――十将夜叉、集う――
――夜は、すべてを奪う。
けれど同時に、何かを始める場所でもある。
これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、
人ならざるものの棲む森へと迷い込み、
“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。
名も知らぬ世界、霊鏡。
人と妖の境が曖昧なその森で、
少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。
これは――
運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。
「え、え~っと……どうして呼ばれたんでしょう?」
亜由は落ち着かない様子で周囲を見回す。
「……どうして私まで……」
ナチカも腕を組み、壁際に寄りかかっている。
源 梓は、いつもの穏やかな微笑みを浮かべた。
「ふふっ。新しい仲間が来たんだもの。十将夜叉に知らせたくて」
「十将夜叉……?」
「十将夜叉は10人の妖怪の幹部のこと……それぞれに役目がある……」
ナチカが簡潔に説明した、その瞬間――
ダダダダダダッ!
元気な足音が廊下を駆け抜ける。
襖が勢いよく開いた。
「おっはよ~!!!」
狸耳と大きな尻尾を揺らす少女が飛び込んでくる。
「……こころ、うるさいですよ……領主様の前です……」
白装束の少女がため息をつく。
「えぇ~いいじゃん!……ん?あ!あなたが新入り?よろしく!」
「あ!は、はい!よろしくお願いします……?」
白装束の少女がこころの襟を掴み、座らせる。
「こら、こころ……失礼ですよ」
ナチカが小声で説明する。
「白装束の女の子が十将夜叉の一人、玉藻前と人間の男性の間に生まれた半妖――西園カエデ。
それで、耳と尻尾を隠してない女の子が、隠神刑部狸と人間の女性との間に生まれた半妖――隠神こころ。二人は親友」
「……なんかすごい……」
そのとき。
ドスッ、ドスッ、と重い足音。
襖が豪快に開いた。
「よう!待たせたか?」
三本角の女性が腕を組んで立つ。
「美鬼?少しは静かに」
カエデがたしなめる。
「すまねぇな、なにせでかいからな!」
「そうだね、美鬼~」
優しげな少女がくすりと笑う。
「おう!」
ナチカが続ける。
「あの角の生えた人が、酒呑童子の娘――美鬼。
そしてあの穏やかな子が、土蜘蛛の妖怪――紬。二人は一番仲良し……」
「強そうです……」
すると、背後からふわりと冷たい気配。
「おや~?知らない顔がいるね~」
「!?」
振り返ると、霧のような少女が立っていた。
「彼女は十将夜叉の一人――妖怪名もそのまま、鵺。神出鬼没……」
「……こんにちは」
いつの間にか、物静かなお面の少女も座っている。
「え?いつの間に」
「あの子は面霊気の妖怪――しおり」
襖が静かに開く。
「遅れました!……あら?まだ皆さんそろっていないんですか……」
海のように透き通った少女が入ってくる。
「彼女は海ぼ.....」
海のように透き通った少女がナチカを見る
「ん?」
ナチカは続ける
「妖怪『海入道』の藍」
「……あと三人は?」
亜由が辺りを見回した瞬間。
「私ならここですが……」
「わわっ!」
天井から逆さまに少女が顔を出す。
「なんで天井から……まぁ、あの子は雲外鏡の妖怪――鏡」
次の瞬間。
「遅れまして」
複数の声が重なる。
亜由の前に七つの影が並んだ。
「いっぱい出てきた……」
「七人で一人の妖怪――七人同行。名前はない」
そして最後に。
すっと襖が開き、青い灯のような少女が現れる。
「遅れました。すみません」
「お!来たな!」
美鬼が笑う。
「彼女は青行燈の妖怪――蒼」
亜由は完全に圧倒されていた。
「ほぇ~……」
十の気配。
十の妖。
それぞれが違う色と重みを持って、この部屋に集っている。
源 梓が、静かに扇を閉じた。
空気が変わる。
「さて、皆さん。そろったわね」
その瞳に、領主としての威厳が宿る。
「では――会議を始めましょう」
緊急会議。
議題はただ一つ。
陰陽師。
そして――半妖の少女、亜由。
静寂の中、十将夜叉の視線が一斉に彼女へと向けられた。
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次回もお楽しみに




