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仲違い

 紅茶を一口飲んだエドワーズは話を続ける。


「昔、僕たちがまだ生まれる前、レーム家と王家は親交が深かったのです。しかし、姉が産まれたことがきっかけで仲違いをしてしまいました」


「どうしてですか?」


「レーム家が……つまり君のお父上が、女王も有りなのではないかと言ったそうです」


「……まあ!」


「しかし、父はそれを快く思わず、それから絶縁状態らしいのです」


 エドワーズは切なげにまつ毛を伏せる。伏せたまつ毛は長く、目を伏せていても美しいと分かるほどだ。


「それで敵対を?」


「ええ。僕としては1日も早く仲直りして欲しいと願うばかりなんですけどね……」


 エドワーズは真凛の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「君に出逢ってしまったから……」


 ドクンッと心臓が跳ねた気がした。マリアの体に真凛の意識。


――私が言われた訳じゃないのに……。マリアの体だから?


 頬が熱くなり体温が上がって行くのが分かる。


 心地よい風が2人の間を吹き抜けた。


「私も……この御縁を大切にしたいです」


「マリアさん……」


「エドワーズ様……」


 緊張を抑えようと紅茶を口に含むものの、味なんて分からない。マリアとエドワーズは周りに人がいることも忘れ、2人の世界にいた。


「マリアさん、僕達は敵対してしまってはいる。けれど、僕は貴女をもっと知りたいですし、今後も逢いたいと思っています」


 エドワーズの真剣な眼差しが真凛の心を捉えた。その眼差しを見つめていると、何故かマリアのことを自分のことに感じた。


「ええ、喜んで。私もエドワーズ様とこれからもお逢いしたいです」



* * *



「……ん?」


「真凛!」


「お母さん?」


「私……」


 周りを見回すと白い天井に白い壁、点滴を打たれている手首、どうやら病院にいるらしい。

「大丈夫? どこか痛む?」


「……大丈夫」


 体を起こそうとする真凛を母は支える。


「ありがとう」


 母は医者を呼び診察をしてもらう。異常はないものの、一応検査入院しようという話になった。


「覚えてる? 真凛」


「え?」


「あなた、舞台の階段から落ちたんですって」


「あ……」


 すっかり異世界へ行き忘れていた真凛は肝心なことを思い出す。


「あ、ねぇお母さん! 病院へ運ばれたのは私だけだった?」


「え? 男の子がかばってくれたみたいよ」


柏木(かしわぎ)くん!」


 動こうとする真凛を母は止めようとする。


「ちょっと、真凛。あなた今目覚めたばかりなのよ? 落ち着いて」


「でも……」


「そんなに慌てて……その子のことが大切なの?」


 何故か真凛の心臓がドクンと音を立てた。


「そういう訳じゃ……」


「……彼氏じゃないのね?」


「……うん」


――彼氏だって紹介するのは恥ずかしいよ……。

 駿くんのことが頭をちらつくものの、母に話す気にはなれない。


“コンコン”とノックをする音が聞こえ、顧問の先生が入って来た。

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