あの日の夜に
真凜と真は前世へ戻っていた。
マリアは刺繍を終えて両親へもう一度話をしに来ていた。
「お父様、お母様、お話をさせて下さい!」
時刻は夕食後のくつろぎの時間。マリアの問いかけに両親は快く応じた。
「何かしら?」
「エドワーズ様とのことです」
「……その話は終わったはずだ」
マリアは勇気を振り絞った。
「……もし、このまま離れ離れになるのなら、私はエドワーズ様と……心中致します!」
「マリア!」
「馬鹿なことを言うな」
母親は悲しげな声を上げ、父親にも叱られてしまう。
「本気です」
マリアの譲らない姿勢に父親はとうとう観念した。
「……分かった。話をしてみよう」
「ありがとうございます!」
* * *
一方エドワーズは国王と王妃の前にいた。
「もう一度考え直して頂けませんか? もし、僕とマリアのことを認めて頂けないのなら、僕達は心中します」
「何を馬鹿なことを!」
「そうですよエドワーズ!」
国王と王妃はそれぞれ叫び声を上げる。
「僕達は愛し合っているんです」
「国と国との結婚なんだ。分かるだろう?」
「ええ、分かります。ですが、もう一度だけこの結婚を考え直して頂けませんか?」
「……一体誰に似てこんなに頑固なんだ」
国王は小さな声で呟いた。
「分かった。一度だけ話をしてみよう」
「ありがとうございます!」
翌日、城にはマリアの父親がやって来ていた。応接室で国王が来るのを待っていると国王が現れた。
2人が直接会うのは数十年ぶりだ。
「待たせたな」
「王様」
マリアの父はソファから立ち上がり形式的なお辞儀をする。王様はその隣に座った。
「いや、止めてくれ。君と私の仲だろう?」
「いえ、そのような訳には」
「……こんなにも長いこと会わなくなるなんてな」
「ええ」
「……すまなかった」
「王様……私の方こそ……申し訳ありませんでした」
「家の息子とマリアさんのことなんだが……」
「ええ」
「今回婚約したのは少々厄介な令嬢でな……」
「ええ」
「どうしてもエドワーズじゃなきゃダメなんだと言っているらしい」
「ですが……」
「ああ、個人的にはマリアさんを是非王妃に迎えたい。だが、国の繁栄の為にはあの家との結びつきが必要なんだ」
「そうですか。悲しみますね、間違いなく」
「そうだな」
「家が王家でなければな……」
「本当に、そうですね」
2人の切ない声が応接室に響いていた。




