっています。
一方のともくんは、平均的は身長ですが、とも子さん目線では背が高い人です。
実家は近いのですが、家を出ている、設定をポロリと出ております。
いろいろあったと思いますが、本編には関係ないので実家はほとんど
触れることはないでしょう(きっと…)