箱の中身はなんだろな?-3
蒼天高校の敷地は大変広く、様々な棟が乱立しており、それに合わせて購買部も各地に点在している。
職員室近くには酒類や煙草が置いていたり、一般教室の近くだと文房具が充実しているなど、店舗ごとに異なる特色がある。
その中で浅茅は、部室棟の付近にある購買部を選んだ。
立地上、スポーツ用品の他、包帯などの簡易的な医療品も充実しているので、現在の状況を考えると相性が良い。
加えてこの店舗は、部活終わりの屈強な生徒らが消費したカロリーの補給に来るため、食料品が最も豊富であることでも知られていた。
寮の食堂がまだ開いてないこの時間、偶然にも酔い止めのついでに、浅茅の朝食を調達するという目的も果たすことができる。
そう、単なる“偶然”であくまでついで。メインは黒根君の酔い止めだ。
断じてこの店にしか置いてない特製卵サンドが浅茅の好物であることは、この件において何の関係もない。
「着きました!ここが蒼天自慢の購買部です」
「何だか、随分歩きましたね」
「・・・・・・」
浅茅は、黒根の呟きを聞こえなかったことにした。
シカトされたことに気づいているのかいないのか、彼は話し続ける。
「これ・・・・・・開いているんですか?」
そう言いたくなるのも無理はない。
「蒼天の購買部は、全店舗24時間営業なんです」
いざ目の前に来てみると、そこは確かに巨大な物置と間違えられても仕方がないほど活気がない。看板もなく装飾も質素でいかにも学校施設という有様だ。
とはいえ後一時間もすれば、寮で出された朝食だけで満足できなかった朝練組の学生達が、わらわらと押し寄せてくることを浅茅は知っている。
浅茅の説明にも、黒根は納得いってないような表情だ。
「・・・・・・にしては、人気が全くない気が」
まだ早朝と呼べるこの時間、道中で数人の生徒とすれ違ったが購買部の利用者がいる気配はない。
再び浮上した黒根の疑念にも、浅茅は答える。
「ここは無人販売でもあるんですよ」
購買部には商品の搬入に来る業者や、運営を担当する購買部員の存在はあれど、店舗に常駐するスタッフは存在しない。
だからこそ学校施設にも拘わらず24時間営業が成り立っている。
「なるほど、この規模の無人販売所は初めて見ます」
と、黒根は感心したように店舗を見上げた。
「黒根君の地元にも無人販売所はあったんですか?」
「販売所といっても、農家の方が自分の庭にかぼちゃを並べているだけでしたね」
彼の話しを聞いて、浅茅は自分の地元にあった無人販売所を思い出した。
ーーそういえば黒根君も田舎育ちなんだっけ
黒根に対し親近感が湧いてきてなんだか嬉しくなる。
入学式から四日、浅茅は学級委員として皆に好かれようと努力しているが、友達と呼べるような相手は一人もいない。
ーーこれを機に、仲良く出来たら・・・・・・
そんなことを胸の中で呟きながら、黒根の横顔を見る。
「・・・・・・うぷ」
浅茅は、慌てて本来の目的を思い出した。