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娘の行方

 その頃マリアの実家では、マリアの行方を案じている両親がいた。


「パトリック。マリアはどこへ行ったの?」


 食事の席で母親はパトリックに尋ねる。


「母上。友達の所へ行ったんですよ」


 パトリックはどうにかごまかそうと爽やかに噓を付いた。


「友達……あんな夜中に? どちらの令嬢なの?」


「母上、そこまでは俺も分かりません。ですが、ミミの弟の騎士が一緒に行きました。大丈夫ですよ」


 母親を安心させようとパトリックは笑顔を見せる。


「……昨日、あの子とても悲しそうだったから。家出でもしたのかと思ったわ」


「大丈夫ですよ。直に帰ります」


 パトリックはそう言ったものの、何故帰ってこないのか案じていた。


「昨日は厳しく言い過ぎた」


 父親も反省しているようだ。がっくりと肩を落としている。


「父上? 認めてあげるのですか?」


「……それは話が別だ」


「……父上」


「なんだ?」


「何故そこまで頑ななのですか?」


「……そういう訳では無い。ただ……」


 仲違いをしてからずっと会っていない、王様とレーム家の父親。話し合えば仲直り出来るかもしれないのだが……。意地の張り合いになってしまっていた。



* * *



パン屋へ着いたエドワーズは、生地を渡し焼いてもらっていた。

パン屋はこじんまりとしていて、対面販売を行っている。奥で生地を焼いているようだ。


 待っている間、エドワーズは店員の働きぶりを見ていた。

 パン屋で働いてみたいと感じたエドワーズは、ふくよかで笑顔の素敵な対面販売の女性に聞いてみた。


「すみません、こちらで働かせて頂けますか?」


 突然の申し出に女性は目を見開き驚いているようだ。


「主人に聞いてみるよ」


 どうやらこの店は夫婦で営んでいるらしい。


 数分後、ガタイの良い長身の男性が現れた。

「君か?」

 低音の声が辺りに響き渡る。


「ええ、私です」


「どこの貴族様だ?」


「え?」


「上品さがにじみ出てるんだよ」


 エドワーズはジャクソンから渡された庶民の服を着ていたが、やはり育ちの良さは隠しきれていないようだ。


「それは……」


「どういうつもりか知らないが、遊びならよそでやってくれ」


 冷たく言い放つ店主はエドワーズに背を向ける。


「待ってください!」


 エドワーズの呼びかけに店主は振り返る。


「どうしても、働かないといけないんです!」


 店主は無言でエドワーズをしっかり見つめる。


「……愛する女性と暮らすために」


「……大事な女か?」


「……はい! 僕のこの命をかけて守り抜きたい女性です!」


 突然店主は口元をゆるめる。


「そうか。大事な女の為に頑張りたんだな?」


「はい!」


「気に入った! 明日から来られるか?」


「はい! よろしくお願いします!」


 話をしが終わりしばらく待つとパンが焼き上がった。

 ふんわりと良い香りが漂っている。


「はい、焼き上がったよ」


 奥さんがパンをエドワーズに渡し、エドワーズは籐籠(とうかご)に入れた。


「ありがとうございます」


 エドワーズは代金を支払いマリアの元へ帰って行った。




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