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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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24/48

ーー月赤邸――西洋の館ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

赤舌との戦いを終え、ノーマを仲間に迎えた亜由(あゆ)たち。


静かな夜道を歩く彼女たちの前に現れたのは、西洋の館のメイド長と名乗る女性――リンだった。


彼女は丁寧に礼をし、こう告げた。


「お嬢様が皆様を館へ招待しております」


突然の出来事に驚きながらも、亜由たちはリンについていくことになった。


 


夜道を進む。


森を抜け、草原を越え、霊鏡の東へと向かう。


月明かりが大地を照らしていた。


亜由は歩きながらリンに尋ねた。


「西洋の館ってなんですか?」


リンは歩きながら答える。


「霊鏡の東にある館です」


少しだけ微笑んだ。


「月赤邸とも呼ばれています」


亜由は聞き返す。


「月赤邸……」


リンは続けた。


「私達西洋の妖精や妖怪のために」


静かに言う。


「梓様たちが建ててくださった館です」


亜由は少し驚いた。


「……あの」


少し遠慮がちに聞く。


「どうして海外の妖怪さんや妖精さんが?」


リンは少しだけ目を伏せた。


「……」


そしてゆっくり話し始めた。


「私達は」


静かな声。


「ヨーロッパと呼ばれる大地で逃げていたのです」


亜由は驚いた。


「逃げて?」


リンは頷く。


「はい」


遠い記憶を見るように言う。


「ヴァンパイアハンターから」


少し強く言った。


「お嬢様と若様をお守りするために」


「私達妖精は逃げ続けていました」


風が静かに吹く。


リンは続けた。


「そのとき」


空を見上げる。


「鏡から二人の少女が現れたのです」


亜由が目を丸くする。


「鏡から?」


リンは頷いた。


「はい」


そして言う。


「一人の少女が言ったのです」


少し微笑む。


『霊鏡に来ない?』


「……と」


亜由は小さく呟く。


「その方が……」


リンは言った。


「梓様でした」


亜由は納得したように頷いた。


「そうなんですね……」


リンも頷く。


「はい」


静かに言う。


「あの方のおかげで」


少し強く言った。


「逃げきることができました」


そして少し苦い表情になる。


「……ヴァンパイアハンターは」


目を細める。


「しつこく」


「弱点のない吸血鬼であるお嬢様と若様を」


静かに言う。


「執拗に追い回したのです」


亜由は少し胸が痛くなった。


「……」


リンは話を続ける。


「館の近くの森には」


指を遠くの森へ向ける。


「小人――コロポックルも住んでいます」


さらに言う。


「魔女も逃げてきたと聞いています」


亜由は感心した。


「そうなんですね」


少し歩いたあと、亜由はまた聞いた。


「でも」


首をかしげる。


「どうして沙霧村に近くないんですか?」


(ライ)が答えた。


「建物を建てる」


小さく言う。


「良い土地がそこしかなかったらしい……です」


リンも頷く。


「はい」


少し寂しそうに笑う。


「近くに住めないのは残念ですが」


空を見る。


「人間もよく来てくれるので」


優しく言う。


「さみしくはありません」


ナチカが小さく言った。


「2番目に大きい書庫があるから」


亜由は興味を持つ。


「一番目は?」


六花(ろっか)が答えた。


「沙霧村の近くにある」


指を上げる。


「時計台大書館だよ~」


亜由は驚いた。


「もしかして」


思い出す。


「沙霧村にいたときに見えてた」


「大きい時計がある塔ですか?」


ナチカが頷いた。


「ん、そう」


そのとき。


リンが指を前へ向けた。


「見えました」


亜由たちが顔を上げる。


「……!」


そこには――


白い巨大な館が建っていた。


城のような建物。


月明かりに照らされ、白い壁が輝いている。


塔やバルコニーがいくつもあり、優雅な建築だった。


そして所々には赤い装飾。


まるで月と血を象徴するような色合い。


リンが言う。


「あれが」


静かに告げる。


「西洋の館――月赤邸です」


 


しばらくして。


亜由たちは巨大な門の前に立っていた。


鉄の門の前に、一人の騎士が立っている。


その騎士は――


片手に自分の首を持っていた。


女騎士が気づく。


「お!」


笑う。


「連れてきたか」


六花が手を振る。


「エレン!久しぶり!」


騎士は笑った。


「おう!」


亜由を見る。


「……そっちが迷い人の亜由だな?」


胸を張る。


「私はエレン!」


持っている首を少し持ち上げる。


「見ての通り――デュラハンだ」


亜由は正直に言った。


「首がとれてます」


ナチカが説明する。


「ん」


淡々と。


「そういう妖精」


そして続ける。


「死を呼んだりする」


リンも補足した。


「アイルランドに伝わる」


静かに言う。


「首の取れた騎士ですね」


そしてエレンを見る。


「本来生まれるのは男性ですが」


微笑む。


「彼女は突然変異です」


亜由は感心した。


「へぇ~……」


そして聞いた。


「戦えるんですか?」


エレンは笑う。


「ん?」


肩をすくめる。


「あぁ」


自信満々に言う。


「よく聞かれるけど戦えるよ」


片手で頭を持ちながら言う。


「もう一つの手で」


背中の巨大な剣を叩く。


「この大剣を操るのさ」


六花が頷く。


「私も模擬戦したことあるけど」


笑う。


「強かったよ」


亜由は少し驚いた。


「……」


エレンが門へ歩く。


「さ」


振り返る。


「入るんだろ?」


門を触る。


「今開けるから待ってろ」


リンが小さく言う。


「門番をしていますが」


静かに微笑む。


「相当強いですよ」


ガチャ


巨大な門がゆっくり開いた。


ギィィィィ……


エレンが振り向く。


「さ、空いたぜ」


笑う。


「お嬢様かまってるんだろ」


リンは軽く礼をした。


「では」


亜由たちを見る。


「行きましょうか」


亜由は少し緊張していた。


「は、はい」


ノーマは小声で言う。


「緊張するよ~……」


覚がくすっと笑う。


「ふふっ」


優しく言う。


「まぁ」


肩をすくめる。


「初めて来る人はみんなそうだから気にしないで」


 


そして――


亜由たちは西洋の館の中へ入った。


 


月赤邸。


豪華なホール。


赤い絨毯。


高い天井。


巨大なシャンデリアが輝いている。


そして――


階段の上に。


一人の少女が立っていた。


黒いドレス。


白い肌。


赤い瞳。


少女は優雅に微笑む。


「ふふっ」


静かに言う。


「来たわね……」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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