2人だけの
少し考え込む真凜は、ふと何かに気がつく。
「ねぇ、真くん、今どの辺りなのかな? 私達が別れた後?」
「そうだね……」
城の方へ目を向けると遠目にエドワーズと王妃がいた。
「ああ、そういうこと」
真凜は少しだけ複雑な表情をする。
「王になった後のようだね……」
真もまた、複雑そうな表情を真凛に向けた。
遠目に見る立ち姿はマリアとエドワーズが暮らしていた頃よりも、少し年を重ねたように見える。
エドワーズは国民に慕われ、王妃と共に国を支えた。王妃はエドワーズからの愛を貰えないことに長年苦しみ、寂しさからいつしか外に愛人を作ってしまう。
エドワーズは王妃に関心がない為、気付いてはいたが特に関わろうとしなかった。ある意味王妃は飾りの王妃。哀れな王妃だった。
「僕が愛したのはマリアだけだから」
「うん……」
真凜は何とも言えない気持ちになる。
「僕は、マリア一筋だから」
「うん、でも王妃様、可哀想……」
「それならマリアは僕に王妃を愛して欲しかったの?」
「え?」
そう問われる真凜はドキリとする。
「ううん、そうじゃないけど、あまりに王妃様が辛そうだったから」
「自分の心に嘘は付きたくないから、僕は他の誰かを傷つけたとしても、マリアへの想いを貫きたかった。そして、今は真凜さんしかいない」
「うん」
真の真剣な声に真凜はただ黙って頷いた。
一方、マリアは修道院でシスターとして暮らしていた。
真凜と真は近所の修道院にいるマリアを見かけた。マリアは慈愛に満ちた瞳で、修道院に併設されている孤児院の少年少女と話をしている。
「そう。私、あの後修道院に入ってシスターになったんだ……」
「どうして?」
不思議そうに真はマリアに問いかける。
「貴方以外の男性と結婚したくなかったの。エドワーズ様以外、愛せないと分かっていたから。それに、世の中の困ってる人の力になりたかった」
「……そう。幸せだった?」
「貴方が隣にいないことは寂しかったけど……でもね、刺繍を上達させて沢山の人に奉仕することが出来た。それは沢山の人が喜んでくれたの。だから、幸せだったと思う」
懐かしそうに話す真凜はマリアそのものだった。
「そう。それなら良かった」
真は真凛に愛しさが溢れる瞳を向ける。
「結局私達は、お互いのことしか心にいなかったのね」
「うん、他の人なんて目に入りもしなかった。ここにこうして来られて良かった」
「そうね」
真凜と真は並んで歩きながら教会へ行き、扉を開けた。すると、2人は現代へと戻った。
「あれ?」
「僕達、戻った? 城は?」
「お城から教会に来ちゃったの?」
「そうみたいだね」
教会には人が誰もいない。そこへちょうど神父が歩いて来た。
「そうだ、真凜さん」
「何? 真くん」
「結婚式しよう?」
「ここで? 今?」
「そう、今」
「うん、良いよ」
真は真凜の手を引くと神父の前まで歩いて行く。そして、結婚式を挙げたいとフランス語を話した。神父は笑顔で承諾してくれる。
「健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時も、この者を愛し敬い、慰め助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います!」
まず、真が誓いの言葉への返事をする。真凜はフランス語は分からないが、真の真似をして返事をする。
「はい、誓います」
神父は2人の誓いを聞き優しく微笑んだ。そして、2人は誓いのキスを交わした。
* * *
「はぁ~、緊張した〜」
真凜は突然の結婚式にどっと疲れを感じた。
「大丈夫? 真凜さん」
「うん。大丈夫。けど、びっくりしたね、私達お城にいたのに」
「本当だね。でも、2人がちゃんとそれなりに幸せに暮らせたみたいで良かった」
「うん、そうだね」
「真凜さん」
「ん? 何?」
「愛してるよ。幸せになろうね」
真はそんな言葉を真凜限定でサラリと言えるようになった。最初こそぎこちなかった2人は今は自然に手を繋いでいる。
「うん、私も。愛してる」
その時2人の耳の中に声が響いた。
『ありがとう、真、真凜』
エドワーズとマリアの声だった。
End.
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