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エドワーズとの出逢い

「そうです。貴女以外におりません」


 彼は金髪碧眼(きんぱつへきがん)の美男子だった。歳は同じくらいに見える。


「私に何か?」


「……こちらのハンカチを落としませんでしたか?」


 彼はそう言いながら右手に持っている真っ白なハンカチを、差し出して見せる。しかし、見覚えはない。


「いいえ、私のではありません」


「そうですか……失礼しました」


 そう言った彼の瞳は微かに揺れている。何故か真凛はその瞳を見ていると、胸が苦しくなった。


 その場を少し離れようとした時、真凛は呼び止められた。


「あの!」


「え?」


 思わず振り向いた真凛は彼の瞳を見つめた。


「この後、少しだけお時間ありますか?」


「え?……ええ」


「貴女に一目惚れをしました! もしよろしければ、私とお茶をしませんか?」


 彼はとても紳士的な雰囲気で、優雅にお辞儀をしている。市場に似つかわしくない姿だ。真凛の鼓動は何故か早鐘を打っていた。頬が熱くなるのが分かる。


――凄く綺麗な男性。私ではなくマリアに言っているのに。


 碧い瞳が美しく吸い込まれそうになる。


「ええ、かまいませんけど……」


 心なしかホッとしたような表情を真凛に向けた彼は、”では、参りましょう”と真凛に手を差し出した。


「お嬢様!」


「ミミ……」


 すっかりミミのことを忘れていた真凛は、少しだけがっかりしていた。


「こちらにいらしたんですね」


「……ええ、ねぇ? ミミ。こちらの殿方にお茶に誘われたの。行っても良いかしら?」


 ミミは彼に明らかに信用出来ないというような眼差しを向けながら、首を横に振った。


「いいえ、今しがた知り合った得体の知れない殿方など、信用出来ません!」

 ミミはバッサリ切り捨てる。


「そんなに固く考えることないわ。お話して楽しい時間を過ごすだけじゃない?」


 折れない真凛にミミは諦めたようにため息を付いた。


「……仕方ありませんね。ただし1時間だけですよ。あまり遅くなると、旦那様と奥様が心配されます」


「ええ! 分かったわ! ありがとう、ミミ」


「時間は守ってくださいね!」


「ええ!」


 浮足立っているのが分かるほど、真凛はそわそわしていた。真凛の瞳には全てのものをロマンチックに変えてしまう、魔法が宿ってしまったようだった。


「では、参りましょう」


 エドワーズは再び真凛に向かって優雅に手をを差し伸べる。


「ええ」


 真凛はその手を取り、エドワーズとミミとエドワーズのお付きの男性と共に馬車へ乗り込んだ。


 馬車は4人を乗せ進んで行くと、森林が見え始め、やがて森林の中にそびえ立つ石造りの城が見えて来る。


「あ。お城」


「ああ、僕の住まいです」


「え? 王子様なのですか?」


「ええ。そうです」

 

 驚く真凛に微笑みながらもさらりとエドワーズは言った。

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