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国王の願い

「ありがとう、マリアさん」


 国王は再び穏やかな表情に戻った。


「二、三日以内に荷物をまとめて出ていきます」


 マリアは自分の発している言葉がどこか他人事のように聞こえる。


――マリアさん? これで良いの? 私何も変えられてない。


 国王は満足そうに微笑むと帰って行った。




* * *




 その日の夜。マリアはエドワーズにこのことを話せずにいた。国王が帰った後、待機してくれているミミの弟の騎士に、明後日には帰るから馬車を頼むように伝えてほしいと頼んだ。彼は馬に乗り急いで伝えに行ってくれた。


「マリア? どうしたんだい?」


 夕食を食べ終え2人で寄り添いくつろいでいると、ぼんやりしているマリアにエドワーズが声をかけた。


「……エドワーズ様」


「ん? 様?」


「あ」


 ぼんやりしすぎて思わず様付けをしてしまう。


「いえ、何でもありません」


「そうかい? 何かあったら言うんだよ?」


 エドワーズは優しくマリアの頭をなでる。


「はい」


「……疲れたんじゃないかな? 早く休もう」


「……ありがとうございます」



 その日はエドワーズのお言葉に甘えさせてもらい、マリアはベッドへ入った。エドワーズに何も言えずに去らなければいけない苦しみを抱えながら1人静かに泣いていた。どこまでも止まることを知らない涙を流しながら。



* * *




 2日後。マリアはいつも通りエドワーズを送り出し、置き手紙を残し、荷物をまとめた。近くに馬車が待っている。今日は風が強い。マリアは外へ出た途端に帽子を飛ばされてしまう。


「あ!」


 帽子は強風に煽られ勢いよく空高く舞い上がって行った。


――しょうがない……。行かなきゃ。


 待たせている馬車に乗り込むと馬車には、ミミがいた。


「ミミ……」


 マリアはミミの顔を見た途端気が緩み、涙が溢れそうになる。それを察したミミは優しく微笑んだ。


「マリアお嬢様……」


 マリアはミミの横に座ると俯いてしまう。


「泣いても良いですよ」


 返事の代わりにマリアはミミにしがみつき、大粒の涙を流す。ミミは何も言わず、ただ背中を優しく撫でていた。




 数時間後、馬車は屋敷へ到着した。マリアの実家。懐かしい我が家。マリアは応接室にいる両親へ顔を見せに行く。


「お父様、お母様……」


「ああ……マリア!」


 母親は駆け寄りマリアを抱きしめた。父親は離れた場所にいる。


「顔を見せて、マリア?」


 母親はマリアの顔を見つめようとするが、マリアは泣き腫らした顔を見られたくない。


「お母様、私……寝不足で……」


 マリアは苦し紛れに言い訳をする。


「あら? どうして?」


「仲良くなったお友達と離れがたくて、夜通しお話をしていたのです」


「……まあ、そうよね。寂しいわよね。今度、その……パトリシアさんも家へ呼んだらどうかしら? 長い事お世話になってしまったもの」


「ええ」


「マリア、疲れただろう?」


 父親はマリアに優しく微笑みかける。


「いいえ、大丈夫です」


「無理しないのよ、顔色が良くないわ」


「今日はゆっくり休みなさい」


「はい、ありがとうございます、お父様、お母様」

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