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外伝「第一弾」アルケオン 霊鏡物語  作者:


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 ーー天狗修行と迫る影ーー

――夜は、すべてを奪う。

けれど同時に、何かを始める場所でもある。


これは、炎に居場所を奪われた一人の少女が、

人ならざるものの棲む森へと迷い込み、

“生き延びる理由”を拾い上げるまでの物語。


名も知らぬ世界、霊鏡。

人と妖の境が曖昧なその森で、

少女はまだ、自分が何者になるのかを知らない。


これは――

運命が静かに動き出した、第一夜の記録である。

鞍馬神社の境内は、山頂とは思えないほど広かった。


石畳の道の両側には古い社殿が並び、赤い鳥居がいくつも立っている。

その奥には天狗たちの訓練場や住処があり、空では黒い翼を持つ天狗たちが飛び交っていた。


亜由(あゆ)はそれを見上げながら、小さく息を吐く。


「すごい……」


六花(ろっか)は笑った。


「でしょ?」


胸を張る。


「ここは天狗軍の本拠地だからね!」


(ライ)は静かに頷く。


「霊鏡でも屈指の戦力」


ナチカも周囲の気配を感じ取っていた。


「ん……強い妖力がいっぱい」


そのとき、天狗の一人が近づいてきた。


「こちらへ」


丁寧に頭を下げる。


「休める場所を用意しました」


六花が嬉しそうに言った。


「ありがと!」


――――――――――


案内された場所は、小さな社の裏にある休憩所だった。


木造の建物の中には畳が敷かれ、窓からは山の景色が見える。


亜由は座ると、ほっと息をついた。


「ふぅ……」


六花が笑う。


「結構疲れたでしょ?」


亜由は少し苦笑した。


「はい……」


窓の外を見る。


「でも、ここまで来れたんですね」


ナチカは隣に座った。


「ん」


優しく言う。


「亜由なら大丈夫」


雷は腕を組んでいた。


「修行は厳しい」


少し間を置く。


「けど、ご主人も昔ここで鍛えられた」


六花はにこっと笑う。


「うん!」


拳を握る。


「最初は大変だったけどね!」


そのとき。


外から声が聞こえた。


「準備が整いました」


天狗だった。


「鞍馬天狗様がお待ちです」


六花が立ち上がる。


「よーし!」


「修行だよ!」


亜由も立ち上がった。


「はい!」


――――――――――


天狗の修行場は、神社の奥にあった。


広い石の広場。

周囲には高い崖と杉林があり、風が強く吹き抜けている。


その中央に、鞍馬天狗が立っていた。


「来たか」


亜由たちは整列する。


鞍馬天狗はゆっくりと歩きながら言った。


「妖力とは」


空を見上げる。


「心と魂の力だ」


亜由を見る。


「制御できぬ者は、己を滅ぼす」


低く響く声だった。


「だが」


少し微笑む。


「使いこなせば、天地を動かす力になる」


亜由は真剣な顔で頷いた。


「はい!」


鞍馬天狗は地面に一本の木の枝を置いた。


「まずは基礎だ」


指を向ける。


「妖力を外に流してみよ」


亜由は戸惑う。


「えっと……」


六花が隣で言った。


「深呼吸して」


胸に手を当てる。


「体の中の力を感じるの」


亜由は目を閉じた。


呼吸を整える。


すると――


体の奥で、何かが揺れる。


温かくて、大きな力。


「……感じます」


鞍馬天狗が言う。


「それが妖力だ」


「今度はそれを指先へ流せ」


亜由は手を前に出した。


しかし。


ドンッ!!


突然、妖炎が爆発する。


「きゃっ!?」


六花が笑う。


「最初はみんなそう!」


鞍馬天狗は落ち着いていた。


「力が強すぎる」


「式神を出せ」


亜由は頷いた。


「ナチカ!」


符が光る。


ナチカが現れる。


「鎌鼬ナチカ……参上」


鞍馬天狗は頷く。


「よし」


「その状態でもう一度」


亜由は再び集中した。


今度は、力が少し落ち着いている。


手の先に力を集める。


小さな光が生まれた。


六花が拍手する。


「できてる!」


鞍馬天狗が言う。


「それが妖力の放出」


「次は形を作る」


亜由は集中を続ける。


光が揺れる。


形が崩れる。


何度も失敗する。


汗が額に流れる。


しかし。


何度も、何度も繰り返す。


やがて。


光が小さな球になった。


「できた……!」


鞍馬天狗は頷く。


「次は妖術」


地面に立つ。


「妖術とは」


手を振る。


風が巻き起こる。


「妖力に意思を与えたもの」


強風が広場を吹き抜けた。


亜由は驚いた。


「すごい……」


六花が棍を構える。


「私も見せるね!」


棍に雷が集まる。


「鬼天棍!」


雷が弾ける。


「嵐獄粉砕!」


ドォォォン!!


地面が震えた。


亜由は目を輝かせる。


「かっこいい……」


鞍馬天狗が言う。


「娘」


「やってみよ」


亜由は深呼吸する。


妖力を集める。


小さな光が生まれる。


「……えい!」


しかし。


ポンッ


小さな火花が出ただけだった。


六花が笑う。


「大丈夫!」


「最初はそんなもの!」


その後も修行は続いた。


妖力を流す。


集める。


形を作る。


崩れる。


やり直す。


何十回も繰り返した。


夕日が山を赤く染めるころ。


亜由はついに――


小さな妖炎を安定して生み出せるようになった。


「……できた」


鞍馬天狗が静かに言う。


「筋がいい」


そのとき。


修行場の端から声が聞こえた。


「鞍馬天狗さんは……」


全員が振り向く。


ボサボサ髪の少女が立っていた。


「おや?」


首をかしげる。


「お取り込み中でしたか」


鞍馬天狗が言う。


「ん?」


(さとり)か、なにか」


少女は笑った。


「なにか用か?ですか?」


少し肩をすくめる。


「挨拶ですよ」


鞍馬天狗は腕を組む。


「そうか」


「今は見ての通り」


修行場を見る。


「修行中だ」


「何かあるなら後にしてくれ」


少女は頷いた。


「はい」


「そうしますね」


雷が小さく言う。


「……覚が死霊の森から出てくるなんて珍しい」


「です」


ナチカも頷く。


「ん」


少女を見る。


「たしかに」


「なにかあった?」


少女――覚は静かに言った。


「えぇ」


少しだけ笑う。


「少し」


――――――――――


そのころ。


鞍馬第二山の麓。


山門の前に天狗が二人立っていた。


「ん?」


天狗が首をかしげる。


「なに用だ?」


そこには、一体の妖怪が立っていた。


黒い影。


顔は見えない。


別の天狗が怒鳴る。


「おい!」


「なにか喋ったらどうだ!」


沈黙。


そして。


妖怪が口を開いた。


「……うるさいなぁ」


次の瞬間。


ズバン!!


別の天狗の体が吹き飛んだ。


「ぐぁぁぁぁぁ!?!?!?」


天狗が凍りつく。


「お、おい……!」


目の前の妖怪を見る。


ただならぬ気配。


天狗は叫んだ。


「……貴様!」


そして振り向く。


「お前たち!!」


山へ向かって叫ぶ。


「敵襲だ!!!」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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