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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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30/48

ーー蒼海の激闘 ― 共潜封印ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

水月は海中で現れた影を見て戸惑っていた。


「……トモカヅキって?」


加賀(かが)が前に出て、水月を庇うように立つ。


共潜(トモカヅキ)はね」


静かに説明する。


「獲物の人間そっくりに化けて、人間を海中深くに沈めて殺す妖怪……」


目を細める。


「うちで最も警戒してる妖怪だ」


 


共潜はゆっくりとこちらへ近づいてくる。


濁った目で二人を見つめる。


「何度も……何度も……」


低い声が海に響く。


「邪魔してくれやがって……」


鋭い殺気。


「今度こそ殺してやる!!!」


 


次の瞬間。


 


ドンッ!!


 


共潜が高速で突進してきた。


加賀はすぐに柄杓を構える。


「水月、下がれ!」


 


加賀は柄杓を海中で振るった。


柄杓の先から泡が溢れ出す。


ブクブクブク……


泡はただの泡ではない。


水の妖術で作られた防御の泡だった。


共潜の爪が泡の壁にぶつかる。


ドゴッ!!


 


しかし――


 


泡の壁は砕けた。


 


加賀が舌打ちする。


「やっぱり強い……!」


 


共潜は笑う。


「船幽霊……」


牙をむく。


「沈めてやる……」


 


再び襲いかかる。


 


加賀は柄杓を振る。


今度は水流が放たれる。


柄杓から勢いよく水が噴き出した。


ドンッ!!


水流が共潜を弾き飛ばす。


 


しかし共潜は海中で回転して体勢を立て直す。


「無駄だ」


共潜は腕を振った。


海流が歪む。


共潜は水中の流れを利用して高速移動する妖怪だった。


 


次の瞬間――


 


共潜が加賀の背後に現れた。


 


ドンッ!!


 


加賀が弾き飛ばされる。


 


水月が叫ぶ。


「加賀さん!!」


 


加賀は海中で体勢を立て直した。


「大丈夫……!」


しかし少し息が荒い。


 


共潜はゆっくり近づく。


「弱いな……船幽霊」


 


加賀は柄杓を握り直した。


「まだ終わってない」


 


共潜が再び襲う。


 


その瞬間――


 


海が震えた。


 


ゴォォォォ……


 


共潜が動きを止める。


「……?」


 


加賀も気づく。


 


海の流れが変わっていた。


 


水月だった。


 


水月は必死に集中していた。


 


海水が集まる。


 


流れが渦を巻く。


 


巨大な渦潮が共潜の周囲に生まれた。


 


ゴォォォォォ!!


 


共潜が巻き込まれる。


「ぐっ!?」


 


加賀が目を見開く。


「水月……!」


 


水月は叫ぶ。


「さっき教えてもらった通り……」


 


さらに水を操る。


 


渦潮はさらに巨大になる。


 


共潜は必死に抜け出そうとするが、水流が体を拘束する。


 


加賀が言う。


「いい援護だ!」


 


柄杓を構える。


 


「決めるよ」


 


加賀は柄杓をゆっくり回す。


 


柄杓の先から無数の泡が生まれる。


 


ブクブクブク……


 


その泡を操りながら――


 


加賀は海中に星の形を描いた。


 


一筆書きの星。


 


陰陽の印。


 


ドーマンセーマン。


 


泡の星が完成した瞬間――


 


共潜の体が鈍くなる。


 


「ぐっ……!」


 


陰陽の封印術だった。


 


加賀が素早く巻物を取り出す。


 


妖術で防水処理された封印の巻物。


 


「今だ!」


 


水月がさらに水流を強める。


 


共潜の体が引き寄せられる。


 


加賀は巻物を開いた。


 


巻物の中に陰陽の印が描かれている。


 


「封じる!」


 


水流が共潜を巻き込み――


 


ズズズッ!!


 


共潜の体が巻物の中へ吸い込まれた。


 


バタン!!


 


巻物が閉じる。


 


海は静かになった。


 


加賀はゆっくり息を吐く。


 


「……ふぅ……」


 


水月を見る。


 


「ありがと」


 


水月は少し照れながら言う。


 


「……お役に立ててよかったです」


 


 


蒼海の浜辺


 


不知火(しらぬい)が海を見る。


 


「あ、戻ってきた」


 


亜由(あゆ)が聞く。


 


「どうだった?」


 


水月(すいげつ)は嬉しそうに言った。


 


「はい!」


 


「覚えられました!」


 


六花が飛び跳ねる。


 


「良かったー!!!」


 


(さとり)も微笑む。


 


「一人前の一歩ね」


 


ナチカが言う。


 


「ん」


 


「もっと励むといい」


 


雷も頷く。


 


「きっと強くなる……です」


 


ノーマも言う。


 


「がんばって」


 


水月は少し緊張しながら亜由を見る。


 


「あ、あの!」


 


「……私もついて行ってもいいでしょうか……」


 


亜由が驚く。


 


「え」


 


水月は慌てて言う。


 


「み、みなさんと一緒に!」


 


「い、行きたいです!」


 


亜由は少し考えて――


 


笑った。


 


「……うん!」


 


水月の目が輝く。


 


「!」


 


不知火が言う。


 


「だったら、式神にしたら?」


 


亜由が首をかしげる。


 


「式神に?」


 


加賀が少し困った顔をする。


 


「不知火?」


 


「亜由はもう三体も式神にしているようですし」


 


「さすがに負担が……」


 


不知火は笑う。


 


「え〜、いいじゃん!」


 


「亜由の妖力、すごいよ?」


 


「きっと大丈夫だよ!」


 


加賀がため息をつく。


 


「……あのですね」


 


「たしかに妖力は霊力より強いですが」


 


「本来式神として使う力は霊力なのですよ?」


 


「それを妖力で補っているだけで」


 


不知火が笑う。


 


「も〜う!」


 


「いいじゃん!いいじゃん!」


 


亜由が言った。


 


「あの」


 


「私、やってみたいです」


 


水月が深く頭を下げる。


 


「……お願いします!」


 


亜由は式神の符を取り出す。


 


妖力を込める。


 


符が淡く光る。


 


亜由は集中する。


 


水月の妖力を符に集める。


 


妖力が流れ込み――


 


光が広がる。


 


そして――


 


不知火が笑う。


 


「うん!」


 


「成功だね!」


 


水月が驚く。


 


「……すごいです」


 


「力が湧いてくるような……」


 


不知火が笑う。


 


「うん!うん!」


 


「あと一人で五芒星だね!」


 


亜由が首をかしげる。


 


「?」


 


加賀が言う。


 


「……不知火?」


 


「五芒星は陰陽師の――」


 


不知火が遮る。


 


「む〜」


 


「オロチ様や梓様も使ってるから良いじゃん」


 


加賀はため息をつく。


 


「はあ……」


 


亜由が聞く。


 


「五芒星って?」


 


加賀が説明する。


 


「五行……」


 


「木・火・土・金・水……」


 


「この五つを繋いでできる星のことです」


 


「すごい力を持ち」


 


「結界を張ったり味方の力を高める効果もあるとか……」


 


不知火が嬉しそうに言う。


 


「うん!」


 


「鎌鼬のナチカは刃物で切られた傷を作る妖怪だから」


 


「五行で金!」


 


「覚は精神を読む能力だから木!」


 


「ノーマは大地の妖怪だから土!」


 


「水月は洪水の妖怪だから水!」


 


 


「……こんな感じかな?」


 


 


みんな「……」


 


加賀が苦笑する。


 


「皆さんぽかんとしてますね……」


 


「まあ、無理に覚えなくてもいいですよ」


 


「これは妖怪や術者の持つ属性のようなものですから」


 


亜由がふと思い出す。


 


「……あれ?」


 


「火は?」


 


不知火が止まる。


 


「……いないね」


 


ナチカが言う。


 


「ん」


 


「いつものこと」


 


「勢いで言っただけ」


 


雷が小さく言う。


 


「……ただ元気なだけ……です」


 


覚が笑う。


 


「まあ」


 


「でも説明できて偉いわね」


 


ノーマは少し困っていた。


 


水月は感心して言う。


 


「なんか凄そうです」


 


加賀が少し真面目な顔で言った。


 


「でも」


 


「これは噂だけど」


 


「これから大戦が始まる可能性がある」


 


「だから五行の五芒星を揃えておくのは」


 


「悪くない選択肢かもしれません」


 


 


――その頃。


 


霊鏡の外。


 


京都。


 


陰陽師総本山――陰陽邸。


 


広い座敷。


 


安倍晴明が静かに座っていた。


 


源頼光が前に進み出る。


 


「……晴明様」


 


「話とは……」


 


陰陽師たちが周囲に集まる。


 


安倍晴明は静かに言った。


 


「妖怪と」


 


「妖怪に与する者共の居場所……」


 


 


「霊鏡のありかが掴めそうだ」


 


陰陽師たちがざわめく。


 


「なんと!」


 


源頼光が怒鳴る。


 


「静まれ!!」


 


場が静まる。


 


安倍晴明は目を閉じた。


 


「……もう少しだ」


 


ゆっくり言う。


 


「もう少し……」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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