謝罪
気の毒になったマリアは御婦人に声をかける。
「あの……」
「何?」
「あなたもただ、エドワーズさんが好きなんですよね?」
「貴女、何を?」
そう言った御婦人の顔は見事に赤く染まっていた。
「私はエドワーズさんが好きです。同じですよ」
マリアは本人の目の前でこんな話をするのはとてもドキドキしたが、この御婦人を嫌いになりたくなかった為、勇気を出していた。
「同じ?」
「ええ、同じです」
「貴女もファンなの?」
「いいえ、ファンではありませんが、エドワーズさんを誰よりもお慕いしています」
今度こそマリアは恥ずかしさのあまり、体中が熱くなっていた。しかし、真っ直ぐな強い意志で御婦人の瞳を見つめた。
「……分かったわ。ごめんなさい……」
「え?」
「貴女達はとてもお似合いの恋人同士ね?」
御婦人は少し切なげな瞳をマリアに向けた。そこには先ほどまで感じていた敵意は感じられない。
「エドワーズさん?」
「ん? 何だい? マリア」
エドワーズは再び後ろを振り向きながら話をする。
「もう、大丈夫です。ありがとうございます」
マリアは笑顔でエドワーズに告げる。
「そうかい?」
そう言うとエドワーズは体をマリアの横へ移動させた。そしてマリアからサンドウィッチを受け取り、“あとで頂くよ”とマリアに伝えた。
「正直、うらやましいけど……ねえ? これから私と親しくして下さる?」
御婦人はマリアに友好的な笑顔を向ける。
「ええ、もちろん」
マリアもまた、笑顔で御婦人に応えた。
「私はパトリシアと申します。よろしくお願いします」
「私は、マリアと申します。よろしくお願いします」
「よろしければ、家へいらっしゃらない? 近所なのだけれど。よろしければお食事をご馳走するわ」
「ええ。喜んでお伺いさせて頂きます」
マリアは丁寧にお辞儀をしてパトリシアの好意に応える。
「では、エドワーズさん、行って参ります」
「夕方にはなりませんので、ご心配なく」
マリアとパトリシアはそれぞれエドワーズに告げるとエドワーズもまた、笑顔を見せ深々とお辞儀をした。
「マリア、気をつけて。パトリシアさん、マリアをよろしくお願いします」
「はい、お任せください」
パトリシアもエドワーズへ深々とお辞儀をした。
2人で歩いていると、パトリシアが話しかけて来た。
「マリアさん」
「なんですか?」
「エドワーズさんのこと、本当にごめんなさいね」
「良いですよ、もう。気になさらないでください」
マリアは申し訳なさそうにしているパトリシアに、笑顔を見せる。
「ありがとうございます」