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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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ーー蒼海の修行 ― 水月の覚醒ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

亜由(あゆ)たちは海に来て、二代目ヤロカ水――水月と出会った。


六花(ろっか)は、水月(すいげつ)に水の力の使い方を教えられる水系妖怪を探すため、空洞の外へ出た。


 


水月は少し緊張していた。


「えっと……」


六花は深く息を吸う。


「……スゥ〜……」


そして――


海へ向かって大声で叫んだ。


「おーーーーーい!!!!」


不知火(しらぬい)ーー!!加賀(かが)ーー!!いるーーー!!!」


 


ナチカが小さく頷く。


「なるほど」


「二人はこの海域の警備担当だから……」


 


(ライ)が空を見上げる。


「聞こえている……です?」


 


(さとり)が海面を見た。


「さぁ……」


そして――


「あら?」


 


ボッ


ボッ


ボッ


 


海面のあちこちに炎が灯った。


赤、青、紫、緑。


様々な色の炎が波の上に揺れている。


 


その中から二人の少女が現れた。


 


カラフルな炎を身にまとった少女が元気よく手を振る。


「やっほー!」


 


白装束で天冠をつけた少女が船の上に立っていた。


「そんなに叫ばなくても聞こえてるよ」


 


亜由が少し驚く。


「……誰か来ました」


 


ナチカが説明する。


「ん」


船の方を指す。


「船に乗ってるのが妖怪**『船幽霊』の加賀**」


そしてもう一人を見る。


「元気な方が妖怪**『不知火』の不知火**」


 


加賀が軽く会釈する。


「よろしくね、迷い人」


穏やかな声で言う。


「君のことは海坊主……じゃなかった」


少し考えて言い直す。


「水系妖怪の将軍――海入道の藍から聞いているよ」


 


亜由が驚く。


「あ、十将夜叉の……」


 


不知火が笑う。


「うん!」


「それで?」


腕を組む。


「なにか用かな?」


 


六花が水月を前に出した。


「この子に」


「水の妖術の使い方を教えてほしい」


 


水月は少し震えながら言う。


「……」


 


加賀が静かに水月を見る。


「……新人だね」


少し頷く。


「なるほど」


優しく聞く。


「名前は?」


 


水月は少し大きな声で言った。


「水月……です!」


 


加賀が微笑む。


「そうかい」


「水月」


 


船を指さす。


「じゃあ行こうか」


「乗って」


 


水月は驚きながらも船へ乗った。


「は、はい!」


 


ノーマが不安そうに聞く。


「私たちはどうすれば……」


 


不知火が笑って言う。


「見守ってよ」


 


雷が静かに海を見つめていた。


「……」


 


 


蒼海の海上


船は少し沖へ出た。


 


加賀が海を見渡す。


「うん」


「このあたりが良いね」


 


船は波に揺れていた。


 


水月が慌てる。


「わわっ、揺れます」


 


加賀は落ち着いて言う。


「すぐに慣れるさ」


そして静かに言う。


「さて」


「始めようか」


 


水月は深く息を吸った。


「……はい……!」


 


加賀は海を見ながら話し始めた。


「水というものはね」


ゆっくり言う。


「力で動かすものじゃない」


 


水面を指さす。


「水は常に流れている」


「止まっているように見えても」


「常に動いている」


 


水月は真剣に聞いていた。


 


加賀が続ける。


「だから」


「命令してはいけない」


 


静かに言う。


「感じるんだ」


 


水月は目を閉じた。


 


加賀が言う。


「波を感じて」


「流れを感じて」


「水の声を聞くんだ」


 


水月の周りの海水が、少し揺れた。


 


「いいね」


加賀が言う。


「そのまま続けて」


 


 


やがて――


加賀は言った。


「次は最後の試練だ」


 


水月が驚く。


「最後……?」


 


加賀は海を指さした。


「水の妖怪なら」


静かに言う。


「水の中で使えなきゃ意味がない」


 


「潜ろう」


 


水月は頷いた。


「はい!」


 


 


海中


青い世界。


光がゆらゆら揺れている。


 


加賀が言う。


「そう」


「感じるんだ……」


 


水月は集中する。


 


加賀が続ける。


「深く集中して……」


 


「流れを感じて……」


 


水月の周囲の水が、ゆっくり動き始めた。


 


 


さらに深い海底付近


 


影が動いた。


 


共潜が海底を這うように泳いでいる。


 


「……獲物は」


低い声。


「どこだ……」


 


ふと上を見る。


 


「ん?」


 


目を細める。


 


「あれは……」


 


「船幽霊か……」


 


怒りが混じる声。


 


「船幽霊め」


 


「私の邪魔ばかりしよって」


 


 


再び海中


 


水月は必死に集中していた。


 


水が動く。


 


流れが変わる。


 


水が集まり始める。


 


そして――


 


水月の周りに


いくつもの水の球が生まれた。


 


海の中なのに。


 


独立した水の玉が浮かんでいる。


 


水月が目を開く。


 


「できました!」


 


加賀が静かに頷く。


「……上出来だ」


 


その瞬間。


 


加賀の目が鋭くなる。


 


「っ!」


 


「危ない!」


 


水月が振り向く。


 


「え?」


 


ドンッ!!


 


何かが高速で飛んできた。


 


水月が驚く。


 


「わっ!?」


 


加賀が前に出る。


 


「……」


 


そして静かに言った。


 


「やっと見つけたよ」


 


「共潜……」


 


海の闇から現れた影。


 


共潜が低く言う。


 


「殺す」


 


水月が震えながら言う。


 


「トモ……カヅキ?」

ここまで読んでくれてありがとうございます

次回もお楽しみに

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