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マリアとエドワーズ

「熱は……なさそうですね。頭を打ったりしてませんか? 寝ている時に。失礼ですがお嬢様、あまり寝相が良くありませんので……」


 真凛の額に手を当てたメイドは、考え込んでいる。


「医者を呼びましょう」


「え? 大丈夫よ」


「私の名前が分かりますか?」


「えっと……」


「……やはり、呼びますね、恐らく記憶喪失のようです」

 眉間にシワを寄せた彼女はそのまま部屋を出て行った。


 別人の体に真凛の意識がある。


――これってまさか……異世界転移?


 真凛は頭を横に振り、何が起きているのか考えた。


――確か私、演劇部の帰りに階段から落ちそうになって……柏木(かしわぎ)くんに名前を呼ばれて助けられた? 気がついたらここに……。


「あ! 柏木くんは?」


 真凛は思わず口に出してしまう。


――柏木くんは現代にいるのかな?

それとも、柏木くんもこの世界に?


 控えめにノックをする音が響くと、メイドが入って来た。


 彼女の姿を見ると突然頭の中に記憶が流れ込んでくる。彼女の名前が脳裏に浮かんだ。


「ミミ……」


 微かに目を見開いた彼女は、少しだけ安心したようだ。


「マリアお嬢様……」


「ええ……」


 何故か自分がどう振る舞えば良いのか、マリアの記憶がさせるのか、自然に浮かんでくる。


「ごめんなさい、先程は驚かせてしまって……」


「大丈夫なのですか? 医者がもうじき到着されますよ」


「寝起きで……混乱していたみたい」


「……そうですか?」


「ええ……」


 若干ミミは疑いの眼差しを真凛に向けつつも納得してくれた。


「分かりました。お嬢様がそうおっしゃるのなら、信じます」


「ありがとう、ミミ」


「では、医者には帰ってもらいますね」

 ミミは小さくため息を付きながら言った。


「ええ……ごめんなさい」


「……記憶喪失などではないのなら何よりですよ」


「ありがとう」


 真凛は微笑みながらミミにお礼を告げた。




* * *




 数時間後。真凛はミミと一緒に馬車を使い街の市場へ来ていた。

 澄んだ青空が気持ち良い。市場は沢山の商人や人で賑わっている。真凛はミミと一緒に見て回る。市場へは真凛がマリアへ入る前にマリアが来たがっていたらしい。


 現代と何もかもが違い真凛は物珍しさも手伝って、ワクワクしていた。大道芸人のパフォーマンスに夢中になった後、真凛はやや疲れを感じた。


「ミミ、少し休みたいわ」


「そうですね、しばらく歩きましたから、お疲れでしょう?」


「ええ」


「何か食べますか? 果物が売ってますよ?」


「お任せするわ」


「分かりました」


 ミミが少し外していると、見知らぬ男性が近づいて来た。


「そちらのブロンズの髪の美しい女性」


 真凛は自分のこととは思わずにいると、もう一度声をかけられた。


「……(わたくし)ですか?」


「はい」

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