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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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ーー沈みゆく月の戦場ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

夜はまだ終わらない。


 


だが、空に浮かぶ月はすでに西へと傾き始めていた。

薄く白い光が、広大な草原を静かに照らしている。


 


霊鏡の奥深く。


 


人の踏み入らぬ草原に、二つの軍勢が向かい合っていた。


 


片方は陰陽師の軍。


 


白い狩衣を纏い、式符を握る者たちが整然と並んでいる。


 


その中央に立つのは、一人の男。


 


長い髪を風に揺らし、静かな笑みを浮かべる陰陽師。


 


安倍晴明。


 


そしてその向かいには――


 


妖怪たちの軍勢。


 


鬼、妖狐、付喪神、亡霊、怪異。


 


種族も姿も異なる者たちが並んでいた。


 


その先頭に立つのは、刀を携えた一人の女性。


 


源梓。


 


二人の視線が交差する。


 


草原に冷たい風が吹いた。


 


安倍晴明が口を開く。


 


「お前が……」


 


「源家の分家の末裔とは」


 


梓は軽く肩をすくめた。


 


「さぁ、どうかしら」


 


晴明は興味を失ったように目を細める。


 


「まぁ良い」


 


「妖怪を引き連れる者のことなど」


 


「どうでもいい」


 


そして手を軽く振った。


 


「おまえたち!!」


 


その瞬間だった。


 


草むらの中から、次々と陰陽師たちが姿を現した。


 


前後左右――


 


完全な包囲。


 


妖怪たちがざわめく。


 


「囲まれた!?」


 


だが梓は笑った。


 


「あら」


 


「問答無用なんて」


 


「女の子に嫌われるわよ?」


 


晴明は鼻で笑う。


 


「フンッ!」


 


そして静かに言った。


 


「殺れ」


 


その言葉と同時に――


 


陰陽師たちが一斉に突撃した。


 


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


 


草原が震える。


 


梓は刀を抜いた。


 


「皆」


 


刃が月光を反射する。


 


「各々の戦いを」


 


「全うせよ」


 


次の瞬間。


 


妖怪軍勢が咆哮した。


 


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 


戦いが始まった。


 


輪入道が炎の車輪を回しながら突進する。


 


「車軸火炎タイフーン!!!」


 


巨大な炎の渦が陰陽師の群れを巻き込んだ。


 


「ぐああああああ!!?」


 


椿が扇を振る。


 


「花畑・狂花五月雨!!」


 


無数の花びらが刃となり、空から降り注ぐ。


 


「ぎゃああああ!!?」


 


夜道怪が杖を掲げる。


 


「ワシらも続くぞ!」


 


空に光が集まる。


 


「月影光線!」


 


月の光が束となり、地面を焼き裂いた。


 


「ぁぁぁぁぁ!!!!!」


 


ヒダル神が笑う。


 


「ひだるい気持ちを味合わせるよ!」


 


彼の足元から黒い結界が広がる。


 


「ヒダル神・飢餓結界!!!」


 


その瞬間。


 


陰陽師たちの顔色が変わった。


 


「お……」


 


「おなか……空いた……」


 


膝から崩れ落ちる者もいる。


 


圭が地面に手をつく。


 


「土転び・山嵐!!!」


 


大地が盛り上がり、巨大な土石流となって陰陽師たちを吹き飛ばした。


 


「ぐぁぁぁぁぁ!!??」


 


妖怪たちが歓声を上げる。


 


「俺達も続くぞーーー!!!」


 


陰陽師たちも負けてはいない。


 


「負けるかぁぁぁぁ!!!!!」


 


戦場は一瞬で乱戦になった。


 


その時。


 


空から声が響いた。


 


「皆……」


 


魔女の長老が杖を掲げる。


 


ヴィルヘルミーナ・ヴァイス。


 


「敵は陰陽師!」


 


その背後には多くの魔女が浮かんでいる。


 


「空から魔法の雨を降らせて攻撃じゃ!!!」


 


グレートヒェンが元気よく答える。


 


「はい!」


 


魔女たちが杖を掲げた。


 


「はい!」


 


ヴァイスが叫ぶ。


 


「今じゃぁ!!!」


 


次の瞬間。


 


空が光った。


 


無数の魔法弾が雨のように降り注ぐ。


 


陰陽師たちが叫ぶ。


 


「うああああ!!!?」


 


「な、なんだ!?」


 


「空から!!」


 


晴明はその光景を見て、少しだけ笑った。


 


「ふむ」


 


「やるな」


 


そして指を鳴らす。


 


「では」


 


「私も」


 


符が舞い上がる。


 


「式神」


 


空間が歪んだ。


 


「朱雀」


 


炎の鳥が現れる。


 


「玄武」


 


巨大な亀の怪物。


 


「白虎」


 


月光を浴びた白い虎。


 


「青龍」


 


天空を泳ぐ蒼い龍。


 


さらに。


 


「騰蛇」


 


蛇の怪物が地面を這う。


 


「勾陳」


 


重々しい気配の式神が姿を現した。


 


妖怪たちが息を呑む。


 


梓が呟く。


 


「……ずいぶん」


 


「強そうな式神ね」


 


晴明が笑う。


 


「ハハハッ!」


 


「そうだろう」


 


「このときのため」


 


「集められる我が十二天将を」


 


「集めてきたのだ」


 


そして梓を見る。


 


「さぁ」


 


「お前の一番信頼する者と」


 


「私の十二天将」


 


「どっちが強いかな?」


 


少し間を置いて。


 


「……お前はどうする?」


 


その時。


 


前に出た男がいた。


 


源頼光。


 


彼は静かに言う。


 


「私は」


 


「もう戦う相手が決まっているようだ」


 


その前に立つのは――


 


美鬼。


 


彼女は笑った。


 


「よぉ」


 


「はじめましてだな」


 


その隣で紬が静かに立っている。


 


「……」


 


頼光は後ろの者たちに言った。


 


「お前たち」


 


「行くぞ」


 


渡辺綱が刀を抜く。


 


「妖怪ごとき」


 


「私が斬り殺してくれる」


 


坂田金時が拳を鳴らす。


 


「オレの怪力!」


 


「見せてやる!」


 


碓井貞光は無言で槍を構える。


 


卜部季武が弓を引いた。


 


「私が射抜いてやろう」


 


一方。


 


騰蛇が地面を這う。


 


「シュルルルル……」


 


その前に鵺が立った。


 


「ふふっ」


 


白虎が唸る。


 


「グルルルルル!!」


 


その前に立つのは――


 


しおり。


 


薙刀を構えた。


 


「私の相手は」


 


「お前か……」


 


玄武は静かに首を上げる。


 


七人同行が腕を組む。


 


「ふむ」


 


青龍が空を泳ぐ。


 


隠神こころが震えた。


 


「き、緊張する……」


 


西園カエデが小さく息を吐く。


 


「……今まで会った敵より」


 


「手強いですよね」


 


朱雀が翼を広げた。


 


藍が笑う。


 


「さぁ~」


 


「行くわよ!」


 


蒼が炎をまとった。


 


「相手も炎ですか」


 


「まぁ良いでしょう」


 


勾陳が重く言う。


 


「乗り気ではないが……」


 


「仕方ない」


 


鏡が微笑む。


 


「おや」


 


「知性はあるようですね」


 


晴明が満足そうに頷いた。


 


「ふむ」


 


「決まったようだな」


 


梓も頷く。


 


「えぇ」


 


その時。


 


遠くから声が響いた。


 


「梓さん!!」


 


振り向くと――


 


亜由たちが駆けてきていた。


 


梓が驚く。


 


「亜由……」


 


「皆さん」


 


亜由は叫ぶ。


 


「私たちも戦います!」


 


六花が笑う。


 


「さすがに」


 


「一人で行かせたりしないよ!」


 


梓は一瞬迷い――


 


そして頷いた。


 


「……分かりました」


 


刀を構える。


 


「行きますよ!」


 


晴明が楽しそうに笑う。


 


「複数か……」


 


「まぁいい」


 


扇を開く。


 


「……かかってこい」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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