クロリス-1
二話目まで読んで
「久保。すぐに新幹線を降りろ。」
「もうすぐ大宮だぞ。」
『ぴーー。怪獣警報。』
新幹線は緊急停止し、事態の深刻さを物語る。
しかし原因には心当たりがある。
「怪獣だ。」
「なるほどね。」
怪獣が来たのだ。
「今日から新体制だってのに、ついてないね。」
「"お前が中心"のな。」
「やめろよ。」
「じゃ、一旦切るぞ。」
「こちら怪獣庁、戦闘局。
まだ候補生が来てないんだが、」
「久保と連絡は取れました。
まだ大宮でした。」
「避難区域が遠過ぎるな。
新体制の予定だったが、今回は作戦部隊に指揮権を委ねる。
候補生の佐藤、田辺。助言は許可する。」
「了解。」
「まずは現在の状況を。」
「現在都内で、棘のつたを持つ植物が急激な成長を遂げながら、つたでビルや家々を飲み込んでいます。」
「偵察部隊はなんて。」
「名称、クロリス。予想被害範囲は、
半径500m。放射線は観測されず。
本怪獣の指揮を通常通り戦闘部に移行しました。」
「バラじゃないか」
「はい、白いバラのような花を咲かせています。」
「ようなって、これはバラそのものじゃないか、こんなの」
「内部にはplcが流れており、また植生もバラとは異なります。」
「plc……怪獣特有の循環液体か。」
「細かいねえ、」
「まあ、とにかく常識は通用しない。」
気を抜くなよ。」
「了解。」
「どうも、今日は休みと聞いていた作戦部隊、隊長の宮部だ。よろしく。」
「いつもの面々なのに挨拶しないでくださいよ。」
「クロリス…。今回は〜どうしようかな作戦。避難済んでるなら、火器いけるな。」
「火器による熱射作戦ですね。」
「火炎放射器、何分で行ける?」
「近くの消防局に設置の義務があるはず。」
「一番近いのは?」
「さいたま市消防局 大宮消防署です。」
「15分で行けます。」
「よし、行こう。」
「おいおい、ぜんぜん焼けないじゃないか。なんなんだ、あれは。」
「ツタが水分を多く含んでるんですかね。」
「それならもっと水分の蒸発が観測できるだろ。」
「たしかに。」
「じゃなんで燃えにくいんだ。」
「燃やした表面の細胞とか、解析に回せ。」
「一旦待機ですね。」
「久保。まだ大宮か。」
「いや、もう荒川沿い。」
「は?」
「怪獣による避難警報で、みんな車を乗り捨ててる。タクシーなんか使えないから、歩いた方が、早い。」
「いや、そうじゃなくて、
お前まさか生身でクロリスの方に向かってんのか。死ぬぞ。」
電波がうまく伝わらず、声も途切れ途切れになってしまう通信を聞くと、現場の荒れ具合がよく分かる。
「あはは、大丈じょ、わっ!」
「ほらコケた。」
「大丈夫。これくらい。塵とかそういうのは出てないし、毒物も感知できない。
そんなことよりクロリス退治優先。」
「チッ。現場映像送れ。」
「送る。」
「……。」
見えてきたのは白い…雪のようなものが斜めに降っているツタの上からの映像だった。
「いやぁ、荒川はツタに呑まれてるね。
映像どうだ。」
川は雪のようなもので覆われて、というか、ツタや道路、家々を覆ってそれはまるで銀世界だった。
「火炎効いてないな。」
業務の一部とはいえ、久保のことがより一層心配になる。
「そうだな。」
「なあ。これ、ツタに防火性能があんのか。」
スンスンと久保は匂いを嗅ぐ。しかしそこにはほんのり甘い匂いだけ。焦げ臭さとは真反対のものだった。
「う〜ん、違うな。」
「え、違うのか。」
「ああ。切ってみたけど、そもそも内部があったまってすらない。」
「じゃあなんで。」
「粉だ。」
「粉?」
「見えるか?、この白っぽいの。こいつが怪しい。燃やしたのにツタとはくっついてない。」
久保はそれを指で取ってみる。
「近づきすぎるな。」
「近づいてない。拾っただけ。」
「拾った?!」
「マスクはしてる。」
触って、指で挟んで押し付けると感触がよく分かる。それは粉というには少し粒が大きいもので、少しゴツい感触があった。
「それなんだ。」
「胞子、っぽいかな。」
「……解析回せるか?」
「端末で簡易的な成分分析くらいなら。」
「無理するな。」
「無理してない。おおやっぱり、炭素。」
「なんだって?」
「燃えない理由。これだ。」
「……。」
「ツタは燃えてる。でも燃え広がらない。外側で酸化は止まってる。」
「どういうことだ?」
「防火壁だよ。胞子が。」
「偵察局に解析させた。結果から言うぞ。
胞子で防火壁を築いていた。胞子は燃やすと表面が炭素になって燃えにくくなる。
お前の言う通りだ。久保。」
「やっぱりな。」
「あと、もう一個やばいことがわかった。」
「なに?」
「焼いたところのツタの成長が激しくなってる。」
「刺激したってことか。時間がない。」
「あ、俺もひとつ。ツタを一度切ってみたらしいんだけどな、トゲんとこ、見えるか。」
「ツタのか。見えるっていうか、真横だな。」
「トゲの下が根端分裂組織で出来てた。まあ、根っこの先っぽみたいに成長する部位ってことだな。」
「ということは、、、」
「そう。バラのトゲだと思っている部分、半径500m全てツタの先っぽ。切っても切ってもキリはない。
クロリスのテリトリーだ。」
「…まじかよ。」
「…まじだよ。」




