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Appalachian Memories  作者: みどり


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ソフィーの物語・第0話『プロローグ』

これはとある少女の物語。

 ――未来のアパラチア。


 核戦争によって世界が焼き尽くされてから、長い年月が流れていた。


 森は枯れ、街は崩れ、かつて人々の暮らしがあった痕跡だけが、静かに風に晒されている。


 それでもアパラチアは“死んだ土地”ではない。


 放射能に汚染されながらも、獣は生き、略奪者は跋扈し、希望を捨てきれない人間達が、今日も瓦礫の間で息をしていた。


 その地に、一人の少女が足を踏み入れた。

 名はソフィー。

 小柄な体に、大きめのバックパック。

 年齢の割に落ち着いた目をしているが、それはこの世界では珍しい事ではない。


 生き残るためには、子どもでいる余裕など、とうに失われているからだ。


 ソフィーがアパラチアを目指した理由は、自分が赤ん坊の頃に拾ってくれた祖父の遺品にあった。

 祖父はもういない。

 静かに、見守られながら亡くなった。


 その遺品整理の最中、ソフィーは奇妙な二つの物を見つける。

 一つは、明らかに時代錯誤なほど精巧な特殊な懐中時計。

 もう一つは、傷だらけで古びたPip-Boyだった。


 Pip-Boyを起動すると、録音された音声ログが再生された。


 そこには、生前の祖父の声が残されていた。


「……もしこれを聞いているなら、俺はもうこの世にいないだろう。俺はかつてVault-Tecで働いていた。だが、あいつらのやり方は“人類の未来”なんてものじゃなかった。実験だ。人を使った、最低のな」


 祖父は、Vault-Tec社の非人道的な実験計画から逃げ出した一人だった。


 そして逃亡の際、ある“物”を持ち出し、アパラチアのどこかに隠したという。


「それは、この世界じゃ高く売れる。もし生きるのに困ったら、探し出せ。追伸、お前を拾ってから俺の人生に光が差し込んだ、ありがとうな……強く生きろ、ソフィー」


 それが、ソフィーの旅の始まりだった。

 アパラチアに入るため、彼女は伝手を頼った。

 連絡を取ったのは、かつてキャラバンリーダーだった男――サルヴァトーレ・アル。


 皆からは、親しみを込めてトトと呼ばれている。

 トトは現在、民間のボランティア団体、レスポンダーLFに所属しており、その仲間数人と共に、ソフィーのアパラチア入りを手助けしてくれた。


 見返りは最低限。

 それでも彼は言った。


「この土地で一人は危険だ。だが――覚悟がある目をしてる。嫌いじゃない」


 ソフィーは礼を言い、彼らと別れた。


 彼女が拠点に選んだのは、バーニングスプリングス。

 荒廃した砂と錆の危険な土地。


 だが同時に、資源と遺物に恵まれた場所でもある。


 ソフィーは“ものづくり”が得意だった。

 廃材を組み合わせ、キャンプを作り、簡易発電機を設置し、作業台を並べる。


 少女の手で作られた拠点は、荒廃した世界の中で、確かに「生きる場所」になっていった。


 ここから探索が始まる。

 祖父が隠した“あるもの”を探す旅。

 Vault-Tecの影が今も色濃く残るアパラチアで、少女ソフィーは、壊れた世界を相手に、生き抜く事を選んだ。


 ――これは、未来のアパラチアで、一人の少女が強く生きる物語である。

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