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パン屋

 エドワーズは奥さんから対面販売のやり方を教わる。


「あんた、見た目が綺麗だからお客さん増えるかもね」


 奥さんは冗談めかしてそんなことを言う。


「僕目当てで来られても……」


「そうだね、うちはパン屋だ。パンで勝負しないとね。まぁ、でもお客さんが増えるのは良いことだよ」


 奥さんはそんなことを笑いながらエドワーズに言ったのだが、数時間後それは現実になっていた。



 数時間後。近所の御婦人達がエドワーズの対面販売に押し寄せている。


「順番に対応いたしますので、お待ち下さい!」


 溢れかえるお客さんに奥さんが叫ぶ。


「うちのパンが先よ!」


「何言ってるの? 私が先よ!」


 御婦人達が順番で揉めているようだ。


「美しいご婦人方! 並んで下さい。順番に対応致しますから」


 エドワーズの美しい笑顔に御婦人方はうっとりしている。


「はい、分かりました」


 目がハートになっている御婦人達は、すんなりと言うことを聞き、揉めていた御婦人達は譲り合うことになった。




「ありがとうございました!」


 ごった返していた人も引いていき、エドワーズは一息付く。


「お疲れ様」


 疲れを感じていると、奥さんが声をかけてくれた。


「お疲れ様です」


「疲れただろ? 今、ちょうどエドワーズさんにお客さんが来てるよ」


「え? 客ですか?」


「……恋人かい? 凄く美人じゃないか?」


 その言葉にエドワーズはハッとする。


「マリア?」


 エドワーズは店の奥へ行くと、マリアが椅子に座っていた。手には包を持っている。


「マリア!」


「エドワーズさん!」


 エドワーズはマリアに笑顔で駆け寄ると、マリアもまた笑顔を向けながら立ち上がった。

「どうしてここへ?」


「これを……お昼ご飯を渡していなかったので、サンドウィッチを作って来ました」


「マリア……ありがとう」


 エドワーズは優しい笑みを浮かべながら、包を受け取った。


「いいえ。沢山の女性がいましたね」


「ああ……凄かったよ」

 エドワードはやや遠い目をしている。


「よく入れたね?」


「ええ……人気(ひとけ)がなくなるのを見計らいました」


「そうなんだね」


「……人気がありますね」


 マリアは少し複雑な気持ちになる。


「人気ね……僕は君さえいてくれたら、他の女性なんていらないよ」

 真剣な熱い眼差しと思いがけない言葉に、マリアは頬が熱くなり、戸惑ってしまう。


「え……」


「マリア?」


「はい」


「どうしたんだい?」


 エドワーズは分かっているのかいないのか、隣にいるマリアの顔をのぞき込んできた。


 ますます至近距離になり、マリアの心臓の鼓動は激しくなった。


――このままじゃ、心臓もたない!


「エ、エドワーズさん!」


「何かな?」


「そろそろ帰りますね!」


「そうか。送りたい所だけど仕事中だからね……。気をつけてね」


 エドワーズは不思議そうにしながらも、マリアに柔らかな笑みを浮かべた。

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