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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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33/48

ーー墓守と怪火、魍魎の影ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

夜の沙霧村。


月明かりが静かに大地を照らす中、亜由(あゆ)たちは村外れにある墓地へとやってきていた。


古い石の墓標が整然と並び、風に揺れる木々の葉がかすかな音を立てている。


どこかひんやりとした空気が漂う場所だった。


 


亜由は辺りを見回しながら小さく言った。


 


「ここが墓地……」


 


ナチカが静かに頷く。


 


「ん」


 


「人間の眠る墓地……」


 


そのとき。


 


木の枝の上から声が聞こえた。


 


「おや?」


 


亜由たちは上を見上げる。


 


そこには、小さな幼女が枝に腰掛けていた。


オレンジ色の羽根を持つ少女だった。


 


少女はにこっと笑う。


 


「あなた達ですか?」


 


「この墓地の怪火の異変を解決しに来たひとたちは」


 


六花(ろっか)が元気よく手を挙げる。


 


「うん!」


 


「そうだよ!」


 


(そら)!」


 


少女は嬉しそうに枝からふわりと降りてきた。


 


「なるほどです!」


 


そして亜由たちを見回す。


 


「おや、初めての方もいますね」


 


胸に手を当てる。


 


「私は天!」


 


以津真天(いつまでん)という妖怪で、ここの墓守です」


 


少し照れたように笑う。


 


「と言っても……お手伝いですが」


 


亜由は軽く頭を下げた。


 


「私、亜由」


 


水月(すいげつ)も少し緊張しながら言う。


 


「水月……です」


 


(さとり)が空中を見つめる。


 


「それで」


 


「怪火が……」


 


指を指す。


 


「あれね……」


 


その先には――


 


二つの火の玉が浮かんでいた。


 


(ライ)が小さく言う。


 


「ほいほい火に……」


 


「蜘蛛火……」


 


火の玉の一つはくるくる回りながら声を出している。


 


「ホーイホーイ……」


 


「ジャンジャン……」


 


もう一つの火の玉の周りには――


 


無数の蜘蛛。


 


蜘蛛たちが集まり、火の玉のような形を作っていた。


 


「……」


 


亜由は驚く。


 


「どんな妖怪なんですか」


 


ナチカが説明する。


 


「ほいほい火は」


 


「ホーイとかジャンジャンとか言って飛び回る火の玉」


 


少し視線を動かす。


 


「蜘蛛火は」


 


「蜘蛛の集合体が火の玉となって」


 


「人間を襲う妖怪」


 


静かに続ける。


 


「どっちとも」


 


「人を襲う可能性しかない」


 


亜由が驚く。


 


「え」


 


ノーマが慌てる。


 


「どどどどうするんですか!?」


 


天が困った顔で言う。


 


「そうなの」


 


「私じゃ攻撃のとき触れちゃうし」


 


「炎攻撃もあんまり効かないし……」


 


その時。


 


水月が少し手を挙げた。


 


「私の水で倒します?」


 


天の目が大きくなる。


 


「できるの!?」


 


水月は頷いた。


 


「は、はい!」


 


墓石を見て言う。


 


「お墓を傷つけないように気をつければ……」


 


覚が優しく言う。


 


「じゃあ」


 


「お願いできるかな」


 


水月は深く息を吸う。


 


「はい」


 


両手を前に出す。


 


水の妖力が集まり始めた。


 


「やってみます……」


 


集中する。


 


空気が震える。


 


「――低空飛行ノ渦潮!」


 


ゴォォォォォッ!!


 


地面すれすれを回転する水流が生まれた。


 


水の渦が墓地を傷つけないよう低く滑るように進む。


 


ほいほい火と蜘蛛火が気づく。


 


「!?」


 


次の瞬間。


 


渦潮が火の妖怪たちを飲み込んだ。


 


ズガァァン!!


 


水と妖力の渦の中で、炎が弾ける。


 


そして――


 


火の玉たちは細かな塵となって消えていった。


 


墓地に静けさが戻る。


 


水月は息を整える。


 


「これで……終わりですね……」


 


六花が目を輝かせる。


 


「すごーい!」


 


水月は照れる。


 


「そ、そうですか」


 


天が嬉しそうに頭を下げた。


 


「ありがとうございます!」


 


しかし――


 


そのときだった。


 


雷が耳を澄ます。


 


「ん?」


 


小さくつぶやく。


 


「……なにか来る」


 


次の瞬間。


 


森の奥から恐ろしい声が響いた。


 


「肝!!」


 


「腸!!」


 


「死体食わせろぉぉぉぉぉ!!!!」


 


巨大な影が木々をなぎ倒しながら現れる。


 


巨大な獣のような姿だった。


 


天が目を見開く。


 


「っ!」


 


「魍魎!」


 


「こんなときに!」


 


そう叫ぶと天はすぐに飛び立った。


 


魍魎へ向かって一直線に飛ぶ。


 


亜由が驚く。


 


「あ!」


 


六花が言う。


 


「追いかけよう!」


 


 


墓地のすぐ近く。


 


そこでは天が魍魎と向き合っていた。


 


魍魎は巨大な牙をむき出しにしている。


 


「食わせろ!」


 


天が叫ぶ。


 


「させない!」


 


魍魎が突進する。


 


ドンッ!!


 


天が体当たりを受けて吹き飛ばされる。


 


魍魎が笑う。


 


「グボハァ!?」


 


しかし天はすぐに立ち上がった。


 


魍魎が目を細める。


 


「……貴様」


 


「墓守か!」


 


天は羽を広げる。


 


「そうだよ!」


 


「魍魎!」


 


指を突きつける。


 


「墓守の人間から聞いてるよ!」


 


「妖怪『魍魎』!」


 


「死体を食べる妖怪!」


 


「特に死体の肝が好きだって!」


 


強く言う。


 


「人間が困ってる!」


 


「ここで倒す!」


 


魍魎が笑う。


 


「グヘヘヘ」


 


「やってみろ」


 


そのとき。


 


後ろから声が響いた。


 


「ソラ!」


 


天が振り向く。


 


「皆さん!」


 


亜由たちが駆けつけてきた。


 


ナチカが前に出る。


 


「ん」


 


「力を貸す」


 


覚も頷く。


 


「えぇ」


 


ノーマが言う。


 


「任せてください」


 


水月も構える。


 


「はい!」


 


雷が静かに言う。


 


「仕留める……です」


 


六花が拳を握る。


 


「いっくよー!!」


 


天は嬉しそうに微笑んだ。


 


「……ありがとうございます!」


 


魍魎は大きく口を開く。


 


鋭い牙が月光に光る。


 


「複数で来るのか?」


 


不気味に笑う。


 


「まぁ良い」


 


「貴様らを殺して」


 


「食ってやる!!!」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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