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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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ーー紅焔舞う南天、百夜に灯る蒼き幻火ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

太陽はすでに空の頂へと昇り、戦場は白昼の光に包まれていた。


 


だが――


 


その光すら塗り潰すように。


 


空が赤く染まる。


 


燃えていた。


 


空そのものが。


 


ゆっくりと降りてくるのは、炎の化身。


 


朱雀。


 


翼を広げるたび、炎が花のように散る。


 


その姿は美しく――


 


そして、絶対的な破壊の象徴。


 


朱雀は優雅に首を傾けた。


 


「名乗りましょう」


 


炎が揺れる。


 


「私は朱雀」


 


羽が一枚、ふわりと舞う。


 


「安倍晴明様の式神にして」


 


炎が広がる。


 


「南と火を司る神獣!」


 


その声と同時に、熱風が吹き荒れた。


 


対するは――


 


藍。


 


蒼。


 


藍がオカリナを軽く回す。


 


「私は十将夜叉の一人」


 


にやりと笑う。


 


「妖怪【海入道】の藍!」


 


蒼は静かに行燈を掲げる。


 


青い炎がゆらめく。


 


「十将夜叉の一人」


 


低い声。


 


「妖怪【青行燈】の蒼………」


 


三者が対峙する。


 


一瞬の静寂。


 


そして。


 


朱雀が羽ばたいた。


 


「では――」


 


炎が爆ぜる。


 


「始めましょう」


 


翼が振るわれた瞬間。


 


無数の炎の羽が放たれる。


 


「炎羽」


 


それはただの羽ではない。


 


触れた瞬間、爆ぜる。


 


「っ!」


 


藍がオカリナを吹く。


 


澄んだ音色。


 


「海鳴り・水壁」


 


水が立ち上がる。


 


壁となり、炎羽を防ぐ。


 


ジュゥゥッ!!


 


水が蒸発する。


 


蒼が動く。


 


行燈の炎が揺れる。


 


「百物語・一の炎【宵影の囁き】」


 


青い炎が広がる。


 


触れた炎羽が――


 


揺らぐ。


 


幻覚。


 


炎の軌道が歪む。


 


だが。


 


朱雀は止まらない。


 


「甘い」


 


さらに羽ばたく。


 


「炎羽・千花乱舞」


 


数が増える。


 


密度が跳ね上がる。


 


水壁を突き破る。


 


「くっ……!」


 


藍が後退する。


 


蒼も炎で相殺するが――


 


押し切れない。


 


朱雀が滑空する。


 


その動きは優雅。


 


そして速い。


 


「朱焔爪」


 


炎を纏った爪が振り下ろされる。


 


蒼が受ける。


 


「百物語・二の炎【歪灯の宴】」


 


炎が膨らみ、幻覚の領域を作る。


 


だが。


 


朱雀の炎はそれすら焼く。


 


「幻も燃える」


 


一撃で吹き飛ばされる。


 


「ぐっ……!」


 


蒼が地面を滑る。


 


藍が歯を食いしばる。


 


「強すぎる……!」


 


朱雀は静かに言う。


 


「当然です」


 


「火とはすべてを焼き尽くすもの」


 


翼を広げる。


 


「終わりにしましょう」


 


炎が集中する。


 


巨大な火球。


 


「南天・焔極光」


 


放たれる。


 


その瞬間。


 


藍が前に出た。


 


オカリナを強く吹く。


 


「海鳴り・大渦界」


 


巨大な水の渦が発生する。


 


火球と衝突。


 


蒸気爆発。


 


視界が白く染まる。


 


その中で。


 


蒼が立ち上がる。


 


行燈の炎が激しく揺れる。


 


「……まだ」


 


低く呟く。


 


「終わりじゃない」


 


炎が広がる。


 


「百物語・三の炎【影縫いの灯】」


 


影が動く。


 


朱雀の動きを縛る。


 


一瞬だけ。


 


だが。


 


その一瞬で十分。


 


藍が笑う。


 


「いいねぇ……!」


 


オカリナを高らかに吹く。


 


「潮騒・深海招来」


 


水が集まる。


 


圧縮される。


 


蒼が叫ぶ。


 


「いくよ」


 


藍が頷く。


 


「任せな」


 


二人の力が重なる。


 


水と炎。


 


相反する力。


 


だが。


 


融合する。


 


蒼が最後の技を放つ。


 


「百物語・終の炎【百夜幻焔】」


 


青い炎がすべてを包む。


 


幻覚が極限まで高まる。


 


朱雀の認識が狂う。


 


そこへ。


 


藍の水が叩き込まれる。


 


「海鳴り・滅海墜」


 


超圧縮の水撃。


 


炎と水が交差する。


 


内部崩壊。


 


朱雀の体に亀裂が走る。


 


「……見事……」


 


かすれる声。


 


炎が揺れる。


 


崩れる。


 


朱雀は塵になって消えた。


 


その塵は――


 


炎のようで。


 


とても美しかった。


 


 


静寂。


 


藍が息を吐く。


 


「はぁ……やっとか」


 


蒼が行燈を下ろす。


 


「……強敵だった」


 


空にはもう炎はない。


 


ただ、青空だけが広がっていた。


 


 


――別の戦場。


 


空間が歪んでいる。


 


現実と異界が重なる場所。


 


その中心に。


 


一体の存在が立っていた。


 


勾陳。


 


重厚な気配。


 


揺るがぬ中心。


 


その視線の先には――


 


一人の少女。


 


鏡。


 


静かに佇む。


 


無機質な瞳。


 


勾陳が口を開いた。


 


「お前だな娘?」


 


低い声。


 


「この霊鏡とやらの空間を作ったやつは」


 


鏡はわずかに首を傾ける。


 


「………そうですが」


 


間。


 


「なにか?………」


 


勾陳が一歩踏み出す。


 


空間が揺れる。


 


「我が名は勾陳!」


 


力が広がる。


 


「中心を守護する聖獣なり!!」


 


鏡の表情は変わらない。


 


ただ。


 


わずかに。


 


笑った。


 


「十将夜叉」


 


その声は冷たい。


 


「妖怪【雲外鏡】鏡………」


 


空間にヒビが入る。


 


無数の鏡面が浮かぶ。


 


「バラバラにしてあげます」


 


鏡の世界が広がる。


 


新たな戦いが――


 


始まる。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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